コロナ前の話になるが、

ある夜、幼馴染と友人の店で飲んだ後、

彼の行きつけという店に行った。

 

そこはスチームパンクがテーマという洒落たバーだった。

カウンター席に通され、2人並んで会話をしていたが、

何がきっかけだったか、

隣に座っていた若い女性も輪に入ってきて、

我々とマスター、彼女、の4人での会話となった。

 

聞けば、彼女はカメラで生計を立てたいとの事。

専門学校も出たのだが、

なかなか仕事が無いとの事だった。

彼女の撮った写真を見せてもらうと、

専門学校に行ったというだけあって、

素人には取れない写真の数々。

構図もプロっぽかった。

 

ちょうどその時期、

会社のホームページ等を一新したかった時期だったので、

会社に関わる撮影をお願いする事にした。

彼女もそれに応じた。

しかしこの日はお酒も入っているので、

ギャラの話も含め、

明日以降に改めて打ち合わせをしましょう、

という事になり、名刺交換をしてその場は分かれた。

 

しかし、その後1週間経っても連絡が来ない。

もしかしたら酒の席で変なおじさんが言い寄って来たとか、

変な誤解をされているのかも知れないが、

こちらは純粋に撮影をお願いしたかっただけなので、

一応電話をしてみる事にした。

 

しかし出ない。

時間を空けてもう一度かけたが、出ない。

仕方ないので留守番電話に、

なるべく丁寧にメッセージを残した。

 

しかし、その後、連絡が来る事はなかった。

まぁ酒の席の話だから仕方がないかと思ってあきらめた。

 

その後、コロナ禍となり、

友人の店からも足が遠のき、

酒も呑まなくなってしまったので、

そのバーに行く事もなく、

その女性の事も忘れていた。

 

 

しかし。

しかしである。

 

 

先日、某番組を見ていたら、

見た事のある女性が出ている。

本名まで晒していたので、間違いない。

彼女である。

当時はロングヘア―だったが、

ショートヘアーになっていた。

 

この番組は、有名な番組で、

いわゆる、素人の家についていく番組だ。

時々、プチ芸能人や、デビュー前の人が主演する、

少しやらせっぽいのが玉に瑕な、あの番組だ。

 

彼女はあのバーのすぐ近くに家族と住んでいる模様。

撮影クルーを連れて行くのだから、

仲良し家族かと思いきや、

現れた優しそうな母親は、

なんだか彼女に対する気の使い方が尋常でない様に見える。

彼女は父親が過去にやってしまった過ち

(という程のものではないと思う)に対し、

ねちねちとしつこく怒っていて、

しかし娘に嫌われたくない父親は、

彼女の機嫌を取ろうと必死になっている様に見える。

 

父親が仲直りしようと場を設けても、

自分がして欲しい謝り方をしないと言って、

父に対して不満を露わにする。

彼女は「常に自分は被害者」という、

どうやら家庭内ヒエラルキーの最上位を

歪んだ形で手に入れている様子だ。

 

むむむ…きやつめ、相当質が悪いぞ。

仕事頼まなくて良かったぞ(笑)

 

反省して行動で謝罪する父親に対し、

まるで親より自分の方が偉いといわんばかりの上から目線。

なーんかモヤモヤする…。

しばらく黙ってみていたのだが、思わず、

 

「おめーは人との約束も守らないくせに、何、偉そうに親の事責めてんだよ」

 

と、心の声が出てしまった。

気配を感じて振り向いたら、真後ろに娘がいて、

びっくりした顔でこっちを見ていた(笑)

突然父親がテレビに文句を言いだしたので、

何事かと驚いたらしい。

 

「実は…」と、事情を話したら、さらに驚いていたが、

「そんな事もあるんだねー」と言っていた。

 

娘よ、俺たちは仲良くしようね。

あんな風にはならんでおくれ。