物忘れ | 吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

東京都武蔵野市吉祥寺でアンティーク時計の修理、販売をしています。店内には時計修理工房を併設し、分解掃除のみならず、オリジナル時計製作や部品製作なども行っています。

 

最近、めっきり物忘れがひどくなった。

 

頭の上に老眼鏡を乗せたまま老眼鏡を探す、なんてのは序の口。

 

 

歯を磨こうと思って洗面所に行き、歯ブラシに磨き粉を付けたところで、電話が鳴る。

 

電話を切ってから洗面所に戻るが、歯ブラシが見当たらない。

 

たった3分前のことなのに、、あれ、ここで歯磨き粉を付けて、、えーと、えーと、、、おかしいなぁ。

 

結構な時間を掛けて探し回った挙句、玄関の下駄箱の上にある歯ブラシを見つけて、、「なんでだろーなー」

 

 

人と話しをしていても固有名詞も動詞も出てこなくて、「えーっと、なんだっけ、ほらあれ、あれをあれしてさー」 


更に話している途中でちょっと話題が横道に逸れると、そもそも何を言おうとしていたのかを忘れる始末。

 

もしかしたら若年性のアルツハイマーではなかろうか、と我ながら心配になることがある。

 

 

幸いなことに、これが作業中には出ていない。

 

もしそうでなかったら、間違いなく複雑な時計の分解・組み立ては出来なくなってしまう。

 

うちでは鉄道時計等のシンプルな構造の時計の整備は主に若手の3人が担当だから、複雑な機能の付いた厄介な時計は、自ずと古参の岩田か私に回ってくる。

 

ちなみにこの作業には、結構な記憶力が必要だ。

 

 

数10点から成る手巻き式の機械の上に、ストップウォッチの機能が載る 「クロノグラフ」

 

任意の時間にスイッチを入れることによって鐘が鳴り、時刻を知らせる 「リピーター」 や 4年に一度の閏年まで計算に入ったカレンダー機能を持った 「永久カレンダー」 、更には自動で鐘を鳴らし時刻を知らせる 「クロックウォッチ」 や毎正時にオルゴールが音楽を奏でる 「ミュージカルウォッチ」等。

 

時にはこれらの機能を全て持ち合わせた頭の痛くなるような時計もあるが、こんなのをチャカチャカッと分解した後、「あれ、どうなってたか忘れちゃった」 となったらまずい。

 

もっとも機能や動作の原理をよく理解していれば元の形はそのまま記憶していなくても最終的にはなんとかなるものだが、、とは言えその場合は相当に余計な時間が掛かってしまうだろう。

 

 

不思議なことに、昔のことは結構憶えている。

 

それも今となってはどうでもいいような、、例えば通っていた保育園のお昼寝の部屋の作りだったり、ザリガニ取りに通っていた池の裏にあった家の表札の字体だったり、、それから叔父さん家で私がみかんをたくさん食べ過ぎた時、叔母さんちょっと困った顔してたなー、とか、子供の頃住んでいたアパートの大家さん、縞々のシャツの胸に変なバッジつけてたなー、とか。

 

時には寝床に入ってからそういった昔の記憶が次から次へと頭に浮かんできて、一向に寝付けなくなる時もあるのだ。

 

 

昔なにかの本で、人間の脳みそもデータ保存量がある程度決まっていると書いてあるのを読んだ。

 

つまり長く生きていればそれだけデータ量は一杯に近づいていくから、必要のない情報から順次消し去って、忘れてはいけないことのみを保存する仕組みになっている、と。

 

でも私の記憶の在り方は、どうもその仕組みに則していないような気がする。

 

 

午後8時になって、佐々木と真下が閉店の準備をし始めた。

 

自動ドアのスイッチを切って、店頭の時計を下げて金庫に入れて、留守番電話のスイッチを入れて。

 

辻j本は前の電気を消し、岩田もコンプレッサーのスイッチを落とした。

 

そろそろ私もレジの清算をしなくちゃ。

 

 

はてな、、結局、今日は何が言いたかんだっけな、、?