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 忘れもしない。修論提出日があと1週間に迫った1月16日。
 100ページを超える本文もあらかた仕上がって、あとは考察を深めるだけ、引用文献をダブルチェックして、要約と謝辞をしっかり書く時間も無事確保できそう(^^)v…と思っていた矢先。  

 使用尺度の妥当性検証の分析結果に対する指導教員からの赤ペンコメントに、心臓が「ぎくりっ」と音を立てた。


 「この方法は,先行研究で用いられている方法という理解で良いですか?」

 げげげ。たしかこの分析、9月くらいに「ちょっとよくわからないけど、ま、こんな感じかな」と、とりあえず適当にやってそのままになっていた。その後、メインのデータ分析に追われて、すっかり忘れていた。
 やおら先行研究を読み直して、今度は心臓が火を噴いた。


 やってること、全然ちがうやん…! 

 

 適当な分析をした3ヶ月前に比べると、あれこれ詰め込み勉強したおかげで、知識は豊富になっている。「馬の耳に念仏」だった先行研究の文言の意味が、ようやく理解できるようになった、などと喜んでいる場合ではない(💦)。
 先行研究で使用している指標は、これまで見たことも聞いたこともない代物で(だから、9月のときは読み飛ばしてしまったのだ)、大学院から無償ライセンスしてもらっているSPSS(分析ソフト)でどう計算すればいいのか、参考書はもちろんネットのどこを探しても出てこない。
 アタマからざぁあーーっと血が引く。顔面蒼白。ちびまるこちゃんの額の縦じわなんぞ、比ではない。今、この文章を書いているだけでも、心拍数が倍増するほどで、あのときは文字通り心臓が喉から飛び出そうだった。

 とりあえず先生に「SOS」メールを出す。しかし、即レスは期待できない。ビジネスパーソンとちがって、大学の先生はしょっちゅうメールチェックなどしないのだ。1・2日返事が来ないのは日常茶飯。「1週間くらい待って返事がなければ、リマインダ―だしましょう」というペースなのだ。

 不幸中の幸いというべきか、モンダイとなっているのはメインの仮説検証分析ではない。少なくとも信頼性検証はやってあるから、最悪、この妥当性検証ができなくても、「ごめんなさい」しちゃおうか。
 こういう発想が、まさに会社員の「手抜きスキル」である。信頼性と妥当性の確認は新しい尺度を使うときの基本中の基本パッケージだというのに、素人判断で勝手に「手抜きレベル」を設定してしまいたくなるのだ。

 こういうときの神頼みは、同級生。いつも励まし合い、協力し合っているLINEグループでつぶやいたところ、地獄に仏。統計プロのAさん、SPSSに飽き足らず、R(分析のためのプログラミング言語)を独学していた人が、救いの手を差し伸べてくれた。
 

 「Rでやってみましょうか?」

 Aさま、神様、仏様。自分自身の修論執筆もラストスパートだというのに、私の422人分のデータを丸ごと受け取り、見事に計算してくれた。結果、妥当性は〇。
 指導教員には、SOSメールを出した20時間後、「SOS取り下げます」メールを発信した。そのメールには即レスだった。
 

 「解決してよかったです」

 本当によかった。。。
 でも、せんせー、出来れば、もう少し早く指摘していただきたかった…。
 つい“上司”のせいにしたくなるのも、会社員時代の悪いクセ。
 とそのとき、いきなり記憶がよみがえる。10月末時点で提出した最初のドラフトに、せんせーはしっかり1月15日と同様の赤ペンを入れてくださっていた。。。私が単にスルーしてただけだった。。。💦💦💦

 ここでもやはり「手抜きスキル」と「スルースキル」が思いっきり裏目に出ていたのである。
 10月末の段階で、先生のコメントを見て「めんどくさいからあとにしよっ」とスルーしてしてました。「スルーすれば、センセーが忘れてくれる」と思ったわけでは、決してない。しかし無意識のどこかで、それと似たような心理が働かなかった、とは言い切れない。
 Last minutesになって「あれ、どうなった?」とリマインドされて初めて、慌てふためいたわけである。
 あー、情けない。つくづく、恥ずかしい。センセー、神様、ごめんなさい。懺悔。
 

 土地勘のない領域で、何をどこまではしょっていいのか、「手抜きレベル」がわからぬまま、勝手に「手抜き」をしてはいけない。
 上司の言うことは、「スルー」せずに、ちゃんと真面目に取り組む。
 もう会社員ではないが、海より深く反省した次第である。

 Aくんにはその後、会社員時代にはしたことのないハイレベルの接待をさせていただいた。