センテンス3 | キャベツは芯まで食べられる

キャベツは芯まで食べられる

「インディアンは嘘つかない」理由を考える

RSSのヘッドラインに
検索エンジンで有名な「ハカセサーチ」の井伊さんの追跡情報が流れた。
「ハカセサーチ」は「夢の検索エンジン」と騒がれ浸透した日本発の「神アプリ」だ。

教師をしていた頃、
某国立大学のデータセンターへ社会見学で子ども達を連れて行った事がある。
北海道の自然林の奥にデータセンターはあって、
湯気が出る程温かいバスの中で、雪で凍り始めた景色を
車内の異様な熱気でわーわーはしゃぐ子ども達と一緒に道中眺めた。
データセンターにはビル数本分の無数のサーバーが設置されており、
見学の最後に案内された「某国立大学人工生命研究室」で、
グーグル検索を一日中行って、
グーグル検索エンジンのアルゴリズムを解析するワークステーションと、
のちに「パーソナルエイジング検索」を
発明することになる「(株)ハカセサーチ」代表の井伊さんとあった。
井伊さんは研究員だった。

2017年(今から10年近く前)のことだ。
井伊さんは、新世代検索エンジンを作ろうとしていた。
グーグルの検索エンジンは、ページランク以外は恣意性が極限まで除去されている。
しかし、あえて恣意性のある検索が求められていた。
ユーザ―自らが適切な恣意性を持って検索できるエンジンが望まれていた。

ユーザ―の嗜好分析。
ここ最近のユーザ―インターフェースの常識的設計だ。
複数マシンのパーソナルネットワーク環境下においては、
その人の生活史でエイジングされた環境のパーソナライズが
IME環境、ファイルの使用頻度と使用時間、マシン間トラフィックなどに適用される。
例えば、「レートの高い(使用頻度の高い)フォルダやファイル」は
クリックしやすくアイコンが頻度に比例して大きくなるなど、
個人環境がエイジングによるパーソナライズされるようになった。
このレーティングシステムが元となって、ハカセサーチはできた。
検索する際の論理式がエイジングによる変数の影響を受け、
ユーザ―の嗜好による恣意的な検索が出来る様になった。
パーソナルネットワーク環境下でのプラットフォーム横断を常識化させた
「エイジング共有」というアーキテクチャーが、
パーソナライズ化した環境を多くのユーザ―にもたらした。
「パーソナルエイジング検索」は、環境のエイジングにより生み出されたのだ。

この、「使用者が望むと思われる検索結果をたたき出す検索エンジンソフトウェア」は、
まず最初に、「有名人、著名人、偉人がエイジングしたら」
と仮定した検索エンジンからサービスを開始した。
偉人エイジングと呼ばれる「アインシュタインの目」や「ダヴィンチの検索」、
「データ少佐の陽子脳」、「オバマの戦略」などがそうだ。
当初、オリジナルのまま利用するユーザーがおおく、
パーソナルエイジングを無効にして使用するユーザ―がほんとうに多かった。
複数マシン環境が常識化して、徐々にユーザ―はエイジングを有効にし始めた。
ホームとする「偉人エイジング」は最初はひとつだったが、
次第に無数にインストールするようになり、
現在では「偉人エイジング」を無数にインストールし、
さらに普段はパーソナルエイジングを有効にしているユーザ―が大部分だ。

インプットメソッドと翻訳の改良も、検索の大きなイノベーションに繋がった。
インプットメソッドがバイリンガルになるにつれて、
ユーザ―が単語に対して持つイメージの忠実なる他言語変換メソッドが開発され、
検索エンジンの中核を為している。
それが「語」だけでなく、ファイルの使用時間、使用頻度、作業傾向に結びつき、
分析結果はパーソナルエイジングにファイルされる。

また、最近ではクオリアの研究と結びついて、
ハカセサーチは大いにブラッシュアップされている。

グーグル等の巨人は、一般より遥かに進んだアルゴリズムを持っている。
ユーザ―の気付かないうちにアルゴリズムがどんどん書き加えられている。
そのころ、オープンプロジェクトのひとつだった「ハカセサーチ」は、
夢の個人検索エンジンを作る為に、
アルゴリズムを探しまくっていたのだった。
当時、先端技術の解析や抽出は、やられているグーグルからみれば海賊行為だった。
しかし、こうした行為がないかぎり、
WEBは進化しないことを誰しも直感していた。
グーグルも圧力を加える「見せかけの」法的手段をとりつつも、
どこか真剣ではなかったのは、
根本的に海賊行為を否定していなかったからだ。

数百の特許侵害で訴えられている井伊さんが、実はそれ以上の特許侵害の被害者でもある。
発明家は今や海賊でありながら被害者でもあるという、
訳のわからない世の中だ。

RSSの井伊さん追跡情報は「足どりが途絶えた」という、
いつもお決まりの展開で結ばれていた。
井伊さんとはこの数年間、誰もリアルで会っていないという噂はどうも本当らしい。