(これは数年以上前に書かれたエッセイの再掲載です)
甘い言葉で「元気を出して」なんていっちゃいがちなんだけど、元気なんてものは見たことも食べたこともないものであって、そうそう「出して」ってせがまれて、ほおれ、、元気をここいらにちょいとひとつ、なんてな具合にはいきません。
つまりですな、「たくさんおあがり」と言ってもりもりと食べられればよし。たくさん笑って胸がすうっとすればよし。自分の好きなことをとっくり味わいつくしてじんわり微笑めたらよし、なのだよ。
つまりだよ、かしこまった立派な元気、なんてーものを求めちゃう心ってぇもんが病んでるっつーこっちゃな。
「戦争反対」と叫んで、じゃ、戦争っつーのはなんじゃろねー、とボンヤリした奴と同じだな。よくワカンネーときてるのに、知ったふうな顔をして、訳知り顔を振りまいちまう落語のチョイ役みたいなもんで、アイツはこーだ、ソイツはどーだ、と口達者なふうでいて、とんと中身がない。
つまり、元気を元気呼ばわりしちゃうあたりがセンスが足りないってことでしてな、元気を元気っていわせやしないで、それとなしに結果の状態が元気、ってのが一番素敵でしょ?
そう、この話のキモはね、元気っていわないで、そいつをさせちまうっていう底意地の悪いひっかけのようなもんさな。
洋風にいえばトリック、ってあたりかな。
そいつはな、気持ちいいもんさな。