「ねぇ、おいちゃん。どうして人は勉強しなければいけないの?」

その問いに「男はつらいよ」の寅さんは、こう答えた。

「人生、いろんなことがあるよ。時には、あっちに行こうか、こっちに行こうか迷うときもある。そんなとき、おいちゃんみたいな勉強してない者は、サイコロ振って決めるけど、勉強した者は、ちゃんと理屈で自分の道を正しく選ぶことができるんだ。だから、人は勉強しなければいけないんだ。」

男はつらいよを観て。

その話を聞いた時、ボクはなるほどなぁって思った。



若林で見た空


最近。

高校3年生の娘がボクに、「おとん。なぜ人は、勉強しなければならないの?」って聞いてきた。

ボクはこう答えた。

江戸時代。適塾を開いた緒方洪庵さんは、勉強に目的を問うなと言ったそうだ。

「あ~なりたいから勉強する」だとか。

「こんな仕事に就きたいから勉強する」だとか。

そんなことは考えるなと、緒方は言った。

人が学ぶとは、そんなことじゃない。とにかく。

ひたすら、意味など考えずに勉強に没頭しろと。

すると、勉強の面白みがズンズンわかるようになってくる。

ひたすら学び、ひたすら追究していくうちに、なぜ勉強するのかという答えが、自然にわかってくると・・・。

緒方の言葉をボクは、高校生の時に知って、その通りだって思った。

ボクはそんな話をした。


江戸時代。漢医学が幅をきかせていた時代に、西洋医学を取り入れ。種痘のワクチンを作り広めた緒方洪庵。そして、その学びの拠点となった適塾。

ボクは、娘にその頃の人たちがいかに学びに没頭したかをお話した。

広瀬淡窓の咸宜園。

吉田松陰の松下村塾。そこには、学びを喜び、学びを愛した人々が渦巻いていた。

ボクが熱く熱く語る目の前で、娘は目をパチクリした。


「じゃぁ、おとんは何故そんなに頑張って勉強したの?」

その問いに。ボクは決然と答えた。

「学ぶということが、他のどんな行為よりも楽しかったからだよ。」

娘はその言葉を聴いてまた、目を丸くしていた。

「おとんは、学ぶこと=人生だったから、勉強の意義なんて一つも考えていなかった。とにかく学ぶことが楽しくて楽しくて仕方なかった。だから学び続けた。」

ボクのその言葉にうそはない。

でも、高校3年生の娘はそれを聞いてどう思ったか。

それは、娘にしかわからない・・・。