「模様替え」 | 吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

東京都武蔵野市吉祥寺でアンティーク時計の修理、販売をしています。店内には時計修理工房を併設し、分解掃除のみならず、オリジナル時計製作や部品製作なども行っています。


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昨日から、久しぶりに店の模様替えをしている。
 

模様替えといっても店全体ではなくて店の半分から奥、つまり岩田と若者3人組の作業スペースの後ろに限定された話しだが、。
 

なぜ年末に掛けての忙しい時期にそんな陽の目の当たらないところを模様替えするかと言うと、今月、少々大型の工作機械が納入されるからなのだ。
 

 

何年か前、岩田が使っているコンピューター制御の超小型フライス盤をご紹介した。
 

コイツは今年、ベアリングやシャフト、センサーなどを交換して、今も現役バリバリで稼働中。
 

大した故障もせずに、7年間よく働いてくれたと思う。
 

導入直後こそデータ入力を間違えたとか適切な回転数が分からないとか言って岩田も苦労していたが、、、持ち前の器用さもあって比較的短期間で要領を覚え、今ではすっかり手足のように使いこなしてケースの製作だけではなくスプリングや歯車なんかもこいつで削り出し、最後の仕上げだけ手でやっているのだ。
 

 

さて、現役活躍中のコイツだが、超小型だけに機能的な制約はある。
 

一番大きいのは、乾式(ドライ)であるということ。
 

ガリガリと高速で金属を削る時刃物は結構な熱を持つが、この摩擦熱は色々な悪さをする。
 

例えば削っている相手が銀の時など、この熱のせいで銀が溶けて刃物にへばりついて切れなくなり、削った表面がザラザラになる。
 

これを避けるために一般的な工作機械は切削面に専用の切削油や溶液を流し続けるようになっているのだが、、、うちのヤツは超小型だけに、その装備が付けられていない。

 

もう一つは使用するエンドミル(刃物)が複数点ある場合、、、例えば最初に大き目のエンドミルで粗削りした後、段々に小さいエンドミルで細かいところを攻めて行くというような時、その度に機械を停めて、エンドミルを手で交換しなければいけない。

 

細かく言うと他にもあるが、、いずれにせよ、1年ほど前から同メーカーに製作依頼していたこれら不足部分を補ううち向きの機械が完成したので、急遽その為のスペースを作らなければいけなくなったのだ。

 

 

追加の機械を搬入と言っても、私はつい先日まで 「大したことはないだろう」 と高をくくっていた。

 

しかし、、先方と打ち合わせを済ませた岩田が電話を置くなり 「結構ヤバいっすよー!」

 

よくよく話しを聞いてみると、100キロちょっとの今までの機械と較べ、今回のやつの完成重量は500キロ以上。

 

大きさも高さも何倍かになる上、一度設置したらちょっとやそっとでは動かすことが出来ないから、メンテナンスの時の為、機械の左右、前後は1メートルずつ空けなければいけないと言う、、。

 

その上本体とは別に機械を動作させるためのコンプレッサーも今までのものより遥かに大型になるし、指令を与える為のパソコンも新たに2台置く必要ありとのこと。

 

 

搬入が今月末に決定した先週末、大急ぎでコンプレッサーやパソコン、パソコン台を購入し、昨日より場所作りに着手することに。

 

まずはコンプレッサーを設置する地下収納の不用品を整理するところから開始。

 

とは言え店は普通に営業しているし納期の迫った時計を抱えた私や辻本は手が空かないから、、、ここは岩田の指示の元、若者3人衆に頑張ってもらわなければ!

 

 

あまりみっとも良い話ではないが、、、四畳半ほどのパスタイムの地下収納には、恐ろしいほどの不用品が山積みになっている。

 

何しろ東村山のジャンクヤード時代から持ち越してきたアンティークの雑貨や家具、国内外の柱時計、その他不要になった修理用機械とか何でもかんでも、、。

 

いつか捨てなきゃ捨てなきゃと思いながら東村山から吉祥寺南町へ、そして現在の吉祥寺本町へと引き継がれてきたのであったが、いよいよ断捨離する時が来たのだ。

 

 

 

「えー、君たちに重要な任務を与える。 明日までに地下のゴミを全部運び出した上然るべき処理をして、コンプレッサーが置けるようにしてもらいたい。 3人とも覚悟はいいかな?!」

 

何度か地下に入ったことのある3年生のテ(寺田)は既に泣き笑いのような顔をしているが、、まだ足を踏み入れたことのない真下(マシモ)はいつも通り無表情、秋田出身で色白の佐々木は、使命感からか心なしか頬を赤く染めている。

 

 

 

さてさて、床のハッチを開けて中を見せると、地下収納は足場がないほどの状態。

 

その上このビルが建ってから何十年もまともに換気されていないから、空気が淀んでいて、すこぶるカビ臭い。

 

何しろ以前うちにいたNなどは 「お願いですからあそこだけは勘弁して下さい!」 と泣きを入れたほどで、、、3人ともすっかり色を失った。

 

「シベリアに拘留された兵隊さん達のことを思えば何てことないんだよ、君たち。 飢えもなければ寒さもない。 おまけにちゃんと給料が出るんだからね。」

 

怖気づいた連中を私が諭すが、、無論私もその辛さは話にしか聞いたことはない。

 

 

 

「うわーっ、空気悪いっす。 」 「クセー、、」

 

マスクをして地下に降り立った3人は、、、シブシブ作業を開始。

 

ハッチから下を覗き込んで、岩田が容赦なく指示を飛ばす。

 

「何やってんのー、テー! そんなの捨てていいわけないだろー! ちゃんと中身見ねーとー!」

 

 

 

全てがゴミならまだいい。

 

中にはビンテージレコード数百枚のコレクションとか、時計の自動洗浄機の予備とか、それなりに取っておかなければならないものもあるから、選別が厄介なのだ。

 

3人は時折梯子を上っては地上で新鮮な空気を吸い、諦めたような顔をしてまた戻って行く、の繰り返し。

 

数時間後、今度は店の中がゴミで溢れてきて、、、1日目のミッションは終了。

 

 

 

今日の午後、地下のミッションが終了した3人は、多少元気を取り戻した。

 

あとは、ひたすらガラクタの選別。

 

「あーあー、そいつは中島さんに聞かねーとわかんねー!」

 

岩田の声が耳に入った私も作業の手を止めて、選別に参加。

 

 

 

シミだらけになったピーナッツマンのぬいぐるみやバービー人形、ステンドグラスのランプに昔の店の写真、その他エトセトラエトセトラ、、。。

 

あー、これ昔シカゴのアンティーク屋で買ったなー、、捨てられなくて前の店から持ってきたなー。

 

これ店に並べていた頃、店が潰れそうだったなー、とか。

 

懐かしい想い出が蘇ってきたりするものが多く、、、なかなか思い切れない。

 

でも、そうやってきたから今の状態になってしまったのだ。

 

ええい! 

 

 

 

夕方になって、約束した産廃業者がやってきた。

 

連れて来た何人かの若者が次から次へとガラクタを運び出し、どんどんトラックに叩き込んでゆく。

 

プロだけあって、手際は良い。

 

私にとっては無情なほど、、。

 

 

そうして10分かそこらの後、、たくさんの想い出の詰まったガラクタの山は、トラックとともに消え去ったのだった。

 

 

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