RASITは、フランス製の地上監視レーダーであり、
パルス・ドップラー・レーダーでもあります。

探知範囲(レンジ)は約40キロです。

歩行者は23キロ、
自動車は32キロ、
3トントラックは40キロ、
ヘリコプターは30キロ
まで探知可能です。



歩行者は小さいので、23キロまでしか探知できません。

一方、3トントラックは大きいので、40キロ離れても探知できます。

ヘリコプターは航空機より低空を飛行するので、
地上監視レーダーで監視しています。


ちなみに、200メガヘルツから6.5ギガヘルツの周波数の電波を

パルスとして発射するレーダーは、

マイクロ波聴覚効果を示します。

即ち、パルスが人間の頭部に照射された場合、聴覚を刺激し、

簡単に言うと、音として聞こえます。


RASITのようなパルス・ドップラー・レーダーを改良して、

人間の頭部にマイクロ波パルスを照射した場合、

音声を送信することができます。


基本的には、2種類の送信機を使い、

一方の送信機は、ある程度、広い範囲をスイープして、

ターゲットの頭部の位置を計測する機能があり、

他方の送信機は、頭部に音声を送信する機能があります。





マイクロ波聴覚効果の文献

(a) 世界保健機構(WHO)
「レーダーと人の健康」、4ページ

200メガヘルツから6.5ギガヘルツ(6500メガヘルツと同一)の周波数の電波をパルスとして発射したとき、ザーザー、カチカチ、シューシュー、ポンポンなど様々な音として聞こえます。

この現象をマイクロ波聴覚効果といいます。

この文献については、
「レーダーと人の健康:レーダーで幻覚を発生する生理機構」
という記事で解説しています。


(b) J.A. Elder and C.K. Chou, モトローラ・フロリダ研究所、
「電波エネルギーパルスに対する聴覚応答」
Bioelectromagnetics Supplement 6:S162-S173(2003)


(c)Taylor EM, Ashleman BT 
"Analysis of Central Nervous System Involvement 
in the Microwave Auditory Effect"
 Brain Research 74:201-208; 1974

E.M.テイラー、B.T.アシュルマン、
「マイクロ波聴覚効果における中枢神経系の関与」、
脳研究、74:201-208、1974

(d) 「マイクロ波パルスにより発生する蝸牛のマイクロホン電位」
”Cochlear microphonics generated by microwave pulses”
 
Chou C, Galambos R, Guy AW, Lovely RH
 
 The Journal of Microwave Power [1975, 10(4):361-7]

(e)  「変調された電磁波エネルギーに対するヒト聴覚系の応答」

Allan Frey, J. Applied Physiology, 17:689-692, 1962

(f) 「マイクロ波の可聴;マイクロ波パルスによる熱弾性波聴覚刺激の証拠」

Science 19 July 1974:
Vol. 185 no. 4147 pp. 256-258
 
"Microwave Hearing: Evidence for Thermoacoustic Auditory Stimulation
by Pulsed Microwaves"
 
Kenneth R. Foster and Edward D. Finch
Naval Medical Research Institute,
National Naval Medical Center,
Bethesda, Maryland 20014


レーダー用送信機が発射するマイクロ波パルスが頭部に当たったとき、音として聞こえる現象は、コーネル大学、アラン・フレイ教授が1962年に応用生理学ジャーナルに論文を発表しました(上記e)。

その後、別の研究者が同様の研究を行い、マイクロ波聴覚効果を確認するとともに、
マイクロ波聴覚効果は内耳の蝸牛が関与していることを動物実験で明らかにしました。

内耳の蝸牛は、蝸牛の振動を電気信号に変換する器官であり、
この電気信号は神経を経由して、脳に伝わります。

人間は脳で音を認識します。

通常の音は鼓膜の振動が内耳の蝸牛に伝わり、蝸牛で電気信号に変換されます。
一方、マイクロ波聴覚効果では、脳の振動が内耳の蝸牛で電気信号に変換され、
鼓膜は振動しません。