↓ ナショナルジオグラフィック公式日本語サイト より
氷河の下で凍りついていたコケ植物が、氷河の後退に伴いおよそ400年ぶりに
再生していることがカナダ、アルバータ大学の調査で判明した。
研究チームは、カナダ北極圏、エルズミーア島中部の山脈地帯にあるティア
ドロップ氷河(Teardrop Glacier)周辺地域で、コケ植物や維管束植物の生物
多様性調査にあたっている。
「後退する氷河の端で、点在するコケ植物が氷の下から伸びているように見えた」
と、プロジェクトリーダーのキャサリン・ラ・ファージ(Catherine La Farge)氏は
語る。
「黒く変色した中に緑色の部分が交ざっていたので、不思議に思ってよく観察
した。コケ本来の色なのか、何世紀も前の藻が再生しているのか。思わず胸が
高まった」。
↓ シャーレの培地で再生したコケ
◆コケ植物の休眠
研究チームはエドモントンにある研究室に戻り顕微鏡で観察。
とてつもなく重い氷の下で過ごした後、目の前で小さな芽を出しているのは、
やはり数世紀前のコケ植物だった。
放射性炭素年代測定によると、400~600年の凍結期間と推定される。
興味津々の研究チームは、採取した試料の一部から茎と葉の組織を取り出し、
シャーレの栄養豊富な培養土に植え付けた。
緑色の物体が出現したのは6週間後で、最終的に7つの標本から4種のコケ植物
が確認された。
再生を遂げたコケ植物は、1年後の今でも成長を続けているという。
1550~1850年頃の小氷河期に氷河が拡大して凍結したとみられるが、長期間の
休眠にも関わらず、一冬超した状態とほとんど同じ急速な再生能力を発揮した。
氷河に覆われた生態系も、案外早く回復する可能性がある。
◆古代から生育
自然界の中でもコケは生存戦略に長けている植物で起源が古く、海から陸に
上がった時期は4億年以上前に遡る。
生育に都合の悪い時期には休眠して耐え、環境が良くなれば成長を再開する
という特性を備える。
しかもコケ植物の細胞は幹細胞のように分化可能で、どの細胞からも“クロー
ン”を作成したり復活させることができる。
400年以上の時を経て再生したコケ植物だが、まだ上手が存在する。
昨年、シベリアの研究チームが発芽に成功した種子は、約3万2000年前の地層に
埋もれていた。
スガワラビランジ(学名:Silene stenophylla)というナデシコ科の被子植物で、永久
凍土層から発見されたそうだ。
「シベリアの場合は、かなり高度な技術を応用したと聞いている」とラ・ファージ氏。
人工的に発芽させるには、子房中の胎座を抽出する必要があった。
一方、まるで手間が掛からなかったのは、ティアドロップ氷河のコケ植物だ。
培養土と親身な世話だけで見事再生を遂げたのである。
人間が冷凍で仮死状態になってる様なものなんでしょうか?
『遊星からの物体X』 ではないですが、氷の下から復活するものが、人間に
とって無害であればいいのですが・・・
参考記事:
「3万年越しの開花―ロシア 」 スガワラビランジ
「温室効果ガス排出継続で、動植物の生息域が激減する可能性 」
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