実用新案制度の存廃論についてはいろいろあるが、何故存廃論なのか。

 それは活用されていないからである。

 出願件数の減少が物語っている。

 要因の一つとして挙げられているのが、実用新案法第29条の3の存在である。

 権利行使後、無効審決が確定したとき、権利行使により相手方に与えた損害について実用新案権者に無過失賠償責任を負わせる内容である。


 でもよく考えてみて。


 特許権等の紛争解決の実態に関する調査研究報告書(平成27年3月)によると、「特許関連訴訟の件数は、ここ数年200件前後の水準で推移しており、これは米国に比べ数十分の一と著しく低い」と報告してあるように、特許権ですらこのような状況にあり、実用新案権に基づいて権利侵害訴訟を提訴することはまれで、それ故「実用新案法第29条の3」の規定の適用を受けることは皆無であるといっても過言ではない。


 そうすると活用されない理由としての「実用新案法第29条の3」の存在はあまり意味が無い。


 権利行使ではなく、自己の実施を確保するという防衛のためと視点を変えれば、実用新案でもよいのでは?


 実用新案の保護対象は、物品の形状、構造又は組み合わせで、方法や物の生産方法については対象にならないけれど、どうなの。


 詳細な説明の欄で開示しておけば済むこと。


 登録公報の発行後は、少なくとも公報に掲載された方法や物の生産方法について、第三者が特許を取得することはできない(特許法第29条第1項第3号)。


 特許出願では、出願から3年以内に出願審査請求をしなければ、取り下げたものとみなされ、第三者は特許出願された発明について自由に実施することが可能であるが、実用新案の場合、請求の範囲に記載された考案については、権利行使に際し制約(実用新案法第29条の2、第29条の3)があるものの、第三者の自由な実施に対しては牽制する効果がある。


 まあ、防衛の観点からすると、特許よりも実用新案の方が効果があるということ。


 ただ注意しなければならないことがある。

 特許出願の場合、出願審査請求をしなければ出願手数料(特許庁に支払う特許印紙代)は、14,000円のみで済むが、実用新案の場合、出願手数料の14,000円の他に第1年から第3年分の登録料が必要となり、若干割高になることである。

 


 実用新案制度について真面目に考えるなら、「特技懇 268号 ③実用新案制度の活用に関する一考察」がある。
 興味のある方は以下のURLにアクセスしてみては。
 http://www.tokugikon.jp/gikonshi/268/268kiko3.pdf

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