2014年11月17日、日本経済新聞朝刊、17面の経済教室欄に 「職務発明制度の論点 (上)」 東京大学 玉井克哉教授 が掲載されていた。
上記記事のポイントは、
従業員への「相当の対価」の額は予測不可能である
現行法の仕組みは企業経営に大きなリスクがある
発明への報酬のあり方は多様であってよい
玉井教授は、特許法第35条第3項の「相当の対価」の支払い義務が、現行法の問題点であると、指摘した。
実は「相当の対価」の支払い義務そのものについてあまり疑問を持たず、当然のことのように思っていた。
ただ相当の対価の算定について、裁判例をもとに算定の基準を論じた尤もらしい論文が種々投稿されているけれど、読んでも正直言ってよく分からなかった。
明確な算定基準があるわけではなく、ケースバイケースで決めるしかないのではと思った。
玉井教授によると、
「相当の対価」が具体的にいくらになるかは予測不可能なことである。
例えば、日亜化学と元従業員の中村修二氏との訴訟では、一審の東京地裁で相当の対価を600億円と判断したのに対し、二審の東京高裁で百分の一の約6億円(判決ではなく和解金額)と判断しているのではないのか。
これからみても分かるように、発明時点で研究者や企業が発明の対価としての金額を正確に見積もりすることなど、できるはずがないと、断言している。
確かにその通りである。
では、「相当の対価」の支払い義務を否定する根拠は何なんだろう。
予測不可能な「相当の対価」の支払い義務という仕組みは、企業経営に不必要なリスクを負わせ、国際競争力を損なう結果になる、というのが根拠である。
玉井教授によると、職務発明の発明者に対する報酬として「相当の対価」の支払いがあるが、これに限定する必要はないとし、ボーナス、研究費の増加、表彰、昇進、研究の自由度を挙げるなどがあると、提案している。
このように考えてくると、「相当の対価」を一律に保障した現行の特許法第35条第3項は、改正の必要があると、思うようになってきた。
どうだろう。