火葬の前日、姪っ子と甥っ子とボッチの元嫁様が圭次郎さんにお線香をあげに行ってくれた。
その後、近くのファミレスで皆で夕食を食べた。
こんなにも愛しい人達…
何故、一緒には居られないんだろう。何て考えてしまう。
父と母が保ち続ける事が叶わなかった形、“家族”
形こそ家族では無くなってしまったが確かな血の繋がりを感じる事が出来た気がした。
久しぶりに元気な彼女達の姿を見て、たえさんも安心した様だ。
沢山食べて、沢山しゃべって。
時間が経つのが早かった。
翌日。
それまでは良く晴れていた横浜。
その日は朝から雨が降っていた。
葬儀の後、そのまま北陸まで帰るので、朝からバタバタと支度に追われていた。
最近めっきり気弱になったマミーに8月の再会を約束して、久保山葬儀場へ向かう。
ここは㍉のおばあちゃん(たえさんの母)を送って以来。
ボッチと甥っ子が先に着いていた。
やがて、葬儀社から遺体が到着したと案内が掛かった。
棺がゆっくりと運ばれて来る。
その後をゆっくりと進み炉の前に着く。
棺の蓋が開かれる。
ぱるたにとっては、初めましてとサヨウナラ。
ぱるたも棺に花を入れてくれた。
〔お父さん、㍉の娘だよ。貴方の孫だよ。〕
心の中で語りかけてみた。
係りの方が『何か棺の中に入れるものはございませんか?』と声を掛けてくれたが、入れるものは何も無かった。
静かに蓋が閉ざされる。
炉の中に入っていく棺を見て〔ニドトアエナイ〕事を噛み締める。
横浜愚連隊としても生ききれず、夫としても失敗し、父にも成り切れなかった漢が空へ還る。
煙りが雨に包まれ雲に溶けて行く。
お経も無い、たった五人だけで見送る式だった。
それでも彼はきっと納得しているに違いない。
何故だか、そう思えてしかたがなかった。
全て終わり、あの大きな身体が小さい箱に納められボッチの腕に抱かれていた。
お骨を引き取ると言ったボッチにたえさんが『慌ててお墓に入れようとしなくて良いよ。小さい棚を買って自室に置いておく人も増えているみたいだし。』
ボ『うん。でも本当は、どうしたかったのかな…』
そう言って鼻を啜った。
もう、“本当”は何処にも無い。
彼の幸せだった時期はどの位有ったのだろう
形見として写真数枚と、あの本を持って行く。
圭次郎
享年八十二歳
彼に関わった全ての方に
有難うございました。