ベル教授じきじきの、リスクテイクをするための極意、3つめ。
③長期的な展望を持つこと。
望みをかなえるには長い時間がかかる、という意味だ。長い道のりのほんの一部だと思えば、大西洋を渡る留学など、今の自分には大胆に思える決断も大したことはなく、リスクを恐れず行動できるという。
このポイントだけは、年齢制限がある気がする。
「1万時間の法則」を聞いたことがあるだろうか。何事も1万時間続けて初めて一人前になれる。最初からその道に入って毎日取り組むならまだしも、途中から軌道修正しようとしたら、本業とパラレルに1万時間を確保しなければならない。毎日3時間やっても約10年。
今年4月から本格始動した心理学の社会人大学院は2年間。「一人前」になるのにさらに8年!? もっと早く始めればよかった…と後悔しても始まらないので、出来るところまでこつこつやるしかない。
だから、本当に、真剣にやりたいことのある人は、1日でも、1分でも早く始めたほうがよいと思う。
命短し恋せよ乙女、じゃない、少年老いやすく、学なり難し、である。
同窓会に話を戻そう。
ベル教授は、せっかくHBSの学位を手に入れても、同窓会で同級生に自慢できるキャリアを得ようなんぞという近視眼的な考えに囚われたら、本当に自分がやりたいことを見失いかねない、だから同窓会の案内状には目もくれず、①②③の極意を念頭に、とるべきリスクをとれ、とおっしゃっているのだ。
そして、①②③でリスクをとって夢に向かって邁進する際の、何より大事な心得、それは「バランス感覚を失わない」ということだ。
リスクを冒して頑張っても、出来ないことは出来ない。意固地になって追い求め、自分を惨めにするのだけはやめよう。そのためには、結果が出るのをどのくらい待つか、具体的年数を決めておき、その期間が過ぎたらきっぱり諦める。潔く身を引く。
果たせなかった夢のことは忘れて、ゴルフ場に出かけよう(…とおっしゃるあたりは、さすがアメリカのEstablishment。日本だと、ゴルフ会員権も、それなりのお値段。十分に「成功者」の証なんですけど(^^);)。
その後まもなく25年目の同窓会の案内状が来たら、
「今回は出席するのもいいかもしれない」
たとえ羽振りが芳しくなくても、本当にやりたかった夢を全力尽くして追いかけて、それでも果たせずきっぱり諦めたあとなら、旧友たちの成功ぶりにも卑屈にならず、拍手を送ることができるだろう。
…という裏には、「絶対に夢を実現しよう」という叱咤激励の意味が込められているにちがいない。「皮肉たっぷりのウィットに富んだ講義をする」ので有名な教授だけのことはある。
そういえば、転職した金融会社も辞めてフリーになったのが大学卒業から24年目。ちょうどその頃久しぶりに開催されたクラス会に出席した。サラリーマン辞めてこれからどうするの?と訊かれ、ヒマだから近所のパン屋さんでバイトでもしようかな、と冗談を言ったつもりなのに、旧友たちが一様に凍りつき、誰一人として笑ってくれなかった。ベル教授なら、きっと笑い飛ばしてくれただろうに。
だからやっぱり、同窓会の出席に〇をつけるのを、今でも一瞬躊躇してしまう。 ・・・その3に続く