第三次改正中国商標法関連ニュース「中国の新商標法は外国の商標保護にプラス」が、パテントサロン 最近の知財関連ニュース欄(最終更新日時:2013年9月3日)で掲載されていた。


 「第12期全国人民代表大会(全人代)常務委員会で30日(2013年8月30日)、「中華人民共和国商標法」改正に関する決定が採択された。」


 同ニュースでは施行日について具体的な言及がなかった。


 第三次改正中国商標法の具体的な情報については、

 2011年5月 ジェトロ北京事務所 知的財産権部 平成22年度特許庁受託事業 「中国商標法改正における若干の問題」
http://www.jetro-pkip.org/upload_file/bgs2010/20100703.pdf

 2012 年12 月28 日発表の中華人民共和国商標法修正案(草案) 独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ) 北京事務所知的財産権部編
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/ip/law/pdf/opinion/20121228.pdf

 特許庁 新興国等知財情報データバンク 中国商標法改正案に関する意見募集
http://www.globalipdb.jpo.go.jp/trend/2271/

などで入手できる。


 第三次改正中国商標法で気になったのが馳名商標(周知商標)の保護である。


 以前(2012.04.27)、楽天ブログで「中国における周知(馳名)商標の保護」について書いた。


 「独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)から模倣品被害の多い国・地域における法制度や判例・事例を紹介する目的で、2011年度版各国別「模倣対策マニュアル」、「知的財産権侵害 判例・事例集」を発行している旨、知的財産関連ブログで紹介されていたので、早速申し込んだら、直ぐに届いた。感謝!感謝!である。

 「模倣対策マニュアル」中国編 2012年3月 25頁から35頁には”馳名商標の保護手続”についての分かり易い解説がある。

 ここで、馳名商標とは、「中国において関連公衆に広く認知され、高い名声を有する商標のことをいう」と定義している(保護規定(馳名商標の認定と保護に関する規定 2003 年4 月17 日公布)2条1項)。

 同2条1項中の関連公衆とは、「商標を使用する特定商品又は役務を享受する消費者、同商品を生産し同役務を提供するその他の経営者、及び流通に係る販売者及びその他の関係者を含む」と定義している。

 そうすると、中国外で周知であってたとしても、中国内で関連公衆に広く認知され、高い名声を有していなければならないことになる。

 では中国内でも周知であると認定されるのにはどのような手続が必要となるのか。

 中国商標法14条に馳名商標の認定要件が列挙されている。同14条によると、
 (一)関連公衆の当該商標に対する認知度
 (二)当該商標の持続的な使用期間
 (三)当該商標のあらゆる宣伝の持続期間、程度及び地理的範囲
 (四)当該商標の著名商標としての保護記録
 (五)当該商標の著名であることのその他の要因

 また、保護規定3条で列挙されている以下の資料を提出する必要がある。
 (1) 関連公衆が当該商標に対する認知度を証明する関係資料。
 (2) 当該商標の継続使用期間を証明する関係資料。商標の使用、登録期間及び登録範囲の関係資料を含む。
 (3) 当該商標の全ての宣伝活動の継続期間、程度及び地理的範囲を証明する関係資料。広告宣伝と販売活動の方法と地理的範囲、広告メディアの種類及び広告宣伝費などの関係資料。
 (4) 当該商標が著名商標として保護された記録を証明する関係資料。当該商標が中国又はその他の国及び地域において著名商標として保護された関係資料を含む。
 (5) 当該商標が著名であることを証明するその他の証拠資料。当該商標が使用された主要な商品の過去三年間の生産量、販売量、販売額、利益及び販売地域などの関係資料。

 多くのケースでは、大量の証拠資料を収集して提出することになるとのこと(認定手続の類型と流れについては上記マニュアルの28頁から31頁を参照)。

 中国では、商標登録された馳名商標と未登録の馳名商標では保護範囲に差がある。
 具体的には、
 未登録の馳名商標については、「同一又は類似の商品について出願した商標が、中国で登録されていない他人の著名商標を複製、模倣又は翻訳したものであって、かつ同著名商標と容易に混同を生じさせる場合には、その登録とその使用を禁止する。」と規定されている(中国商標法第13条第1項)。
 一方、登録した馳名商標については、「非同一又は非類似の商品について出願した商標が、中国で登録されている他人の著名商標を複製、模倣又は翻訳したものであって、かつ公衆を誤認させ、同著名商標権者の利益に損害を与え得る場合には、その登録とその使用を禁止する。」と規定されている(同第2項)。
 簡単に言ってしまえば、未登録の馳名商標は同一又は類似の商品の出願を排除できるのに対し、登録した馳名商標は非同一又は非類似商品の出願を排除できるということである。 

 上記マニュアルの35頁には馳名商標の保護手続の内容から導き出したアドバイスである”実務のポイント 中国外での著名性について”が載っている。これによると、
 「外国で著名な商標であっても、中国において著名でなければなりません。著名の範囲を中国だけに限定すると、日本で著名であっても、中国で著名でなければ保護されず、中国企業が日本企業の日本で著名な商標を中国で先に商標登録を受けて、日本企業が事業展開をしようとしてもできないじたいが生じてきています。 日本で周知な商標であっても、中国で馳名商標と認定されない以上は未登録のままでは保護されませんので、早く中国で商標登録をすべきです。」

 実際問題として中国で馳名商標の認定を受けるには大量の証拠資料を準備して提出する必要があるが、これには手間と費用等がかかり大変である。また、証拠資料を提出したとしても、必ずしも認定を受けられるとは限らない。

 中国で商標登録を受け且つ地名商標として認定されればベストではあるが、実際問題としては非常に難しい。

 そうすると、上述したアドバイスのように、少なくと中国で商標登録を受けておくことが得策ではと思う。」



 では、第三次改正中国商標法で馳名商標(周知商標)に関する規定がどのように改正されるのかを上述した

 「中国商標法改正における若干の問題」
 「中華人民共和国商標法修正案(草案)」
などを参考にしてチェックした。


 第十三条(他人による馳名商標の登録、使用の禁止)は、
「 出願又は使用する商標は他人が同一又は類似する商品において所有する未登録の馳名商標と同一又は近似し、容易に混同を生じさせる場合、登録をしてはならず、かつその使用を禁止する。
 出願又は使用する商標は他人が非同一又は非類似する商品において所有する登録された馳名商標と同一又は近似し、公衆を誤認させやすく、同馳名商標権者の利益に損害を与え得る場合、登録をしてはならず、かつその使用を禁止する。
 」
と全文が改正される。


 第十四条(馳名商標認定の際に考慮される要素)は、
「 馳名商標とは、中国で関連公衆に広く知られ、かつ比較的に高い名声を有する商標のことを言う(追加規定)。
 馳名商標の認定に当たって、以下の要素を考慮しなければならない(以下は現行第十四条と同じ)。
(一)関連公衆の当該商標に対する認知度
(二)当該商標の持続的な使用期間
(三)当該商標のあらゆる宣伝の持続期間、程度及び地理的範囲  
(四)当該商標の馳名商標として保護を受けた記録
(五)当該商標の馳名であることのその他の要因」
と追加規定を設けて改正される。


 2012 年12 月28 日発表の中華人民共和国商標法修正案(草案)によると、「 馳名商標は、当事者の請求に基づき、商標に関わる事件の処理において認定する必要のある事実として認定しなければならない。 」を、第十四条に第一項として追加すると、記してあった。


 なお、第十四条に馳名商標認定機関の明確化のための規定が更に追加されているとの情報があるが、いずれにしても第三次改正中国商標法の内容が確定した時点で再度チェックしたいと思う。


 第三十四条(誠実信用原則に反する登録行為の制止)
「 出願された商標が、同一又は類似の商品に他人が中国において先に使用している商標と同一又は近似であり、出願人がその他人との間の契約や業務上の往来、地域的関係又はその他の関係から当該他人の商標の存在を明らかに知っている場合、登録を許可しない。

 出願された商標は、非同一又は非類似の商品に他人が所有する比較的高い顕著性を有し、かつ一定の影響力を持つ登録商標を盗用し、容易に公衆を誤認させる場合、登録を許可しない。 」
が新規追加される。


 第五十三条(品質条項、馳名商標の認定の規範、著名商標)は、
「 登録商標を使用している商品が粗製濫造され、品質を偽り、消費者を欺瞞しているときは、各クラスの工商行政管理部門は、それぞれの状況に応じて、期間を定めて是正を命じ、警告又は罰金を科し、又は商標局を通じてその登録商標を取消すことができる(現行の第四十五条と同じ)。
 本法第十四条でいう馳名商標が虚偽材料の提供、又はその他不正手段によって認定を獲得した、又は商標の馳名を認定する要素に重大な変化が生じ不良な社会的影響又は結果をもたらした場合、引き続き当該商標の馳名商標としての保護を与えない。
 省クラスの工商行政管理部門は地方の法規、制度の規定に基づいて著名商標の認定と保護の業務を展開することができる(追加規定)。 

と、追加規定を設けて改正される。


 第三次改正中国商標法により中国での馳名商標の保護が本当に強化されるのかは不明であるが、今後ともウオッチしてゆきたい。


 なお、第三次改正中国商標法により、一つの出願で複数の区分が指定できる一出願多区分制が導入される予定である。