4日目、午前3時に強烈なドアのノック音で起こされる。

そうだ、そうだ3時30分にツアースタートなんだ…。

こんな時間にスタートするツアーなんて、富士山のご来光を拝むツアーくらいだろ…とかなんとか独り言を愚痴りながら、出発の準備をする。体調不良で相変わらず朝から悪寒がするが、バスで寝ている間にバファリンが効くだろう…。



バスの中で砂漠の地平線から顔を出した日の出を拝む。

別に日の出をアブシンベルで拝むためにツアー時間が早いわけではないのだ。

で、一体このツアーがなぜ、こんなに早朝出発なのか。

それはアブシンベルがアスワンの町から300キロ以上離れているから…。

推定時速100キロで砂漠の一本道を疾走したバスは、午前7時40分、エジプトの南端アブシンベル神殿駐車場に到着。9時まで観光していいとのこと。



アブシンベル神殿。
一言で言えば素晴らしい。
その姿は余りに完成度が高く、映画ハムナプトラのセットのようだ。
3000年ほど前に造営されたとはまるで思えない。




昨日から観光を繰り返しているが感動が薄いのは、間違いなくその完成度の高さのせい。アンコールワットのように錆びれた様子はなにもなく、「ふるい」を感じさせない美しさがその感動度合いを少し下げているのだ。

でも…遺跡自体は遥々遠くまで来たかいがあるくらい、素晴らしかったです。



その後、バスは4時間かけてアスワンハイダムへと辿り着く。当然ながら、何処から見てもただのダムだった。記念に看板の前で写真を撮影し10分で退散。続いて小船に乗り換えて、小島に辿り着き、イシス神殿というところを観光した。







15時頃、アスワンの町に戻る。ツアー時間は12時間近いのだが、15時に終わるところが素晴らしい。

先を急ごう、次の目的地はサハラ砂漠。

とにかく一度カイロに戻らなければならない。

駅に行き、「今日の夜行寝台は空いているか?」と聞くと18時20分発の寝台が予約できた。1泊2食付で60ドル。



18時18分夜行寝台に乗り込む。

乗務員が丁寧に挨拶に来てくれて、鍵のかかるコンパートメントとなっている室内設備の説明をしてくれる。説明を聞いているうちに、夜行寝台は出発した。

室内は洗面所が完備。さらに乗務員コールボタンまでもが装備されており、なにか困ったことがあれば、コールボタンを押してくださいとのこと。





続いて酷くまずい夕食を食べた後、余りに煙のサワーで心地よく口の中を洗浄したくなり、コールボタン。







「煙草を吸いたい…」

乗務員は優しかった。全室禁煙なのだが、通路に椅子と灰皿を特別に設けてくれて、「ここで吸ってください」とのこと。



一服が終わるとすぐにベットをセットしてもらった。

「もう寝るのですか?」

「うん…ちょっと体調不良で…それと今日3時起きだったんですよ」

「わかりました。それではもう、この部屋には誰も入らないように配慮するので鍵をかけて眠ってもらって結構です」



実は室内はツインベットであり、シングル料金しか払ってないため室内の独占はできず、次の駅で誰か他の客とシェアすることになる。しかし彼の配慮で室内を独占できることになった。

それにしても完璧すぎるほど、丁寧で親切な乗務員だった。



室内の灯りを消すと、非常灯が装備されていないため完全に室内は暗闇になった。外の景色も砂漠の場合は、枕元から綺麗に夜空が見える。もちろん電車のため、見える夜空も移り変わっていく。



まさしく「スターライトトレイン」。



その美しさにしばし心を奪われながら、いつしか眠りについた。