BGM:ルビーの指環 寺尾聰

http://www.youtube.com/watch?v=n2cdgo86Hzo


その昔。寺尾聰さんが歌った「ルビーの指環」は、どうして「指輪」でなく、「指環」だったのか。

不思議だった。


ところで、渋谷宮益坂インド紅茶専門店ボルツでバイトしていた時。

店長さん(店長さんと言っても、すっごく若い人だった)のNか村さんに頼み事をされたことがある。それは、彼女の誕生日祝いに、指環を贈りたいから買ってきて欲しいというものだった。

店長さんは、あろうことかボクに、彼女へのプレゼントの購入を委任したのだ。

しかも、誕生日は今日だと言う。困ったものだ。

「GINクン。今日の休憩時間は、なが~くてもいいからね」。

そう言って、店長さんはボクに1万円札を1枚くれた。




う~む・・・。初めての経験だった。

何がって?指輪を買うことがだ。

7月だった。彼女の誕生日は7月だから。「ルビーの指環」が望ましい。

店長さんの要望をメモ帳に書いてボクは、渋谷パルコに向かった。

ボクは、お菓子屋さんで塩煎餅を買ったり、八百屋さんでキュウリを買ったりした経験はあったけど、宝石屋さんで「ルビーの指環」を買った経験は一度もなかったから、本当に困った。

取りあえずボクは、パルコの宝石が売っているフロアに向かった。


そこはキラキラしていた。

ボクが知っている駄菓子屋さんや、八百屋さんには見られないキラキラな風景が、そこには広がっていた。

ボクは、店員さんのところに行って、こうお願いした。

「すみません。これでルビーの指環を一つください」。

1万円札を店員さんに手渡して、そうお願いするボクの顔を見て。

店員さんは、絶望的な気持ちになったに違いない。

これから、この男に指輪の買い方を1から10まで教えなければならない。しかも、1万円札1枚でルビーの指環を買いに来る男である。理解力だって、あてにならない。

でも・・・、店員さんはちゃんとしていた。

その後、指輪の買い方について、しっかりと最初から最後まで説明してくれた。

ボクは、目からウロコ状態だった。指輪一つ買うために、そんなに深い知識が必要だったのか。


店員さんは、彼女の指のサイズ。ルビーの色。種類。カットの仕方。そして当時のルビーの相場価格等・・・、いろんな説明をしてくれた。

そして最後にこう付け加えた。

「ぜひ、プレゼントは代理人様ではなく、ご本人様が買いに来てくださるのがよろしいかと思われます」。

ボクは、なが~い休憩時間を終了し、渋谷宮益坂インド紅茶専門店ボルツに戻り、結果を全て店長さんに報告した。

店長さんはその後すぐ、銀行のキャッシュカードでお金をたくさんおろし。

ボクよりもっとなが~い休憩を取って、自分の力で「ルビーの指環」を買ってきた・・・。

それはデメタシデメタシなお話だった。