昨日(2017/12/27)の日本経済新聞 朝刊 経済教室に、相澤英孝氏( 一橋大学教授)のコラム「次世代の日本の特許戦略 「抑制」から「重視」へ転換を 」が掲載されていた。 https://www.nikkei.com/article/DGXKZO25096310W7A221C1KE8000/

 ポイントは次の3つ
○特許制度が投資の促進や技術革新に寄与
○米国は特許重視への方針転換で経済回復
○日本は先端産業に出遅れから特許抑制に


 注目したのは3番目の「日本は先端産業に出遅れから特許抑制に」である。


「政府の知的財産推進計画2015では特許制度の活性化に言及され、一抹の明かりが見えたように思えた。ところが、最近の経済産業省の検討会や知的財産推進計画2017などでは、製品の標準規格として広く利用される「標準必須特許権」のライセンスを特許庁が裁定(強制実施許諾)できる制度が提案された。」


 知財立国日本とうたいつつも、むしろ逆のアンチパテントに向かっているのではと思われる政策が検討され始めていると、相澤教授が懸念を表明。


 確かに、裁定制度については、
 主要国における標準必須特許の権利行使の在り方に関する調査研究報告書
 平成29年3月 一般財団法人 知的財産研究教育財団 知的財産研究所
 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken_kouhyou_h28/h28_report_07.pdf
で、相澤教授が懸念していたことを議論していた。


 興味のある方は以下の検討経緯及び議論状況を参照してみては。
(ⅰ) 産業構造審議会知的財産政策部会における検討(2004年)
 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/strategy_wg_menu.htm
 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/strategy_wg_prob.htm
(ⅱ) 特許制度研究会における検討(2009年)
 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/kenkyukai/pdf/tokkyoseidokenkyu/houkokusyo.pdf
(ⅲ) 産業構造審議会知的財産政策部会における検討(2010年)
 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/tokkyo_seido_menu.htm
 ① 第27回特許制度小委員会(平成22年5月24日)
 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/tokkyo_giji027.htm
 ② 第34回特許制度小委員会50(平成23年2月1日)
 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/tokkyo_giji034.htm
 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/tokkyo_syiryou034/01.pdf
 ③ 特許制度に関する法制的な課題について(平成23年2月)
 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/toushintou/pdf/tokkyo_housei_kadai/houkoku.pdf
(ⅳ) 知的財産戦略本部における検討(2015年)
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/
 ① 第1回知財紛争処理システム検討委員会(平成27年10月28日) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/syori_system/dai1/gijisidai.html http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/syori_system/dai1/siryou3.pdf http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/syori_system/dai1/sankou5.pdf
 ② 第2回知財紛争処理システム検討委員会(平成27年11月18日) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/syori_system/dai2/gijisidai.html http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/syori_system/dai2/siryou2.pdf http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/syori_system/hokokusho2.pdf

 

 

 でもね、第23回特許制度小委員会 配付資料の「標準必須特許を巡る課題と制度的対応について 特許庁2017年11月 資料1」https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/newtokkyo_shiryou23/01.pdf で、
 で、

 裁定制度について、
 実施者側のみが請求できる制度であること
 日本の特許権のみが対象であり、グローバルな解決にはつながらないこと
 特許庁が個別に適切なライセンス条件を設定できるのか疑問視する声が多く聞かれること
 途上国による標準必須特許以外への悪用の可能性も含め、国際的にも制度の導入について大いに懸念があること
等の課題が存在しており、これらの課題を解消できない限り、その導入は困難ではないかとの、疑問を呈している。

 

 そもそも、裁定実施権、例えば、特許法第93条に規定する、公共の利益のための通常実施権の設定の裁定なんて、いままでやったことがあるの?

 どだい裁定による実施権の強制設定なんて無理、無理?

 

 なお、アンチパテント政策といえるのか疑問ではあるが、ただ一つ懸念がある。

 それは、平成29年9月 特許庁のHPに掲載された、「標準必須特許のライセンス交渉に関するガイドライン策定に向けた提案募集について」 https://www.jpo.go.jp/iken/170929_hyojun.htm である。

 ライセンス交渉のためのガイドライン策定など、私的なライセンス交渉に行政(特許庁)が介入(?)すること自体おかしくはないのか?


 通信大手と自動車メーカーという、異業種間でのライセンス、
 クロスライセンス」での解決ができない、
 ライセンス料の相場観がかけ離れている、
 交渉の進め方の慣習の違い、
など、解決の糸口を見つけるのが難しいという問題 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22932720R31C17A0TCJ000/ 

があるのは確かだけれど。

 

 なお、産業構造審議会知的財産分科会 第22回特許制度小委員会 2017年09月29日の配布資料である、「標準必須特許の現状と課題」 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/newtokkyo_shiryou22/01.pdf 

は、標準必須特許関連で現在起きている問題を知るのに参考となる。