「ジミー」その2 | 吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート
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吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

東京都武蔵野市吉祥寺でアンティーク時計の修理、販売をしています。店内には時計修理工房を併設し、分解掃除のみならず、オリジナル時計製作や部品製作なども行っています。

 

目の前の時計屋に大量の札束を渡し払い終えたジミーを見て、周囲はソワソワし始めた。

 

そして、これから何が行われるのか知っている連中は、先を争ってジミーの元に押し寄せるのだ。

 

ちょっと遠巻きに見ている私の隣で、シカゴのボブさんがつぶやいた。

 

「マサ、そろそろ始まるぞ」

 

 

充分な人だかりが出来たのを見ると、ジミーは時計屋が座っていた椅子を引っ張り出してその上に立ち上がり、叫んだ。

 

「Hey, guys !! Are you ready !? 」   

 

すると周りの連中も

 

「Yeah !」 「Go ahead, Jimmy !」 

 

 

ブロンドの美女は時計のショーケースの蓋を開け、中から時計を一つ摘まみ出してジミーに渡す。

 

時計を受け取ったジミーはしばらくそれを眺めるた後、皆に見えるように手を高く突きだした。

 

「よし、コイツから行こう.。 ステンレスのロレックス サブマリーナ、$1000スタートだ! ほら$1000だぞ !」

 

「$1200!」 「$1300!」 「俺は$1500だ!」 「$2000!」 「$3000!」

 

大勢が競り合って、、たちまち値段はつり上がってゆく。

 

「どうだ? $3000でおしまいかよ? カモン! オリジナルバンド付のサブマリーナだぜ! もう誰もいないか?」

 

「$3200!」

 

ジミーの足元にいた背高ノッポが、思い切ったように叫んだ。

 

いつも会場で見かける、ドイツのバイヤーだ。

 

「よし、気に入った! $3200。 時計はあんたのだ。 ほらっ!」

 

ジミーが男に時計を放ってよこし、ブロンド美人は男から金を徴収する。

 

「よし、次はパテック フィリップのカラトラバだ。 コイツは、、、$2000 !」

 

 

そんなペースでジミーのオークションは小一時間も続き、ショーケースが空っぽになると皆バラバラと引き上げてゆく。

 

そして、またしばらくしてジミーがどこかのショーケースに貼りつくと、、、皆、ソワソワしだすのだ。

 

 

ちょっと考えると、不思議に思われるかもしれない。

 

ジミーがオークションする時計はそもそも時計屋が会場で売っているものだから、なにも慌ててジミーから買わなくても時計屋から買えばいいのに、と。

 

しかしそこには、妥当性があるのだ。

 

 

仮にショーケースに並んだ時計の販売価格の合計が、5000万円だとする。

 

もっとも大概の場合、プロ同士の売買では時計に値札は付けていないからハッキリとした金額は算定できないが、、、これは大まかな相場の話しだが。

 

ジミーのヤツは一つ一つの時計を見定める。

 

コイツはちょっとキズが多いから高くは売れない。 こっちは物がいいけど、去年から売れ残ってるからそろそろ手放したいだろう。

 

そして個々の時計の 「買取り価格」 を隣のブロンド美人に伝え、合算させる。

 

 

問題はその金額だ。

 

例えばそれが、1000万円だった場合。

 

時計を売っている業者からすると、個々の時計を全部普通に売った場合は5000万円になるが、そいううことはまずない。

 

全てを売り尽くすには何か月も、場合によっては年単位にもなるし、、どうしても売れ残りも出る。

 

売った後のメンテナンスも面倒もなく、その場で1000万円のキャッシュに替わるなら悪くないのでは?、と。

 

もちろんそれが仕入れ値とあまりにもかけ離れていれば了承することはないだろうが、、、ジミーのヤツは、その辺の塩梅も実によく分かっているのだ。

 

 

一方、ジミーのオークションで時計を買ったバイヤーからすると、元々時計屋が売っていた値段の半額くらいで競り落とせたりする。

 

それでも全体を5分の1で買ったジミーは2.5倍で売ったことになるから、全て売り尽くせば、充分な儲けが出る仕組み。

 

その場合、ジミーは一回のオークションで、1500万円の儲けを得る訳だ。

 

 

(続き)

 

 

 

 

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