4月25日、少しだけ残業をして仕事を片付け、家に戻る。
昨年度、まともに一度も風邪を引いていないのに何故か昨日からだるい。
悪寒がするためたぶん熱を測れば、38度は固いと思われるため怖くて測れない。
なんせエジプトの旅、出発日。
選択肢に「中止」はない。
とにかく出よう。
出ればなんとかなるさ、病院から処方された薬もなくバファリンを携え、バックパックを背負い家を出る。
寒い、究極に寒い。電車内でふるえる。
旅先で靴を持ち歩きたくない為、足元が草履なのがその一因でもあろうが、
4月の終わりにセーターを着込んでいる割に寒い。
間違いなく、高熱。
温かいお茶を買い、少しでも寒さを凌ぐ。
そんな体調不良のまま、エミレーツ航空の深夜便は僕を乗せてドバイ経由でエジプトへと飛びだった。
そして家を出発して22時間後、僕はカイロの街へと辿りついた。
なぜか悪寒は治っていた。たぶんバファリンが効いたのだろう。
町の片隅で地球の歩き方の「カイロ」のページを熟読する。
…基本的に、なるべくガイドブックを読まずに旅を始めるようにしている。
あまりに読みすぎると、観光名所を訪れたとき、ガイドブックとの「確認作業」になりかねない。
町に着いて、ガイドブックを開く。
ここはどこ?
どこに泊まろう?
どうやて移動しよう?
どこにいこう?
これが最近の僕の旅のスタイル。
もちろん、こんな計画性のない旅だから、時に遠回りをするけれど…。
カイロ。
大都会。車が洪水のように街に溢れ、クラクションの嵐が街の喧騒を生む。
古いビルが乱立し、とにかく、人人人、車車車。
描いていた「砂漠」と「ピラミッド」のエジプトからはかけ離れた光景。
とりあえず地球の歩き方を開き、訪れた一軒目の宿「さくらゲストハウス」。
ルームフル。
あえなく、宿泊を断られる。よくあること…。
仕方なく、他の安宿を求めて街を歩いていると、旅行会社発見。
「エジプトらしくないカイロを離れて気分を盛り上げようか…」
一瞬の想い。
旅行会社で「今日のルクソールへのフライトある?」と尋ねると、2時間後の便なら予約できるとのこと。
そしてまた一時間かけて空港に戻ることになる。
遠回り。
でも、これが僕の旅。
気分まかせの旅。
旅行の計画さえ立ててないからできる、キマグレな旅。
いざ『ルクソール』へ。
町に辿りつくともう夜だった。
疲れが溜まっているため、歩き方の「中級ホテル」コーナ-から比較的綺麗な宿を選んだ。
いつもなら「経済的ホテル」コーナ-しか見ないのだが、今日は特別。
1泊25ドル。
高い。いくらなんでも高い。
宿泊費はやはり15ドルまでに抑えたい。
値切り倒すが20ドルまで落ちたが、それ以上は落ちない。
仕方がない、別の宿を探そう。
5ドルの値下げに応じてくれたオーナーに丁寧に別れを告げ、ホテル前で再び歩き方を読む。
2分ほどすると、オーナーが笑顔で表に出てくる。
「15ドル、OK」
ありがとう、オーナ-。
機内食でお腹が膨れているので、夜の水を買いに町に出た。
小さな商店では英語が全く通じないが、とにかく言われるままに銭を出してみる。
1.5ポウンド。
ペットボトル1本、約30円。
安いんだな、物価は。
そして疲れた身体を横たえた。
ルクソールの小さなホテルで、エジプトの旅が始まった。