この作品も、10年くらい前にアンティーク・アーカイヴさんに譲っていただいた作品です。
福岡城のお堀を歩いているようなイメージの絵付けに注目して購入しました。
カップの底から生えるクマザサか葦のような植物の伸びやかなラインが美しいと思います。
描かれている鳥は、下のアンティーク・アーカイヴさんのご解説によると「ヨシキリ」の様だそうです。
絵付けのバランス、余白のバランスなどは、柿右衛門様式を彷彿とさせるデザインだと思います。
実際、絵付けデザインを考案されたハインツ・ヴェルナーさんは大変な親日家だそうです。
以前も申しましたように、この小鳥が飛んでいる絵柄のものも勧められましたが、私は素人ですので、こちらの「じっとしている」のを購入させて頂きました。
多分、小鳥が飛んでいる方が「つう」の方には好まれるでしょうから。
この絵付けは、非常に手間がかかるそうで、現在のマイセンでは作られていないようです。
コレクターにとっては「幻の陶磁器」という事で、アンティーク・アーカイヴさんは、これをドイツで見つけられると必ず入手しています、とおっしゃっていました。
デパートレベルのマイセンとは、「質が異なる」ものを感じますね。
「使う食器」にならないことはないでしょうが、やはり「飾る食器」として大事にしておきたい作品だと思います。
(装飾:ハインツ・ヴェルナー)
(緑の葉っぱの絵付けは下絵付けだそうですが、質感がありますね。こういうのが手書きの魅力だと思います。)
(こういうラインのカップは、やはり糸底から描いた方が描きやすいのでしょうか。。裏からの景色の方が圧巻です。)
この作品を譲っていただいたアンティーク・アーカイヴさんのご解説を参考までに載せておきます。
(解説)
1974年、ハインツ・ヴェルナー教授によってデザインされた「水鳥の狩猟」と呼ばれる装飾です。
マイセンを代表する有名な装飾なのですが、市場には滅多に出回らず入手困難なアイテムです。
「アラビアンナイト」や「サマーナイト」などと一緒にライプチヒのメッセで発表されて、高い評価と大きな反響を呼びました。
しかし、とても高度な絵付け技術が必要なため、マイセンではほとんど制作されずに幻の装飾と呼ばれています。
マイセンが会社として大きく合理化効率化されている現在、今後こうした装飾が作られるのかどうか、個人的には大きな疑問を持っています。
植物の深い緑は、酸化クロムグリーンの下絵付けです。これは型紙を使って描かれるのですが、この手法は有名な「葡萄の葉」の装飾からヒントを得たものでしょう。
また黒色もイリジュームブラックという「葡萄の葉」に使われる黒です。この状態で釉薬をかけ本焼成し、さらに多色の絵の具と半透明のエナメル系と思われる絵の具で絵付けされます。
こうした手数のかかる工程のため価格も高く、アラビアンナイトの価格とほぼ同等なものでした。
この装飾を作るにあたって、ヴェルナーと中心とする芸術家グループは、実際に狩猟のグループに加わって取材したといいます。
マイセン市近く、モーリッツブルグ城の水郷地帯は自然豊かな狩場であり、また城内にはアトリエもあったことから、この付近の自然をテーマにした質の高い作品に仕上がっています。
描かれているのは葦とヨシキリでしょうか、まるで日本画をみるような懐かしい感じです。個人的には、ヴェルナーさんが作りだした装飾のうちでもベストなものと評価しています。
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今日はここまでです。
これで「マイセン」の記事は終了です。
次回からはその他のヨーロッパの窯について何箇所か触れたいと思っております。
今まで読んでいただき、有難うございました💞