作品展を振り返って 早野雪枝さんのハンギングイエロー | ROKA BLOG

作品展を振り返って 早野雪枝さんのハンギングイエロー

早野雪枝さんは、戦後の日本のパンジー・ビオラの育種を牽引されてきた鈴木章先生の愛弟子です。

 

その先生の志を継いで、昭和から平成までパンジー・ビオラの魅力をいろんな媒体で発信されてきました。言わば、正統なパンジー・ビオラの美をきちんと理解されている唯一の方になります。

 

92歳の現在もご健在で種まきを続けていらっしゃいます。

 

早野さんとは、とある同好誌で知り合いになり、それからのお付き合いです。

 

私は全くの門外漢からパンジー・ビオラの世界に入りました。その時に一番参考にしたのが、鈴木先生の書かれた記事であり、それ以上に参考にしたのが早野さんの書かれた記事でした。それくらい、沢山の本などに記事を書かれていました。

 

育種を始めて品種らしきものが出来た時に、ご評価いただければと何度か苗を送ったことがあります。内心自信はあったのですが、評価は撃沈。「たいした花ではない」、「美しくない」、「どこにでもある」等々、かなり手厳しいものでした(笑)。

 

ただそんな中でも、褒めていただいたものが2つありました。それは、日本で初めての極々小輪の「ののはなブルー」と日本初であろう八重咲きの「南国極光(なんごくおーろら)」です。

 

「ののはなブルー」は新花コンテストに出品したのですが入賞はならず、そのことに対して「(審査員は)見る目が無い」と憤慨して下さいましたし、「南国極光」では「よくぞここまで追及されました」と、お褒めの言葉をいただいたことを今でも覚えています。それが、現在の私のモチベーションでもあります。

 

そんな経緯で、苗も送ってくださるようになりました。

 

ベインの古典的名花「ビュノッツスーパーブロッチュド」、ブロッチ覆輪の名花「うず潮」など、これの実物を見れたことは貴重な体験でした。他、原種も送ってくださいました。

 

ただ、その時期が2月下旬ごろ。宮崎は3月になるとすぐに暖かくなり株の老化が一気に進むので、種が採れないままのものが沢山ありました。

 

その送ってくださったもので、種が採れて残せている系統の一つが今回展示の‘ハンギングイエロー’になります。

ハンギングイエロー

 

ギリシア原産のボウリエンシスにベビー・イエローの交配種。ちなみにベビー・イエローは世界初のF1ビオラとして当時話題になっていた品種です。

ボウリエンシスの横に這う性質とベビー・イエローの多花性が組み合わさって、ハンギングタイプの先駆け的な品種が誕生しました。また、香りが良いのも特徴です。

1996年の新花コンテストでゴールドメダルを受賞しています。また、ボウリエンシスを使った日本で唯一の品種でもあります。

 

後に種苗会社に譲渡されて、2~3年程度種の販売がなされましたが、以降は全く見ることが出来なくなった品種です。

 

今回、数年ぶりに復活させて、皆さんに見て頂くことが出来ました。

 

平成の後半からパンジー・ビオラの情報を書かせていただけるようになり、それらの本を送るようになりました。

 

すると「もう私の時代は終わりました。これからはあなたがお励みください」と言っていただけるようになりました。「私の時代」という言葉から、鈴木先生の志を継いでそこに心血を注がれてきたのが強く伝わってきます。

 

私は次代を背負うような気概も覚悟もなく、ただ未来の人たちに向けて現状を記録しているにしかすぎません。

 

送った本の中には平成に日本で誕生したパンジー・ビオラが多数紹介されています。反転咲き、抱え咲き、乱れ咲き、焼け、シャビーなど、早野さんの評価は芳しくありません。「美しくない」と。

 

ですが、それが美しい、面白いと感じる自分がいる。また、それを支持するユーザーさんもいる。

 

いったいこのギャップは何だろうと、考え悩んである結論に至りました。

 

これらは、間違いなく「日本の美の意識(基準)」なのだろうと。パンジー・ビオラ本来の美、正統な美の基準とは全く違った新たなものなのだと。正統なパンジー・ビオラの美を理解されている早野さんが「美しくない」と言うのはきっとそういうことです。

 

この結論に行った以降は、早野さんが「美しくない」と言ってくれる事が嬉しくてたまらなくなりました。それは間違いなく日本生まれの新たな形質(美)であるということですから(笑)。

 

今回も献本のお礼の電話をいただきました。そして、「(パンジー・ビオラの)花は美しいものでなくてはいけませんよ」との言葉をいただきました。

 

日本のブリーダーたちはその「美しさ」を追及して日々交配に励んでいます。そして、正統な美を追及されている方もいらっしゃいます。この豊かさこそが日本のパンジー・ビオラの世界です。

 

早野さんの貴重な系統もリスペクトを持って繋いでいこうと思います。

 

今回は早野さんとの思い出も含めて書かせていただきましたので、長文になりました(笑)。