「回想」 その55 | 吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

東京都武蔵野市吉祥寺でアンティーク時計の修理、販売をしています。店内には時計修理工房を併設し、分解掃除のみならず、オリジナル時計製作や部品製作なども行っています。


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新入りのWとN、そして岩田にタマチャン。
 

私を含めて5人のメンバーになってから、気が付けば一年余りが経過。
 

その間、仕事量は更に増え続けていたが、人数が増えた分、何とかこなせるようになっていた。
 

初めて全員で社員旅行なるものに出掛けたのも、その頃。
 

パスタイムは、それまでになく順調だった。
 

 

 

タイミングも良かったのだろう。

 

バブル経済崩壊から15年近くが経過してそのダメージが癒えてくると同時に、いわゆる 「IT」 の業界が急成長。
 

実際、そういった業界の人の中でも懐中時計のファンは増えてゆき、、、パスタイムでも、気が付けばお客様の半数はIT系の方か?というような時もあった。
 

 

 

しばらくすると、新品・中古の高級時計を扱う大手の会社に移って行ったNと入れ替わるようにして、Nittaが入社。
 

彼はいわゆる職人タイプではなく接客その他なんでも積極的にこなしたから、私の時間には、少し余裕が出来てきた。

 

続いて紅一点のHONが加わって6人体制になった頃、、、私は長らく引き出しに入れっぱなしにしていたカスタム腕時計のプロトタイプを引っ張り出し、、、再びケース製作を請け負ってくれる業者を当たり始めたのだった。

 

 

 

株式会社 「M」 は、足立区の千住にあった。

 

その比較的小規模なケースメーカーを見つけてきたのがNittaだったのか、それとも他の誰かがネットで見つけたのだったか、、、今では私も岩田もどうしても思い出せない。

 

創業者である70過ぎの社長さんと、私と同年代の息子さん、そして何人かの設計者や営業さんでやっているような、どこかアットホームな会社。

 

いずれにせよ、「M」 さんはそれまで当たってきた他社と違い、うちのような小規模のオーダーでも出来るだけ応えようとしてくれる雰囲気があった。

 

 

 

「もしかして、イケるかも ?!」

 

パスタイムに来てくれた社長さんや息子さんと初めて対面した時、私は思った。

 

ジャンクヤード時代よりいくらか順調とは言え、、相変わらず資金力のない私としては、発注ロット(数)は、少なければ少ないほど助かる。

 

しかし請け負う先方からすると反対に、出来るだけ沢山作りたい。

 

以前何社か当たった後断念した一番の理由は、その点の隔たりの大きさだった。

 

 

 

私は双方の時間の無駄を避けるため、2点に関して最初にお話しした。

 

1つ目は、ロット数に関して。

 

何100、何1000という数は注文出来ない、、、値段にも依るが、、、頑張って何10個単位まで。

 

 

2つ目は、何が何でも、うちの希望通りの捻じ込みの 「防水ケース」 でなければならない。

 

特にこの点に関しては、全く妥協の余地がないということ。

 

 

 

少し説明が必要だろう。

 

近年の腕時計の大半は、本体に対して裏側からムーブメント(機械)を挿入して裏蓋を閉めればお仕舞いという仕様になっている。

 

つまり、防水の為捻じ込まなければならないのは、裏蓋だけということになる。

 

しかし、アンティークウォッチのムーブメントを使用するパスタイムのカスタム時計の場合、機械は裏側からでなく表側から挿入する仕様にすることが望ましい。

 

これはアンティークウォッチの文字盤が金属板でなく焼き物(七宝焼き)で出来ていることもその理由の一つなのだが、、、あまり詳しい話は専門的になり過ぎるからここでは省く。

 

いずれにせよ、表側からムーブメントを入れて裏側から機械を固定するということは、本体の表側にも裏側にもネジを切り、表側のベゼルも裏蓋も捻じ込み式にする必要があるということになる。

 

そして、本体の表裏を両方ネジ込み式にするとなると、時計の本体には当然ある程度の厚みが必要になる。

 

しかし、不必要に不厚くなった腕時計は着け心地が悪いし見た目にも好みでないので、、、表裏をねじ込みにしながらも、全体の厚みは 「13mm以内」 

 

実はかつて当たったケースメーカーが難色を示したのは、ロット数の問題だけでなく、この難しい加工条件もあったのだ。

 

 

 

こっちの話しを聞いて、息子さんは、一瞬驚いたようだった。

 

「そんなに面倒な加工を請け負って、、しかもロット数が何10程度じゃ、、。」

 

心中、そんな感じだったろう。

 

しかし、横で聞いていた社長さんは、彼に微笑みながらこう言ったのだ。

 

「これは中々面白いことをなさろうとしている。 いいじゃないか。 やって差し上げなさい」

 

 

 

(続く)

 

 

 

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