久々に静かな朝を迎えられた。いつもは朝4時過ぎから走り出すバスのエンジン音やクラクションで起きるのだが、そうそう今日も昨日もバスが走っていないのである。

 エルサルバドル全国規模でバス交通網が麻痺している。

 私がこちらに来てからも何度か一般の路線バスが焼かれ一般市民が犠牲になったり、みかじめ料を支払わなかったとしてバスの運転手や集金係が殺害されたりしていた。これらを行っているのはマラスという犯罪集団だが、そのマラスに対して政府が法規制を強めたのである。当然のことながら、マラスはこの法規制に反抗する姿勢を見せており、バスが襲撃されることを恐れて全国規模でバスの運行が取りやめられている。

 先日首都を通りがかった際には、荷台に機関銃を装備したジープを見かけた。いつでも発砲できるように弾が装填され、兵士がかまえている。新聞で見たのだが、装甲版を装備した車両まで首都には配備されているようだ。

 私のように小さな街にいるとそこまで変化は感じない。バスが走っていないからホストファミリーの一人が大学に行けずに家にいるくらいか。もちろん用心も必要だが、家から市役所まで徒歩2分の距離しか特に出歩かない。そして道すがら多くの知り合いに会う。最近は知り合い?と呼べるのか、見覚えのない人からも笑顔で話しかけられるから、道を歩いていても油断できない。

 家に帰るといつものようにプラスチックのイスを玄関前に置き、涼んでいる。