楓「えっ?自転車」
凛「そう、すぐ近くだよ。行ってみない」
楓「えっ、あ、うん」
楓はさっきまでの話が気になって、はっきり言って乗り気ではなかったが凛におしきられる感じで行くことになってしまった
仙石「どうだ?」
将「バッチリっす」
仙石「そんなこと言って気負いすぎてコケんなよ」
将「そんなバカしませんよ」
仙石に笑って見せたが内心はドキドキだった。別にレースに緊張はしていない。このレースの先にオリンピックがある。このレースがオリンピック強化選手の選考レースになり、オリンピックに出られれば宙の夢だったツール・ド・フランスに道がひらける。それで気分が高揚するとともに緊張も高まっていった
仙石が将の顔をのぞきこむ
将「なんすか?」
仙石「ん?いや」
仙石は将の背中をおもいっきり叩いて
仙石「行ってこい」
将「いってー」
将は背中をおさえ、仙石を見る。仙石はニコニコしている
将「そんじゃ優勝してきます」
仙石「おおー、パーティーの準備して待ってんぞ」
将は右手を上げ、スタート地点に向かった
凛「おお、間に合った間に合った」
楓「そんなに好きなの?」
凛「何が?」
楓「自転車の…」
凛「いや、別に」
楓「それじゃなんで?」
凛「気分転換だよ」
楓はため息をはく
楓「気分転換ねー」
将はまわりを見る。将が知るトッププロの姿が見える。彼らは招待選手としてかなり前にいる
将「さて、どうやってあれに着くか」
将がボソッと言う。そのとき隣の選手がすごい形相で将を睨んだのを将は気づかなかった
知事の合図でスタートする
スタート直後は隙間もなくなかなか前に進めないのだが、将はそんな中僅かな隙間を見つけ前に出ようとした。が、後輪になにかがぶつかり転倒してしまった。後続車は将を避けて行き将以外の転倒はなかった。しかし、この転倒で将は最下位になってしまった
仙石は額に手を当てた。嫌な予感はあったがまさかこんな形で当たるとは。仙石は後のことはスタッフに任せ、大会本部へと向かった
将が落車した
楓「きゃっ」
短い悲鳴とともに両手で顔を覆った。凛は厳しい表情で
凛「あれ、わざとだな」
楓「なにが?」
凛「彼の隣にいたヤツがスタート直後に体当たりしたんだよ」
楓「それって」
凛「反則かもしんないけど」
楓「…」
凛「レースの仕切り直しってわけいかないだろうな」
楓「そんじゃ彼は?」
凛「運がなかったってこと」
楓は将の後ろ姿を見つめていた
ふたり~オリンピックの章~第2話目終わり