* 本 * 天路の旅人☆沢木耕太郎 | 。+゚定禅寺大学2年生゚.:。+゚

。+゚定禅寺大学2年生゚.:。+゚

夫の赴任先仙台から地元に戻り、英語のプロを目指してがんばっているアラフィフ主婦です。



大好きな本、河口慧海の「チベット旅行記」。
慧海から40年後に西域を旅した西川一三の人生を、旅といえばの沢木耕太郎が本にした。

570ページの長編。
ひたすら読者も西域を旅しました。
旅の大変さ、楽しさ、学び。本当に旅をしているかのようにこの本の中で延々と続く。

冗長と感じるところも、沢木耕太郎なのだからわざとなんだ、とわかる。それが旅なんだから。

沢木耕太郎の本は、面白く書こうとせずリアリティを追求しているところが、逆に読者を惹き付ける。
昔も今も変わらないスタイル。
この本も旅行記の傑作でした。

***
「一度行ったことがあるところにまた行っても仕方がありませんからね。行ったことのないところなら別ですが」
面白いな、と私は思った。面白い。そして、この人について書いてみたい、と強く思った。
(P.17)

タール寺には四種類のラマ僧が暮らしていた。まず、ここで修行を積み、一人前の学僧になるこを目指している者。次に、かなり厳格な修行をすることになる学問の道を諦め、寺の維持運営に関わる業務に携わることで存在感を見せつけている者。さらに、巡礼の途中で滞在している者。そして、そのどれでもなく、ただその日その日を暮らしている者。(P.180)

出会って、別れる。確かに、それを寂しいこととは思うが、西川には新しい土地へ向かおうという意欲の方が勝っていた。(P.447)
***

***
「この稀有な旅人のことを、どうしても書きたい」。
「旅」の真髄に迫る、九年ぶりの大型ノンフィクション。
第二次大戦末期、敵国の中国大陸の奥深くまで「密偵」として潜入した若者・西川一三。
敗戦後もラマ僧に扮したまま、幾度も死線をさまよいながらも、未知なる世界への歩みを止められなかった。
その果てしない旅と人生を、彼の著作と一年間の徹底的なインタビューをもとに描き出す。
著者史上最長にして、新たな「旅文学」の金字塔。

☆☆☆☆
「天路の旅人」
沢木 耕太郎 著
新潮社
20221025