移行上皮とは膀胱に見られる組織です。
つまり移行上皮癌は基本的に膀胱や膀胱に隣接する尿道などで見られます。
尿漏れ、頻尿や血尿といった症状を伴うことが多く膀胱炎と混同されることがあります。
超音波検査で膀胱内に腫瘤を認めて発覚することが多いです。
犬でも猫でも膀胱における腫瘍の大半は移行上皮癌です。腫瘍でない場合は炎症による肉芽腫などが挙げられます。
超音波検査等で膀胱に腫瘤が見つかった時は腫瘍かそうでないかの判断ができる検査を速やかに行うことが推奨されます。
ただし、この腫瘍は針での吸引によって針の通り道に播種(腫瘍細胞が広がってしまう)するリスクがほかの腫瘍に比べ高いです。
そのため他の方法が取れる場合は針で刺しての細胞診は避けた方が良いです。
膀胱腫瘤検査のための採材は、尿道からカテーテルを入れて尿を採取しそこに含まれる細胞を遠心分離して集めたり、位置が良ければカテーテルで直接腫瘤を吸引し組織の一部を吸い出したり、膀胱用の内視鏡を使い組織を採取します。膀胱用の内視鏡はオス犬やオス猫では使えず、メス犬やメス猫では使えますが身体が小さすぎると尿道を損傷する恐れがあり使用できません。
また、現在は尿中に含まれる腫瘍細胞の遺伝子を検出する方法もあります。
手術で腫瘤を摘出して病理組織検査を行う事もあります。
しかし移行上皮癌は膀胱の中でも腎臓と膀胱を繋ぐ尿管が繋がっていて尿道にも近い排尿機能に非常に重要な位置にできやすいことが分かっています。そして局所浸潤性が高いです。
つまり切除しにくい、もしくは切除するとしたらかなり排尿機能に影響を及ぼすと言うことになります。
放って置いてもこの位置で腫瘤が大きくなると尿道や尿管が閉塞し排尿できなくなり命に関わります。
今日の内容のまとめ
・犬猫の膀胱の腫瘍はほぼ移行上皮癌
・膀胱炎のような症状が見られることがある
・検査は通常針吸引以外が推奨される
・移行上皮癌は膀胱の中で外科的な治療が行いにくい部位に多発する
次回は移行上皮癌の原因や治療についてまとめます。