「回想」 その28 | 吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート

東京都武蔵野市吉祥寺でアンティーク時計の修理、販売をしています。店内には時計修理工房を併設し、分解掃除のみならず、オリジナル時計製作や部品製作なども行っています。


テーマ:

 

店舗面積が1.5倍になって狭いながらも専用の作業スペースが出来た私は、益々時計いじりに精を出した。
 

店頭にある時計の分解、洗浄、組み立て、注油をひたすら繰り返し、組み立てた時計が動き出しては悦に入る、ということの繰り返し。
 

しかしそれが巧くいくのは壊れていない時計に限り、、、部品が壊れていたり無くなっていたりするのを発見した場合は、その時計を諦めなければいけない。
 

いい感じの時計なのに、商品にならないもどかしさ。
 

何とかしたい一心でシカゴに飛んで行き、時計旋盤や教則本を買い込んで、部品工作を始めるように。
 

 

 

しかし、いよいよ本腰を入れるようになると、ちょっと都合の悪いことが出てきた。
 

作業スペースは店の一番奥のどん詰まりにあったから、熱中していると来客に気づかない。
 

ガタン。
 

ドアの閉まる音に気づいて前を見ると、、お客さんは既に帰っていくところ、というようなことが多くなってしまったのだ。
 

弱ったなぁ。
 

作業スペースを前方に移すことは不可能、。
 

でも、なんとかしないと、、。
 

 

 

解決策が思い浮かばないまま時計を分解していたある午後、 「見せてください!」
 

ちょっと面白い感じの青年が来店した。
 

年の頃は私と同じくらいで、、30歳くらいか。

 

やや枯れた 「物書き」 っぽい風貌。
 

実際 「H さん」 は、若き日の芥川龍之介にちょっと似ていた。
 

 

 

話しをしてみると、文学、歴史、芸能など、多方面に造詣が深いようで、、熱っぽく語りだしたら止まらない。
 

「パイプを吸ってもいいですか?」
 

缶コーヒーを買ってくると、旨そうに飲みながらプカプカとパイプをふかす。
 

どうやら清瀬の阿部時計店さんに聞いて来店したらしいが、普段は近所の学習塾の講師をしているのだという。
 

 

 

その後も小一時間ほど話しは続き、最後は 「時計」 の話題に。
 

「H さん」 は古い腕時計をいくつか持っているが、懐中時計は持ったことがない。

 

しかし、とても興味があると言う。

 

たまたまその日、私はシカゴで買い付けて来たばかりのウォルサムの懐中時計(リバーサイドマキシマ)に手を入れ始めていたのだが、
作業スペースで分解途中のその時計を見せると、途端に目が輝き、「欲しい」 となった。
 

もっとも、、、欲しいと言われても、時計はバラバラの状態。

 

だからその日は 「ちゃんと組み立てが終わったら連絡します」 ということになり、彼は帰って行った。

 

 

 

ウォルサムの懐中時計の組み立てが終わった翌週、「Hさん」 は再びやって来て 「25万円」 のその時計をあっさりと注文した。

 

そしてその後も、毎日のように店に顔を出すようになり、、、気が付けば学習塾を辞め、ジャンクヤード初の正式スタッフに!!

 

こうして私は、安心して一日中時計いじりに熱中できるようになったのだった。

 

 

(続く)

 

 

マサズパスタイム ホームページ

☆Twitter☆
☆Youtube☆
☆Instagram☆

☆Facebook☆

マサさんをフォロー

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

SNSアカウント

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス