“カンブリアモンスター”「バージェス」の化石資料ならこれ | 化石の日々

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オフィス ジオパレオント代表のサイエンスライター 土屋健の公式ブログです。
化石に関する話題,ときどき地球科学,その他雑多な話題を書いていきます。

アノマロカリス,
オパニビア,
ハルキゲニア……。実に魅惑的な,カンブリア紀の生物たち。
今回紹介するのは,そんなカンブリア紀の生物,とくに「バージェス頁岩動物群」の化石をまとめた資料集です。

バージェス

カンブリア生物に興味がある方にとっては必読といえる1冊です。
本書は,バージェス頁岩動物群84種のデータ集です。
最上質の化石を撮影した写真と,各種1ページにおよぶ解説,そして復元画によって構成されています。とくに各種1ページにおよぶ解説は秀逸。ときに研究史などにもふれながら,カンブリア紀の生物に対してこれほどまでに深い解説する書籍は,少なくとも日本語では,ほかにあまり類を見ません。
データとして,総個体数における各種の割合を示す数値なども収録されており,かゆいところにも手が届く構成になっています。

残念ながら,英語の原著が刊行されたのが1994年といささか古く,そのため,最新情報が掲載してあるとは言い難いといえます。

たとえば,「オドントグリフス」という,平たい生物がいます。本書では,鬼太郎に出てくる「一反木綿(いったんもめん)」のような復元画とともに「?触手冠動物上門」と分類されています。この動物は,現在では軟体動物という見方が有力です。
また,「ネクトカリス」という頭を盾で覆った細長い胴をもつ生物は,本書では,「既知の動物門には含めることのできない動物たち」と分類されています。この動物は,現在では,まるでイカのように復元されており,これも軟体動物とみられています。

……というように,復元や分類に変更がせまられていたり,何よりも新種が収録されていなかったりします。

それでも本書は依然として,最大のバージェス頁岩動物群のデータベースであることにちがいはありません。むしろ復元像の変化などは,バージェス頁岩動物群の醍醐味の一つですから,「90年代前半の復元」の資料としても,本書は重宝します。

まだお持ちでないようでしたら,おすすめですよ。


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