「回想」 その62 | 吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

東京都武蔵野市吉祥寺でアンティーク時計の修理、販売をしています。店内には時計修理工房を併設し、分解掃除のみならず、オリジナル時計製作や部品製作なども行っています。


テーマ:

 

翌日から、私は連日不動産屋回りを続けた。
 

パスタイムの入っているヤマキビルを仲介してくれた 「しらいし」 を始め、駅周辺の不動産屋をしらみ潰し。
 

しかしヤマキの若旦那の言う通り50坪以上の貸し店舗は少ないし、有れば大概はチェーン店の居酒屋やレストラン、100円ショップなどが入っている。
 

空いているのは、賃料その他の条件が手の届かない物件のみ、と言った感じで、、、どうにも望み薄だった。

 

 

「自分でも散々回ってみたけど、やっぱり難しいみたいですねー。」
 

店探しにほとほと疲れて一階のヤマキに降り、若旦那に近況報告。
 

「そーだねー、うちにもちっとも話し来ないねー。 このとこ来たのは、この先ずっと行った西側の新築物件だけ。 まあコイツはビルごと一棟貸しだから、話しになんないんだけどね。」 と若旦那。
 

「一棟貸し? ああ、ビルごと貸すってことですか。 それじゃどのみち手が届かないや。」
 

「まあ新築ビルにしちゃ、悪くはない条件なんだけどね。 えーっと、確か1、2階がそれぞれ30坪ずつ、3階はもう少し小さいけど、事務所スペースかな。で、家賃は200万。」
 

「へー、、。」

 

 

新築ビルの一棟貸し、か。

 

もし3階建ての新築ビルが、丸ごとパスタイムだったら、、。

 

1階はアンティーク時計のショールーム、、2階は時計工房、、、で、3階は事務所か。

 

夢物語と判っていながらも、、、足はひとりでに向かっていた。

 

 

 

丸井の前を通り過ぎて西に進むと、井之頭通りと吉祥寺通りの交差点に出る。

 

焼き鳥 「伊勢屋」 で昼間から立ち飲みする酔客を左手に見ながら交差点を渡り、更に直進。

 

ガード下の駐輪場を抜けた先の左手に、その小綺麗なテナントビルはあった。

 

まさに今建ったばかり、と言った感じのビルはがらんどうで、借主が現れるのを待っている。

 

ガラスに貼りついて、、穴のあくほど中を見た。

 

いいなぁー、、。

 

 

 

しかし家賃200万円、、、保証金は聞かなかったが、家賃の10か月分としても、2000万円は下らないだろう。

 

しかも壁紙も何もないコンクリ剥き出しの 「スケルトン」 状態のそこを店らしくするには、、、内装費だけでも、1000万やそこらは裕に掛かるのだ。

 

私は、そのビルを借りるであろうどこかの誰かが、心底羨ましかった。

 

 

 

ウットリしたようなガッカリしたような気分のまま、フラフラと西に歩く。

 

ラーメン屋、コンビニ、美容室、また美容室、、、ポツンポツンといった感じで店があるが、、、商業地区ではないこの辺りは、駅周辺の他のエリアと比べて店は少ない。

 

そして、犬のヘアーカットをやっているビルの前を過ぎてちょっと行った先に、住宅販売の会社 「〇〇ホーム」 はあった。

 

 

 

全面ガラス張りの、明るい店舗。

 

通り過ぎ際にふと見ると、、、ショウーウィンドーのように囲った小スペースの壁に、不動産情報が貼り付けてある。

 

なるほど本業の傍ら、一部、不動産の仲介もしているのか。

 

思わず覗き込むと、、、アパート 駅から15分、1DK、賃料¥95,000、、、貸店舗 約50平米、井之頭 〇〇ビル2F 飲食不可 賃料¥450,000、、etc.

 

アパートに加えて貸店舗の情報もいくらかあったが、よく見れば、どれも他の不動産屋で見ていた物件で、、、やはり条件は合わない。

 

 

 

「えーっ、まだ無理じゃなーい、、?」  「中島さん、この辺じゃなかなか難しいねー。」 

 

悦ちゃんや若旦那の声に加えて、、、「やっぱり無理か」 、、、弱気になった、自分自身の声も聞こえて来るよう。

 

そのうち 「お前、アンティークの店なんて無理に決まってんじゃん。 海のことしか知らないくせに」

 

ジャンクヤードを始める時に仲間から言われた言葉まで蘇り、、、段々と腹が立ってきた。

 

「チキショー、、。」

 

 

 

「どんな物件をお探しですか?」

 

気が付くと、私と同年代くらいのスラっとした男性が、ウィンドーに向かった私の横に並んでいた。

 

差し出した名刺には、「〇〇ホーム 吉祥寺店 店長」 とある 

 

聞き慣れない名前の会社だが、いくつかの支店があるようだ。

 

 

 

「いや、、実は店を探しているんですけど、、」

 

私は、自分がこの通りの東側でアンティーク時計屋をやっていること、店が手狭になって広いところに移ろうと考えていること、、、しかし、どうにも自分の懐具合に合うところが見つからないでいること、もうしばらくは今のところで我慢しなければいけないかと思い始めていることを、恰好をつけず、そのままに話した。

 

私は既にヤケになりかけていて、、、業者に相談するというよりは、知り合った人に愚痴を聞いてもらっているような状態だったのだ。

 

 

 

「そうですか、、ちょっと中に、、いいですか?」

 

イケメン店長は、声を潜めるようにして私を店内に招くと、そこだけ一カ所囲ってある個室に通した。

 

「〇〇さん、ちょっと」

 

店長に言われて、、若い女の子がコーヒーを運んでくる。

 

 

 

全く意味が判らなかった。

 

表に出してある賃貸情報では、全然ダメなのだ。

 

その上先方は、私の頼りない懐具合も聞き知っている。

 

これ以上、私の愚痴とも嘆きともつかぬ話しを聞いていても、埒が明かないではないか。

 

 

 

「実はですね~」

 

しかしそのイケメン店長は何故か期待に満ちた明るい表情で、、、奇跡のような話しを始めたのだった。

 

 

 

(続く)

 

 

 

 

マサズパスタイム ホームページ

☆Twitter☆
☆Youtube☆
☆Instagram☆

☆Facebook☆

マサさんをフォロー

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

SNSアカウント

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス