メンバーのお名前や雰囲気をお借りしたお話です。
最初のお話はこちら ⇒ 「Winback 1」
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決行は深夜2時と決まった。
大野によれば、午後7時に開始となるオークションは、出品数が少ないため
8時か8時半には終わるだろうとのことだった。
客が退出した後、オークション用に準備された機器やテーブルが運び出され、
展示会の時と同じレイアウトに戻される。
障害物が多いとレーザー探知装置での警備に支障があるからだろう。
落札された商品は、クルーズ終了後に落札者に送り届けられることになっているため、
そのまま展示室に残される。
午後11時には展示室は閉鎖され、周辺も広範囲に渡って立ち入り禁止となり、
夜勤の警備員2名が監視カメラの映像とレーザーのチェックを行うこととなる。
『今、オークションが終わった。』
大野から連絡が入ったのは8時20分だった。
展示室の出口では、松尾香織がにこやかに挨拶をしながら客達を送り出している。
オークションでいい値がついたのか、かなり上機嫌だ。
他の客達に混ざって展示室から出てきた大野が、
ラウンジへと曲がる角で目立たぬようにすっと流れから逸れる。
向かった先は第2セミナールームだ。
周辺に人がいないことを確かめ、素早くドアを開けて中へと入る。
「お疲れ~。」
囁き声で出迎えたのは櫻井だった。
ドアを施錠すると、プレゼンをする時に講師が使う演台へと大野をいざなう。
「ここなんだけど・・・。」
指さしたのは演台の真上にある通風口だ。
おそらくセキュリティの強度の違いなのだろうが、この部屋の物は展示室よりも大きく、
人がなんとか通り抜けられそうなのだ。
「ん~・・これは邪魔だな。」
ジャケットを脱ぎ捨てた大野が身軽に演台に飛び乗ると、
ドライバーを使って通風パネルのネジを外してゆく。
8つあったネジをあっという間に外し終わると、パネルを持って引っ張る。
カタカタッ・・ガタッ!
外したパネルを演台に置くと、両手を枠にかける。
「肩貸そうか?」
「いや、いい。」
そのままぐいっと懸垂の要領で体を持ち上げ、肘をかけてダクトの中へと潜り込む。
「すごいな~。 俺には絶対無理だわ。」
体操選手のような大野の身のこなしに、櫻井が感嘆の声をもらす。
「うえ~・・・ほこりがすげぇわ。」
「ははっ、だろうと思って、ほら。」
櫻井が差し出したのは布製のリュックサックだ。
「その中に必要な物が入ってるから。
懐中電灯と水と食料と、あとタオルとかマスクとか・・携帯トイレなんかもね。」
「用意のいいことで。」
通風口から顔だけ覗かせた大野がうんざりしたように言う。
決行時間の2時まで5時間以上をこの中で過ごさなくてはならない。
「あっ、一番大事な物を忘れるところだった。」
そう言って櫻井が演台の下から取り出したのは、大きな図面ケースだった。
この中に『春の詩』の贋作が入っているのだ。
≪つづく≫
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部屋の配置がわかりづらいと思いますが、適当で大丈夫ですよ~。
大野さん、こういう動きってめっちゃ簡単にやっちゃいそうじゃないですか?
尊敬の眼差しで見上げる翔さんも目に浮かびそう(笑)。
そういえば「マトリョーシカ」は人間関係が複雑で謎が深まってきてますね~。
そして高岡さんの美魔女ぶりがすごい。