若い日々の一時を一緒に過ごした兄貴分。
いつも連れ回ってもらって遊んでた歳上の兄貴たちの一人でした。
私の人生がぐるぐる回っていた、刺激的な毎日のあの場面にも、この場面にも彼の姿があります。
優しかった。
チャーミングだった。
下ネタばかり吐くのに知的だった。
読書家だった。
大人になって突然予備校に通い始めた。
めちゃくちゃな人生だった。
時々寂しそうだった。
夜の街の怖い人たちと馴染みだった。
お金持ちだった。
愛に満ちていた。
愉快だった。
言葉を沢山知っていた。
いつも何してるかよくわからなかった。
友人が多かった。
口が悪かった。
時々深刻な相談をしてきた。
優しかった。
優しかった。
大好きだった。
今でも私の傍らにある、ある本を教えてくれたのは彼だった。
スノボの帰り、深夜の車中でその本について熱く語ってくれた。
悪いことも、男のヒトがどうやって嘘をつくかも教えてくれた。
一緒に遊ぶときは、いつも全部お金を払ってくれた。
もう二度と戻れないあの頃の時間を、
夜の街を、
笑い転げていればよかった毎日を、
どう生きていくか模索していた私を、
確かに導いてくれた兄貴だった。
大人になった私は会うことも思い出すことも忘れるくらい、堅実すぎる今に追われている。
スマホの電話帳の、彼が自分で登録した「ビル・ゲイツ」の名前を、きっと私は消さない。
安らかに。
やっと見つけた愛を、空から見守ってあげてね。