巷では実用新案制度不要論がいろいろと囁かれている一方で、件数は少ないものの実用新案権に基づいた侵害訴訟が存在する。


 例えば以下の裁判例がある。


1.平成26年(ワ)第4916号 実用新案権侵害差止等請求事件 大阪地方裁判所
 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/907/085907_hanrei.pdf

 文言侵害不成立だが均等侵害が認められ、また独占的通常実施権者による損害賠償請求が認められた事例。商標権侵害についても判断。

 

 足先支持パッド事件として知られている。

 

 被告はもともと原告から商品を仕入れて販売していたが、それを止めて被告が独自に商品開発して販売した経緯がある。イ号物件は被告の独自開発した商品。


 被告商品は,本件考案の構成要件①ないし③,⑤,⑦を文言上充足するが,構成要件④及び⑥の一部(水平部が小指の指頭部下辺まで至り,水平部の上面及び第3凸状部の側面が小指の付け根部の下側と密接できるようになだらかに湾曲していること)を文言上充足すると認めることはできないとして、文言侵害を否定するも、
 この相違点について、
 第1要件(非本質的部分性)
 本件考案の固有の作用効果を基礎づける本質的部分に属するものではないというべきである。
 第2要件(置換可能性)
 前記相違点に係る構成要件④及び⑥の構成を被告商品の構成に置き換えても,本件考案と同一の作用効果を奏するものと認められる。
 第3要件(置換容易性)
 本件考案の構成要件④及び⑥と被告商品との差異に係る部分を,それぞれ被告商品の構成に置き換えることについては,当業者が対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたというべきである。
 第4要件及び第5要件
 均等の成立を争う側において,対象製品等が公知技術から容易に推考できたものであることや,対象製品等が考案の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情の主張立証責任を負うと解するべきところ,本件ではこれらについて主張立証はない。
 以上より,被告商品は,本件考案と均等なものとしてその技術的範囲に属するということができると、均等侵害を認めた。

 

 被告は,原告有限会社ガルボプランニングに対し,1億6290万6617円及びこれに対する平成27年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払えと、結構高額。

 

 本判決については控訴されている?
 また、被告側から無効審判が4件請求されているが、全て請求取下の審決。
 ただ、そのうちの2件については審決取消訴訟(平成28年(行ケ)10097、平成28年(行ケ)10217)が提起されている。

 今後の成り行きをウォッチしてゆきたい。

 

2.平成26年(ワ)第5064号 実用新案権侵害差止請求権不存在確認等請求事件 大阪地方裁判所
 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/080/085080_hanrei.pdf

 安定高座椅子の考案について実用新案権を有する被告が,高座椅子の製造,販売等を行う原告及びその取引先等に対し,原告の商品は被告の実用新案権に抵触するものと認識していることなどを通知したことから,原告は,被告の実用新案権の無効を主張し,差止請求権等の不存在確認を求めると共に,前記取引先等への通知が,不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為(競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知,流布)にあたるとして,被告に対し,同法3条1項による差止め及び同法4条による損害賠償を請求した事案で、判決の主文は以下の通り。
1 原告の別紙商品目録記載の商品の製造又は販売につき,被告が,原告に対し,実用新案登録第3158266号に係る実用新案権に基づく差止請求権,損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を有しないことを確認する。
2 被告は,文書,口頭又はインターネットにより,原告が別紙商品目録記載の商品を製造又は販売することが,実用新案登録第3158266号に係る実用新案権を侵害し,又は侵害するおそれがある旨を,第三者に告知してはならない。
3 被告は,原告に対し,金88万円及びこれに対する平成26年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は,これを5分し,その2を原告の,その余を被告の各負担とする。


 本事件は、実用新案技術評価書(実用新案法第12条)の制度趣旨に言及したケースで、参考になる。


 被告は,特許庁長官に対し実用新案技術の評価請求を行い,平成23年11月24日付で,本件考案を「2」(この請求項に係る考案は,引用文献の記載からみて,進歩性がない[実用新案法3条2項])と評価する実用新案技術評価書を得ていたものの、これを提示することなく、原告に対し,本件原告商品が本件実用新案権に抵触するものと認識しているとして,本件原告商品に関する一切の広告宣伝及び製造,販売行為を中止するよう求める平成26年3月18日付け通知書(警告書)を送付した。


 判決では、実用新案技術評価の提示について、「実用新案技術評価は、特許庁審査官が行う一種の判定であって,実用新案登録無効審判と同様の効力を有する行政処分にはあたらず,実用新案技術評価において無効原因がある旨の評価を受けたとしても権利行使が禁じられるわけではないが,その場合,一方では,技術評価書の判断を否定して権利行使をするには,相応の根拠が必要というべきであるし,他方では,権利行使に先立って技術評価書を提示することにより,相手方は,技術評価書の記載を参考に権利の有効性を争う方向で対応するか,逆に,技術評価書の判断に依拠せず権利を有効なものとして対応するかを判断,選択することができるのであって,法は,そのような趣旨で,権利行使に先立ち,技術評価書を提示して警告することを求めたものと解され,技術評価書の提示は,極めて重要なものと位置付けられる。
 被告は,本件技術評価書を提示することなく,原告に対しては,本件警告を送付して販売等の差止めを求めており,販売業者である本件通知先に対しては,本件通知を送付して本件原告商品が本件実用新案権に抵触する旨を指摘し,その対応について回答するよう求めているのであるから,前者については技術評価書の提示のない権利行使,後者については技術評価書の提示のない警告というべきであり,これは,不正競争行為にあたると同時に,権利が無効となる可能性があることを知る機会を与えないままこれを行ったという意味で,法の趣旨に反する違法な行為というべきである。」
と、判断。


 なお、無効原因については、実用新案技術評価書に列記された文献ではなく、本件登録出願前に公然実施された1503商品に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものと認められと、原告が製造・販売する商品に基づいて判断。

 

 

 なお、上記裁判例以外にも

 平成24年(ワ)第8221号 実用新案権・意匠権侵害差止等請求事件 東京地方裁判所
 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/272/083272_hanrei.pdf
 実用新案権と意匠権(部分意匠)の双方の侵害を認めた事件

 

 

 平成23年(ワ)第7674号 実用新案権侵害差止等請求事件 大阪地方裁判所
 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/413/083413_hanrei.pdf
 技術的範囲に属するものの、無効の抗弁が認められた事件

 

 

 平成23年(ネ)第10035号 実用新案権侵害差止等請求控訴事件 知的財産高等裁判所
 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/145/082145_hanrei.pdf
 文言侵害および均等侵害なしと判断された事件

 

 

 平成22年(ワ)第2544号 実用新案権侵害差止等請求事件 大阪地方裁判所
 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/130/081130_hanrei.pdf
 無効の抗弁を認めた事件

などがある。