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美容皮膚科 ペルラクリニック神宮前 院長の本田 淳です。
当院は、院長が診察から治療まで一貫して施行すること(ワンドクター制)を特徴としています。
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以下本文となります。
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PDLLAに関する論文をご紹介します。
2024年の論文です。
要約です(原文に忠実に訳しています)
- イントロ
Poly-d,l-lactic acid(PDLLA)は、生分解性および生体適合性を有するポリマーであり、その特異的な物性と多様な応用可能性によって皮膚科領域において大きな注目を集めている。
- 目的
各種皮膚疾患および創傷治癒におけるPDLLAの役割を包括的に分析・評価すること。
- メソッド
文献レビュー形式により、PDLLAに関して以下の知見を集約した:-
物理的・化学的特性
-
ナノ粒子・マイクロ粒子デリバリーシステム
-
安全性および合併症管理
-
皮膚科以外の応用(整形外科等)
-
- 結果
PDLLAの臨床的効果:皮膚の弾力性と張力の向上、しわの軽減、組織再生および瘢痕リモデリングの促進
生分解性の特性により顔面再建、乳房再建における軟部組織増大に適している。
ナノ粒子およびマイクロ粒子システムの活用により、送達効率と安定性の向上が期待される。
合併症リスクとして、肉芽腫、非炎症性結節の形成がある。
- 結論
PDLLAは、優れた機械的安定性および生体適合性により、皮膚科のみならず整形外科およびドラッグデリバリー分野においても応用可能性がある。その作用機序の完全な解明と臨床応用の最適化のためには、今後も継続的な研究が必要である。
- PDLLAは、生分解性(biodegradability)および生体適合性(biocompatibility)を有するポリマー。
- バイオマテリアルとして、皮膚科をはじめとする多領域での応用可能性が研究されている。
- PDLLAはコラーゲン合成の刺激、組織再生の促進作用を有し、その構造特性により持続的効果が期待できる。
- そもそもポリマーは軽度の炎症を誘導することによりコラーゲン産生を促すが、過度の炎症は肉芽腫や結節などの合併症を引き起こし得る。これらの有害事象を回避するためのポリマーとして、PDLLAは有望視されている。
- PDLLAの構造は球状(spherical)かつ泡状(foamy)で、周囲組織のダメージを最小限に抑制する。
- その内部は、網目状(reticular)および多孔性(porous)構造にデザインされており、生体適合性および生分解性の向上に寄与している。この構造は内側からの緩徐な分解を可能にし、粒子周囲の酸性度の急激な変化を防ぐ。結果、炎症反応を低減させることができる。また、分解産物の乳酸は、自然に代謝される(内部構造の特性により、いわゆるバルク侵食型:bulk erosionのポリマーだということです。緩徐に分解するため急激な酸性化を防ぎ、周辺組織の過度の炎症、ダメージを防ぐということですね。ただし、一般的に分解後期においては、surface erosionに比し、むしろその分解速度は蓄積した分解産物により加水分解が自己触媒的に促進されることにより・・・以下略)。
- PDLLAは特有の立体異性体組成(L-乳酸およびD-乳酸がランダムに分布した不規則な鎖構造)により、非晶性(amorphous)である。そのため、PDLAおよびPLLAに見られる大きな結晶領域:crystalline regionの形成が阻害される。そのため、機械的ストレスに対する耐性が向上している(結晶粒界が存在しないため応力が分散され、また柔軟で変形を及ぼす外力に追従しやすいということですね・・・ここには記載されていませんが、ガラス転移温度が 以下略)
- PDLLAでは、D-およびL-乳酸モノマーが均一に分布しており、その分解がコントローラブルで予測可能であるため、臨床上有用である(上の文と矛盾しているように見えますが、モノマーの割合、つまりモル比が1:1 なので、均一に、という言葉が使われているのだと思います)。
- PDLLAは、D型およびL型モノマーがランダムに結合しているため、接触表面積が最大化され、この構造的特徴により、PDLLAは整形外科およびドラッグデリバリーにおいても広く使用されている(このパラグラフ全体の記述が整理されていないように個人的には思います・・・要は、D型およびL型モノマーのランダムな結合により、分子鎖パッキング効率が悪く、非晶性になり、そのため加工時にreticular、porous 構造にデザインしやすい。結果として接触表面積が増加する・・・とまとめることができます。もちろん、表面積が増加すると、薬物の担持量や放出速度に影響し 以下略)。
- 皮膚科領域において、PDLLAは創傷治癒、スキンリジュビネーション、および瘢痕リモデリングにおける応用可能性が検討されてきた。本レビューでは、PDLLAの皮膚科領域における応用に関する知見を概観し、作用機序、臨床応用、利点と限界を明らかにする。エビデンスはOxford Centre for Evidence-Based Medicine evidence hierarchyに従い分類した。
- Seo et al.:PDLLA(Juvelook)と非架橋ヒアルロン酸(NHA)の併用による顔面皮膚におけるスキンリジュビネーション効果を検証。結果、エイジングサインが有意に改善 (Table 2)。病理組織学的には、真皮乳頭層のコラーゲンととエラスチンが増加していることが示された。なお、重篤な有害事象なし。ただし、サンプルサイズが小さく(20名)、予備的な研究である。エビデンスレベル4(以下、お読みになるとおわかりのように、このレビューは間違いを多く含みます。当該部分に関しては、比較的間違いが軽微なため言及しておりません。ただ被験者数は20名ではなく16名です・・・)。
- Ma et al.:PDLLA(AestheFill、REGEN)を手背に注入し、リジュビネーション効果を検証。3か月間隔で3回実施(原著論文 では、単回治療と・・・)。skin texture, elasticity, wrinkle depth,skin fold thickness, skin brightnessが改善(原著では、このような記述はなく、主に静脈や腱の視認性やシワの改善ほか、主観的な外観の評価が述べられており・・・)。忍容性良好で重篤な有害事象なし。パイロットスタディながら、エビデンスレベル2b?。
- Seo et al. :PDLLA(Juvelook)をストレッチマークに対して、マイクロジェットインジェクター(Mirajet)用い注入(セッション数 5~7回 )し、改善効果を検証。結果、skin texture, elasticity, the appearance of stretch marksに有意な改善が認められ、高い患者満足度が得られた Table 2。当該研究では、レーザーマイクロジェットを用いることで、PDLLAの送達が改善され、より効果的な治療結果が得られる可能性を示した(原著論文には、このあたりのことが詳述されています。要は、レーザーマイクロジェットによる機械的刺激の付加、そして拡散性と精度の両立 以下略)。エビデンスレベル2b?。(この部分のレビューの大きな間違いとして、「フラクショナルCO2レーザーとPDLLA注射を組み合わせて、腹部のstriae distensae患者20人を治療した」と書かれていますが、原著論文を見る限り、どこにもフラクショナルCO2レーザーを併用したとする記載はありません。上の文章は私が手を加えています)
- Lin et al. :
PDLLAを中等度から重度の下眼瞼皮膚の弛緩およびシワを有する10名の被験者に注入(3か月間隔で2回)したところ、 skin texture, elasticity, wrinkle depth, skin fold thickness , skin brightnessが改善した。忍容性は高く、重篤な有害事象はなし。エビデンスレベル3?(などと書かれていますが、ほぼすべてデタラメで修正を書く気にもなれません笑 原著論文)
- Ken et al.:(歯科における研究)ご興味のある方がおいでになれば原著論文を
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Abu Hajleh et al.:化粧品および医薬品応用で使用されているPLAのさまざまなデリバリーシステムに関するミニレビュー。ナノ粒子、マイクロスフェア、フィルム等の各形態およびデリバリーシステムを検証。エビデンスレベル5?
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Oh et al.:皮膚老化マウスモデルを使用して、PDLLAの作用機序と効果を検証した。血管新生およびコラーゲン合成に関与する遺伝子の発現が増加し、さらにコラーゲン合成に関与する酵素の活性が高まることが確認され(正確には「発現量の上昇が確認された」にとどまります)、結果、真皮コラーゲン、真皮の厚さ、皮膚の弾力性が増加することが示された。エビデンスレベル1c?
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Gao Q et al.:(本レビューによると)PLLAおよびその他の充填剤(ヒアルロン酸、ハイドロキシアパタイトカルシウム、ポリアクリルアミド)に関する既存の研究を包括的にレビューした。その結果、PLLAミクロスフェアは、他の充填剤と比較して、生体適合性、生分解性、および持続性に優れていることが示された。(と書いてあるのですが、原著論文には、上記のようなことはどこにも書かれていません。実際は、PDLA、PLLA、PDLLA 各マイクロスフェア間の生体応答の差異を検証していて、結果、PLLAが最も炎症性が低く、コラーゲン新生促進作用が顕著であることが確認された・・・といった内容で、他の種類のフィラーとの比較ではありません。ちなみに原著論文のエビデンスレベルは1a?)
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Guo J et al. :(本レビューによると)ポリ-D,L-乳酸(PDLLA)を含むさまざまな種類のフィラーの利点と欠点について議論している。PDLLAの物理化学的特性、特にその高い粘性についても論じており、これにより形状保持が可能となり、(などと書かれているのですが・・・原著論文は、PDLLA と明示されておらず、PLA全般またはPLLAについて記載されています。そもそもPLAに関してはレオロジー特性自体の記載がなく 以下略 原著論文のエビデンスレベル1c?)
ちょっと疲れてきました・・・。原著論文本文がネットで見られないものは、レビューの正確さが判断できません。
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Ren et al. :(書籍です)PLLA概説。エビデンスレベル3b?
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Seo et al.:上で紹介されているmirajetを用いたPDLLA注入を検証した論文のレビューのことを再度持ち出しており(文献9)、完全に重複しています。しかも、 異なるエビデンスレベルが記載されています。この混迷は何なのか?・・・
あえて記事としてアップいたしました。
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