パテント誌2014.6に「新たな実用新案制度の創設の提案」のタイトルの寄稿文が掲載されていた。寄稿したのは平成25年度特許委員会(第1委員会及び第2委員会)第4部のメンバーの先生方である。



 「新たな実用新案制度の創設の提案」では、2つの改正案を提案しており、その1つの改正案は審査主義(実体審査制度)の採用、また2つ目の改正案は無審査登録主義を維持しつつも審査主義のメリットを適宜取り入れると、いうものである。



 改正案の具体的内容として、以下の10項目を挙げている。
 1.進歩性に代わる第2の要件
 2.保護対象の拡大
 3.効力の修正
 4.審査主義の復活
 5.審査請求期間
 6.審査着手後の審査の繰り延べ
 7.出願公開制度の復活
 8.存続期間
 9.仮出願制度
 10.変更出願、分割出願



 上記10項目を読み、思い出したことがある。
 それは、「実用新案制度の活用について」について、以前(2013年06月26日)、
ブログ  で紹介した特技懇誌2012.1.28.no.268「実用新案制度の活用に関する一考察」のタイトルの 寄稿文 である。



 上記寄稿文では、改正案として以下の6項目を挙げている。
 ア 有効性確認審査制の導入
 イ サーチレポートの公開
 ウ 仮出願的制度の導入
 エ 進歩性の基準の引き下げ
 オ 保護対象の拡大
 カ 出願料、登録料の柔軟な対応



 進歩性について、両寄稿文の改正案を対比すると、
 前者(「新たな実用新案制度の創設の提案」)では進歩性に代わるものとして「付加価値性」を要求することを提案しているのに対し、
 後者(「実用新案制度の活用に関する一考察」)では a進歩性否定のための証拠を制限する手法、b進歩性否定のためには引用文献中の示唆等を要求する手法、cオーストラリアの「革新性」概念を導入する手法ではなく、実務上なじみのある進歩性の基準(動機づけアプローチ)をベースに考慮要素(例えば予想以上の実用的利便性の有無など)を付加する手法を提案している。


 後者の提案はこれまでの進歩性判断手法の延長線上にある一つの手法であるが、前者の進歩性に代わる登録要件としての「付加価値性」を要求する提案は斬新である。


 「技術的価値」や「技術に基づく経済手的価値」が含まれるが、これらの価値がなければ確かに保護する値ししない。これに着目した点は素晴らしい。


 でも「付加価値性」の審査はどうするんだろうとの疑問がある。

 
 「技術的価値」や「技術に基づく経済手的価値」をどのような基準で判断するのだろう?


 一番疑問に思ったのは、審査官はどのような資料に基づいて出願人に対し「付加価値性」なしを理由とする拒絶理由通知をだすのだろう?


 この点について、前者の寄稿文には、「技術的価値」が無いものとして
 単なる用途を見つけた
 単なる置換
 売れていない
 すぐ思いつくもの
 数値限定をしただけ
 設計事項
などを挙げている。


 そうすると、審査官は、「単なる用途を見つけた」などに過ぎず「技術的価値」なしと判断して、「付加価値性」の欠如を理由とする、拒絶理由通知をだすことになるのか?

 
 これに対し、拒絶理由通知を受けた出願人としては、前者の寄稿文に挙げられているように、

 例えば、
 ライセンスの申し込みがある
 業界の評価が高い
 技術的コンクールにおける評価が高い
などで「技術的価値」の存在を主張して拒絶理由に反論することになる?


 また、例えば、
 よく売れる
 安く造ることができる
 使い勝手がよい
 需要者にとって便利である
などで「技術に基づく経済手的価値」の存在を主張して拒絶理由に反論することになる?


 前者の寄稿文では、「付加価値性」についての判断時期は審査時(査定時?)になるだろうから、「付加価値性」の欠如を理由とする拒絶理由通知を受けた出願人の便宜のため、「審査着手後の審査の繰り延べ」を提案している。


 前者後者の両寄稿文、いずれも何とかして実用新案制度の活用を促進することを模索しており、一読の価値ありと思う。


 なお、前者の寄稿文について肯定的な立場から見解を書いたが、否定的な見解があると思うので、その見解の内容が是非知りたい。

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