今日の「しんぶん赤旗」。

 

                                           2024年3月8日(金)
除名された元党員の提訴で日本共産党広報部がコメント


 日本共産党の規約に反し、党外から党綱領と規約を攻撃して除名された松竹伸幸氏が7日、東京地裁に「除名処分の撤回」を求めて訴訟を提起しました。これについて、日本共産党広報部は同日、メディアの求めに応じて、次のコメントを発表しました。

                ◇

 松竹伸幸氏の提訴はまったく不当なものである。松竹氏の除名処分は、党規約にもとづいて厳正かつ適正に行われたものであり、この処分が適切だったことは、党の最高機関である党大会で再審査請求が審査され却下されたことによって、最終的に決着済みの問題である。

 そもそも、政党が「結社の自由」にもとづいて自律的な運営を行うことに対し、裁判所の審判権が及ばないことは、1988年12月20日の最高裁判決でも確認されていることであり、このような提訴は、憲法にてらしても成り立たないものである。

 

 

ふ~ん。

 

日本共産党って、憲法第32条を知らないんだろうか?

 

日本国憲法

 

第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

 

いやいや、袴田里見の家屋明渡事件の判決が大事なんだ。

 

政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名その他の処分の当否については、原則として自律的な解決に委ねるのを相当とし、したがつて、政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばないというべきであり、他方、右処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であつても、右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り右規範に照らし、右規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続に則つてされたか否かによつて決すべきであり、その審理も右の点に限られるものといわなければならない。
 

 昭和63年12月20日 最高裁判所第三小法廷判決

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/340/062340_hanrei.pdf

 

でも、弁護士.JPニュースはこう報じている。

 

「共産党袴田事件」の判例変更をねらう


提起後の記者会見では、原告側の訴訟代理人の平裕介弁護士が、「共産党袴田事件」の判例変更を求めることも訴訟の目的であると語った。

共産党袴田事件は、日本共産党の幹部であったが除名された袴田里見氏が、除名後も党が所有していた家屋に居住し続けていたことを受けて、党が袴田氏に家屋の明け渡しを求めた民事訴訟。

1988年12月、最高裁小法廷は「政党が党員に対して行った処分は、一般市民法秩序(=一般社会、世間)と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、司法審査に及ばない」「例外として一般市民法秩序と直接の関係を有する場合であっても、政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情がないなら、適切な手続きに則って処分の判断がされたか否かによって決すべき」と判断した。

上記の判断は、原則として国が結社に干渉することは避けるべきであり、結社の内部で行われた判断は政党内の自律的な解決に委ねるべきとする、憲法21条に定められた「結社の自由」を尊重する考えに基づくもの。

また、政党などの団体は、日本や世間という「一般社会」とは異なる「部分社会」としての独自の法規範や規律とそれに基づく構成員の処分権限を持っており、団体内部の規律問題については司法審査が及ばないとする、「部分社会の法理」も関わっている。

しかし、2022年11月、最高裁大法廷は「部分社会の法理」を認めた1960年の判例を変更した。また、1970年の判例(八幡製鉄最大判)では、「憲法は政党について規定するところがなく、これに特別の地位を与えていない」と判断された。

原告側が提出した訴状では、小法廷限りの判断である共産党袴田事件の判例には先例的価値はないとして、判例変更を求めている。

また、今回の松竹氏に対する除名処分は「一般市民法秩序と直接の関係を有する」ものであり、除名処分を決定する手続きも不適切であったことから、判例を変更しないとしても司法審査の対象になる、とも原告側は主張している。

 

 

 

日本共産党の「しんぶん赤旗」のコメントでは、裁判が不当だと書かれていた。

でも、「弁護士JPニュース」の記事では、袴田里見氏の判決自体が、結社の自由を優先して、個人が裁判を受ける自由を侵害しているのだとも言っている。

 

 

 

党の「結社の自由」か、個人の「言論の自由」か


除名処分は日本共産党の「結社の自由」を守るために許容されるべきか、それとも松竹氏個人の自由の侵害にあたるため許容されるべきでないかが、訴訟の争点となる。

具体的には、党の方針を批判する内容を含む書籍の出版を除名処分の理由にすることは、「結社の自由」と同じく憲法21条に定められている「出版の自由」や「言論の自由」「表現の自由」の侵害である、と原告側は主張。

また、除名処分によって松竹氏が党首選に立候補できなくなったことは憲法15条に定められた「立候補の自由」を侵害する、とも主張している。

支部が行うべきとされている除名処分を地区委員会が行ったこと、除名処分を決定する日時や場所が明確に通知されなかったために松竹氏は意見表明をする機会が持てなかったことなど、処分に関する手続きには問題があり日本共産党の規約にも違反しているという問題も指摘。

さらに、共産党袴田事件の判例についても、政党の「結社の自由」を優先して個人の「裁判を受ける権利」を侵害する判断だと批判した。

 

党大会では、再審査請求を却下した。

山下芳生副委員長はこう言っていた。

 

 

党規約第55条にもとづいて松竹氏に十分に意見表明の機会をあたえるとともに、党規約第5条の「自分にたいして処分の決定がなされる場合には、その会議に出席し、意見をのべることができる」については、処分を決定する会議の日程を松竹氏に伝えたうえに、松竹氏からも繰り返し日程確認の問い合わせがあったが、松竹氏は、会議に出席し、意見をのべる権利を行使しなかった。したがって、処分は党規約にもとづいて適正な手続きで行われており、何ら瑕疵はない。

 

 

しかし、先の記事にもこういう争点がある。

 

支部が行うべきとされている除名処分を地区委員会が行ったこと、除名処分を決定する日時や場所が明確に通知されなかったために松竹氏は意見表明をする機会が持てなかったことなど、処分に関する手続きには問題があり日本共産党の規約にも違反しているという問題も指摘。

 

この問題に関しては、松竹氏が地区委員会でのやり取りを録音しているらしい。

もしかしたら、提訴が不当なのではなく、再審査請求をろくに調査も審査もしなかったのだったら、再審査却下が不当だということになる。

 

松竹氏の提訴集会ではこういう声もあったらしい。

 


 対談では、聴衆として参加していた共産党員を名乗る男性も発言。「これまで公然と動くことは控えてきた」というが、党大会で再審査が却下されたことで

「これはもう立ち上がるときだということで、あえて公然化を決意」

したという。ただ、その行為は規約が禁じる「分派」にあたる可能性もあり、

「公然と反党分子に協力したということで、今の共産党中央の解釈でいけば、一発除名に、多分これからなる」

とも話した。さらに、

「私はこれから仲間を広げていく。そうすると、続々と除名者が出てくる」
  「続々と除名されていくと、共産党がなくなってしまうかもしれない。野党共闘の片方の柱がなくなってしまう」

 

 

除名の連鎖。

 

党に残るのは、表現の自由より、結社の自由を声高に叫ぶ人たちだけになるのだろうか?

 

 

まるで、ジョージ・オーウェルの「1984年」の世界みたいに。

 

 

 

おお、怖い世界。