森口奈緒美さん。

自閉症の当事者で、日本で初めて当事者が手記を書いて話題になった人だ。


その本がこれ。
{F8F54132-DE47-44F4-BA05-B3D46CE47711}

変な転校生と言われていた自身をもじって「変光星(へんこうせい)」。
自閉症の方独特の言葉遊び。
クスッと笑いながらも、なるほど!と感心する。

この本も、我が家の本棚に10年以上は埋もれていた。


その間に、続編も出ていた。
{72853875-9029-4EED-88AB-8E8485AB54A8}

どこまでいっても周りの人とは平行線だとの思いと、第1作の「変光星」の音をかけている。
さすがだ。


この2冊を一気に読み進めた。
というより、次が気になり止められなかった。


幼少期の記述では、自閉症者特有の感覚を彩り豊かに表現している。
音が蝶々のように飛んできて音楽になるとか、自分の世界のなかは虹のマーブルのようだとか。

一方で、電車に乗ると不規則に動く数々の物体(人間)に恐怖を感じるとか、「親」という概念がなかったなどとも書かれている。

なるほど、自閉症の人には、世界がこうやって見えているんだ。


しかし、途中からは、壮絶ないじめの記録と化す。
友達はもとより、先生からも叱責や嫌がらせを受ける。

私の心は、ザワザワと音を立てていた。
読んでいる間中ずっと。

それは、いじめが生々しく書かれていることだけが原因ではない。



私にも自閉症の弟がいるからだ。
(森口さんとは違い知的障がいもあるが)


弟と森口さんがダブる。
私が森口さんと同学年だから、7歳下の弟もほぼ同じ時代を生きてきた。


森口さんの本を読みながら、私の頭をぐるぐる回る弟の一言があった。

「何やで  先生は  叩きなさる?」

今なら、体罰だ!と全国ニュースになる。
しかし、その時代はそれが当たり前だった。

誰が悪いわけでもない。


障がい者自身の努力によって障がいを克服し、健常者に近づく。
個性よりも集団。
いじめられる側にも原因がある。


そんなことが信じられていた時代。
先生も必死だったに違いない。
何とかこの子を普通の子と同じようにしたい、そう思っていたのだろう。


当時は、まだ自閉症という言葉さえほとんど知られていなかった。
内向的な性格とか、今で言う引きこもりと勘違いされる。
パニックを起こせば、わがままだと言われる。
親の愛情不足だとか育て方の問題とも言われていた。
そんな時代。



あれから、30年、40年の歳月が流れた。
障がいのある方への支援は充実してきている。
もし、森口さんや私の弟が、今の時代に生まれていたら・・・もう少し生きやすかったのではないか、家族ももう少し楽に生きられたのではないか・・・そう思ったりはするが、そんなことを言っていても仕方ない。

今を生きる。
今を生きている。



森口さんは、うつ、自殺企図、精神錯乱などの二次障がいと闘いながらも、現在は、自閉症の理解啓発のために当事者活動を続けている。



障がいのある人もない人も、全ての人が自分らしく幸せに生きられる社会になることを、願ってやまない。




パッソ岐阜校  はやの