実用新案制度の活用を考えるなら、少し視点を変えてみたら。


 例えば、実用新案の出願件数が多い国の実新案制度を参考にしてみては?


 2015年度の実用新案登録出願件数について、
 日本では6860件であるのに対し、
 中国では1127577件、
 ドイツでは14277件である。

 因みに中国では2015年度の特許出願件数は1101864件で、
 実用新案の方が特許よりも出願件数が多い。


 出願件数だけで単純に比較することはできないが、
 百万件を超える中国や日本の2倍の出願件数のドイツ、
 実用新案制度の使い勝手が良いのでは?


 例えば、日本と中国の実用新案制度を比較すると、
 無審査で登録が認められる、
 権利対象が「物品の形状、構造又は組み合わせ」、
 存続期間が出願から10年
 これらについては日本と同じである。

 権利行使時の評価書の提出については義務ではないが、要求される場合が有り得る、
 同一のアイディアについて、特許と実用新案の二重出願が可能、
 進歩性のレベルが特許よりも低い、
 出願変更が認められない、
 これらについては日本と異なる。


 また、日本とドイツの実用新案制度を比較すると、
 無審査で登録が認められる、
 存続期間が出願から10年、
 進歩性のレベルが特許と同じ
 これらについては日本と同じである。

 方法以外特許と同じ、
 権利行使時の評価書の提出については任意、
 同一のアイディアについて、特許出願から実用新案登録出願への分岐出願が可能で、元の特許出願が取り下げられない、
 出願変更が認められない、
 これらについては日本と異なる。

 

 相違点のなかで、注目したいのは
 「同一のアイディアについて、特許と実用新案の二重出願が可能」
 「元の特許出願を取り下げない分岐出願」
である。

 

 例えば、中国の実用新案制度で認められているように、同一のアイディア(発明・考案)について、同日に特許出願と実用新案登録出願を出願する。
 先ず、実用新案権を取得し次いで特許権を取得する。特許権取得までは実用新案権でアイディアを保護する。


 或いは、ドイツの特許・実用新案制度で認められているように、特許出願後、直ぐに特許出願を基に同一発明について実用新案登録出願(分岐出願)をして実用新案権を取得する。次いで、特許権の取得を取得する。


 いずれも、同一のアイディア(発明・考案)について、先ず実用新案権で保護し、次いで特許権で保護する。


 このように同一のアイディアを特許と実用新案で連続して保護することが出来る様にすれば、実用新案制度の活用が増えるのでは?


 因みに、現行の制度でこれと似たようなことを実現するには、
 例えば、実用新案登録出願を行い、実用新案登録を受けた後、実用新案登録出願日から3年以内に、実用新案登録に基づいて特許出願することが考えられるが、
 特許出願の際にその実用新案権を放棄する必要がある(第46条の2第1項、施行規則第27条の6)。
 特許出願の際とはいっても、出願と同時ではなく、出願の却下処分が行われる前までに実用新案権の放棄による登録の抹消の申請を行えばよいが、特許権の取得が認められるまではどうしても権利の空白期間が生じてしまう。


 現行の制度では、同一のアイディアを実用新案と特許で連続して保護することが出来ない。

 

 実は、同一のアイディアを特許と実用新案で連続して保護することについて、以前から種々提言されているが、何故かあまり取り上げられていないのが実情である。

 以前紹介した「特技懇 268号 ③実用新案制度の活用に関する一考察」 http://www.tokugikon.jp/gikonshi/268/268kiko3.pdf の注143)には

「 玉井・前掲注(94)66頁は,実用新案と特許との併用を認め,実用新案に暫定的特許の性格を与えるべきとする。また,土肥・前掲注(10)758-759頁も技術開発成果を補完的に保護するものと位置づけ,同一発明が特許化されるまでのつなぎとして保護するためにドイツの分岐出願(注(52)参照)のような制度導入の必要性を指摘する。同様の見解を示すものとして,大川晃「21世紀に向けた知的財産制度への展望(2)」知財管理45巻2号217-218頁(1995),大川・前掲注(45)60頁も参照。久々湊・前掲注(10)21頁は,権利主体が同一で権利の得喪について相互に関係をもたせるならば,ダブルパテントの弊害は生じないから,分岐出願を敬遠する必要性はないと思われる,との指摘をしている。なお,ドイツでは特許.実用新案間でダブルパテントが生じうるが,制度上,その弊害への配慮はなされていないようであり(多田達也「ドイツの特許制度とそれを取り巻く環境」特技懇260号36頁(2011)),判例待ちの状態のようである(実用新案制度調査団・前掲注(53)「実用新案制度調査団概要報告」1376頁)。
 また,アンケート(Ⅳ.1参照)の結果をみると,二重登録による保護が必要であるとの回答は,大企業において29%,中小企業において64%,個人発明家において100%であり,資力に乏しい出願人ほど権利の連続的な保護を求めているという傾向が見られた。」

 

 そこでそこで、例えば、現行の制度において、実用新案登録に基づいて特許出願する際には元の実用新案権の維持を認め(実用新案権の放棄を求めず)、特許権の設定登録時に実用新案権の放棄を求める、ようにすれば、二重登録の問題は生じなし、大幅な法改正のしなくても済むと思うが、どうだろう。