私的 日本フォーク伝(Part5):井上陽水 | 懐かしエッセイ 輝ける時代たち(シーズンズ)

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ひときわ輝いていたあの時代の思い出のエッセイ集です。
毎週土曜日更新予定です。



今日は。

ブラジル ワールドカップ サッカーも、決勝トーナメント。

ベスト4を目指して、熱い戦いが始まっています。


ブログの方は、今回も日本のフォークです。

音楽界を一段と熱くした頃の。 

5回目でやっと井上陽水まできました。


<井上陽水>


 
断絶  高校生の時に知ったもう一人の日本フォークの寵児が井上陽水でした。
この人も、この頃特に仲が良かった友人を通して知りました。
彼がアルバム「断絶」(1972年)を絶賛していました。


 実質上デビューシングルで、このアルバムに入っている、「父は今年二月で六十五」で始まる「人生が二度あれば」をかなり聞かされました。
「断絶」の中のもう一曲「傘がない」。
この曲のフアンは多かった。
「都会では自殺する若者が増えている。
 でも、僕の問題は、今の雨 傘がない
 行かなくちゃ 君に会いに行かなくちゃ 」


 そして「夢の中へ」(73年3月)のヒット。
この曲は映画「放課後」の主題歌です。
僕はこの映画は見ていませんが、この曲のギターイントロと出だしの歌詞が頭から離れません。
「探しものはなんですか。
 見つけ難いものですか。
 鞄の中も 机の中もさがしたの見つからないの
 まだまだ探す気ですか」


 そして、73年にアルバム「氷の世界」が大ヒットしました。
(このアルバムは日本レコード史上初のミリオンセールスを記録)
その中の「心もよう」は、大学で友人になった3つ上の人物から、これ又、こんこんと説明を受けました。
陽水のファンは、一度なると、その深さがすごい。
 「さびしさのつれづれに
  手紙をしたためています あなたに
  黒いいインクがきれいでしょう
  青いびんせんが悲しいでしょう」
で始まるこの歌はこころにしみます。
この「氷の世界」のアルバムも40周年を迎えました。


 陽水のファンは男子のみならず、女性も多かった。
僕の周りの女性ファンを、残念ながら知らないのですが、FMラジオ番組「サンデーソングブック」で、山下達郎が、女性をとりこにする陽水の詩のすごさにまいっていた発言をしていたのを覚えています。
確かに二人の詩を比べれば、当時目指す音楽がロック系とフォーク系の差があるためか、そのサウンドにのる詩はかなり違ます。
どちらかと言えば、フォーク特有の内面を描く陽水の詩と、ロック特有の躍動感にのり、行動を書く達郎。
いわゆる抒情詩と叙事詩の差なのでしょうか。


 冒頭に「人生が二度あれば」を「実質上の」デビュー曲と書いたのは、ポリドールでのデビュー前に、CBSソニーから「アンドレ・カンドレ」という名前でデビューしていたからです。
本田路津子 と同じCBSソニーであったため、彼女もしくは彼女のプロデュ―サーがこの曲を使ったのでしょう。
アンドレ・カンドレという一見ふざけた名前を覚えていました。
ですが、曲や詩は覚えていないので、それほどの作品ではなかったと思います。


 


ハンサム ボーイ  でも、僕が特に好きな陽水は少し、経ってからの作品が多いようです。
TBSニュース番組の「筑紫哲也のNEW23」の最初のテーマ曲の「最後のニュース」。
しゃべるように始まるこの曲は、聞いた瞬間に引き込まれてしまいました。
不思議な曲です。
わかるようでわからない詩。
ニュース番組を意識して、世の中の断片を羅列したのでしょうか。
この曲を陽水に発注したのは、筑紫哲也自らだそうです。
当時、陽水は作家の阿佐田哲也藤子不二雄Aや筑紫ら文化人との交流があり、良く麻雀をやっていたそうです。
その筑紫の要望が新らしいニュース番組のエンディング・テーマ曲でした。


 そして「少年時代」。
藤子不二雄A原作の映画「少年時代」の主題歌。
この曲も藤子自ら陽水に頼んだそうです。
締切ギリギリの出来上がったこの作品は、ピアノから始まりますが、少しリズムが乱れているようにも聞こえます。
何か少年のたどたどしさを表現しているようです。
陽水がスタジオミュージシャンではなく、ソングライタ―の来生たかおに頼んだそうです。
少年らしさを表現できるピアニストとして。
両方の曲ともアルバム「ハンサム ボーイ」(90年)に収録されています。