本日は皆様に懺悔しなければならない。


長い間、口頭でもブログでも、「男は」「女は」「脳みそは」と散々言ってきた。それは、実生活において接する男女の言動観察、及びそれを裏打ちする多くの書物からの受け売りだった。
先日の
「男脳、女脳」のブログに「脳に性差はない、脳梁の太さ実験はサンプル数少なく信憑性がない」という大変貴重なコメントをいただき(通りすがりさん、誠にありがとうございました)、「え~、そうなのか~」と自信が揺らぎ始めた。


そして昨日、日経ビジネスオンラインで、かの脳梁テストが男性9人女性5人の結果だった、という記事を読み、愕然…。いくらなんでも、サンプル数、少な過ぎ…。やはり「脳の性差」はないということである。
これまでの私の誤った「男女脳」発言を、ここに謹んで撤回し、お詫び申し上げます。
申し訳ございませんでした。

 

でも。それでもやっぱり、方向音痴な女性は男性より多いし、人の話を聞かずに自己主張ばっかりする男性は女性より多い気がするのは、私の錯覚? 
現実問題、圧倒的に男性比率の高い職種があるのは否定しえないし、これってDNAの違いじゃないの?

それは、元々の脳やDNAの違いではなく、男女が置かれた環境と経験の違い、だそうです。
脳には可塑性がある、と言われるように、人は置かれた環境に適応し、自らの経験から学習して、脳みそはどんどん変わっていく。


性差は、現代社会で私たちが無意識のうちに抱くステレオタイプな考え方、それに基づいて振る舞う言動、いわゆる無意識の偏見(Unconscious bias)によって形成されていくのである。

ということを、筑波大学で行われたプリンストン大学心理学者のスーザン・フィスク教授の講演で学んでまいりました。
以下、受け売り(いつも受け売りですみません)の、講演要旨。

 

  • キャリアに対する考え方には元々男女差がない。OECDによる15歳男女に対する調査では、女の子のほうが国会議員や経営者などプロキャリア志向が強くAmbitiousであるとの結果。
  • しかし、例えばSTEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)の世界では、上に行くほど女性の割合が減る。これは、女性の理系能力の低さのせいではなく、研究室や職場のMasculineな環境(貼ってあるポスターの写真がほとんど男性研究者、等)から発せられる無言のメッセージを受け取り、女性が自らキャリアを諦めてしまうせい。
  •  「女性は優しく」「男性は勇ましく」といったステレオタイプな考え方は、極めて自動的なので、個人が自分で意識することが難しい。しかも、性差別は両義であり、敵対的なもの(Hostile、「ガンガン仕事をする女性は可愛くない」等)だけではなく、好意的なもの(Benevolent、「女性は弱いから助けてあげないといけない」等)もあることが厄介。
  • 好意的な性差別でさえ、女性にマイナスに働く。例えば、職場の人事評価で、女性は男性よりポジティブな評価を受けることが多く(厳しくされない結果)その後のパフォーマンスは女性は男性よりも低く、またチャレンジ志向も低くなる傾向にある。
  • あるいは、PCが故障すると、女性はすぐ他人に助けを求め、周りもすぐ助ける。しかも自力で何とかしようとする女性は「可愛くない」と疎まれる。
  • その結果女性は、助けを求めて可愛くあろうとすると、依存的で無能になり、自分で頑張ろうとすると、冷たいオンナだと思われる、というジレンマを抱えることとなる。こうして、好意的な性差別は、知らず知らずのうちに、女性の自信を失わせ、パフォーマンスを低下させ、チャレンジ精神を殺ぐのである。

…やばい。いちいち思い当たる。 しかもこれらは、9人とか5人ではなく、信憑性のある科学的実験の結果なのである。       ・・・(中)につづく