体罰を考える その3 | シニア犬 最期まで幸せでいてほしいから

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行動修正と体罰 その1

 桜の便りが聞かれるようになってきましたね!私の住む地では、あと一ヶ月以上待つ必要がありますが、テレビで美しい風景をみるとほんとうに癒されます。春っていいですね。
 さて、前回はしつけと体罰について書きましたが、今回は予告どおり行動修正と体罰についてです。ここでいう行動修正とは、すでにある刺激に対して定着している行動が飼い主にとって問題と感じる行動である時(以下、問題行動)、その行動の頻度や程度を飼い主が受け入れることができる状態まで下げることを言います。具体的な問題行動としてここでは飼い主に対する攻撃行動(唸る、咬むなど)を取り上げることにしましょう。
 私は行動診療を行うとき、なんでもそうであるように、順序立てて物事を進めるという視点を大切にします。はじめに必ず飼い主さんから日常生活の様子について詳しく聞き取り、身体検査を行い、必要に応じて血液検査などの諸検査をして、攻撃を誘発するような疾患や機能異常が無いことを確認します。身体のどこかに痛みを感じている時、日頃なら無視できることに苛ついて暴言を吐いた経験はありませんか?私はあります(笑)。犬だって同じなのです。痛みのある場所や周辺を触られれば、痛みから逃れるための過剰反応として攻撃行動を取るのは、絶対服従を強いられたことのないふつうの家庭犬であればむしろ当たりまえかもしれません。もちろん、たいていの犬は飼い主を咬む前に「やめて!触らないで!」というシグナルを出しているはずですが、残念ながら飼い主が理解しないで触り続けるので、仕方なく最終手段として攻撃をしているということです。痛みだけではありません。性ホルモンや甲状腺ホルモンなどの値が正常値から外れている時、視力や聴力などの感覚機能が低下している時にもイライラ度が増すことがあります。脳の器質的な異常に伴って攻撃行動が見られることもあります。犬が攻撃行動を示したら、はじめに身体的に問題が無いかを調べることは基本なのです。
 さて、飼い主からの情報と諸検査の結果からの総合判断で攻撃行動を引き起こすような健康上の問題はないと結論されたとしましょう。次には、どのような動機で犬が攻撃行動を示しているかを考えます。飼い主に対する犬の攻撃行動の動機には、飼い主または飼い主の特定の行動に対する不安・恐怖などの情動、飼い主または飼い主の特定の行動に対する怒りの情動(食べ物やおもちゃを取り上げる行為、自分の望む行動を阻む行為など)、支配欲(飼い主よりも自分が上位に立ちたいという欲求)、種の保存(子犬を守る)などがあげられます。そして動機づけにより、攻撃行動の対処は異なります。
 飼い主への攻撃行動で最も多いのは不安や恐怖といった情動が働いている症例です。つまり、飼い主は意識して、または意識せずして犬が恐怖や不安を抱くような行動をとっていることが多いということです。この動機づけがはたらいている攻撃行動に対しては、犬が不安や恐怖を感じなくて済むようになることを目標として行動修正を考えます。不安や恐怖を誘発する飼い主の行動を中止する、不安や恐怖を感じる刺激(つまり飼い主や飼い主の行動)に段階的に慣らしていく、犬が好きなものと組み合わせることによって不安や恐怖を抑えていくなどが選択肢になります。不安や恐怖がとても強い時にはお薬の力を借りながら行動診療を進めることもあります。ところで、この不安や恐怖は飼い主が犬に対して体罰を用いたことによって生じてしまった場合がすくなくありません。さらに生じた攻撃行動に対して体罰による対処をしたために悪化している場合がほとんどです。前回書いたように体罰は「くせ」になるからです。もちろん行動診療では、以降は絶対に体罰を使わないように指導します。

 長くなったので、行動修正と体罰について、次回に続けます。

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