【第98回】関原健夫さん(日本対がん協会常務理事)

 中央社会保険医療協議会(中医協)の公益委員に昨年12月、一人の元銀行マンが選ばれた。関原健夫さん、64歳。1969年に日本興業銀行に入行して以来、同行取締役総合企画部長、みずほ信託銀行副社長などを歴任し、2008年まで金融の仕事一筋に生きてきた。その一方で、1984年に大腸がんを患ったが、その後転移・再発を繰り返しながらも克服。昨年12月には闘病記「がん六回人生全快」(講談社文庫)を発売した。がんとの闘いの中で、日本の医療が抱える問題を直視し続けた関原さん。自らの経験や集めた情報などを基に、公益委員として議論に参加し、「必要なことは言うつもりです」と力強く語る。政権交代後、民主党が中医協改革の意向を示す中、関原さんが中医協に新たな風を起こすのだろうか―。(前原幸恵)

-公益委員に選ばれた経緯を教えてください。

 厚生労働省から突然連絡がありました。政権交代後、新しい公益委員のイメージということで、従来は大学の先生で回してきたものを、少し別の人を入れてみるという考えがあったのかもしれませんが、わたし自身は公益委員にふさわしいのかは分かりません。今まで医療のおかげで助かったのだから、「役に立つならやろう」と思って引き受けました。

-来年度の診療報酬改定に向けた議論で最大の焦点となった「再診料」は、最終的に「公益裁定」に持ち込まれましたが、どんな議論があったのですか。

 そんなに議論の余地はありませんでした。外来の財源に何も「枠」が付いておらず、「400億をとにかく外来で使いなさい」なら話は違ったかもしれませんが、小児・救急医療などを充実させるという重点課題があり、しかも外来管理加算の「5分要件」も外す方針が出ているとなると、再診料に充てる金額に議論の余地はほとんどなかったのです。

-改定率が決まり、重点課題も示され、残った財源を考えると「69点」という結果だったということですか。

 ご想像にお任せしますが、まず入院医療に改定の財源として約4400億を充てるという政治の意向が示されました。今の中医協は、突き詰めると決められた財源を診療報酬点数としてめりはりを付けて割り振るという機能しかなく、議論も基本はこの枠内にとどまらざるを得ません。もしも今回のようなプラス改定ではなく、ゼロ改定だったら、どこかを削って、張り付けるしかできないのです。

-公益案をまとめる話し合いの中で、診療所の再診料を引き下げることに反対する意見はなかったのですか。

 プラス改定の中で、再診料はできれば下げたくないとわたしも思いますが、そのための財源がないのも事実です。それならば、重点課題への評価を減らして財源にするかというと、それはできません。救急、産科、小児などは充実させなくてはいけないということは、既に合意形成がなされています。
 以前、外来に関する財源のうち650億を新たな評価に充てるという事務局の粗い試算が示されましたが、基本的にはそれを「しょうがないな」「こういうことだな」というふうに皆さん納得されていたわけです。あの時に、「これはおかしい」という議論はありませんでした。
 また、出来上がった点数配分を見て、救急、外科などを「あんなに上げる必要ない」という意見にも絶対ならないのです。「これぐらいでは救急は回らないし、地域医療も回復しない。もっと上げるべきだ」という意見もあったぐらいですが、それをやるということは、どこかを削るということですからね。そういう意味で今回は、双方ぎりぎりのところでまとめたということです。

-さまざまな「枠」にとらわれることは厚労省案に従うことのようで、必ずしも現場の意見が反映されて進んではいないようにも感じます。

 それはそうでしょう。つまり診療報酬について、日本の財政を等閑視し、白地に絵を描くのであればいろんな議論ができますが、何十年もこの仕組みでやってきた結果、医療現場、特に病院に過大な負担が偏りつつも、日本全体として医療水準が世界で最も高く、アクセスも非常にいい、世界に冠たる日本の医療の体制ができているのに、それを全く無視することはできません。良き制度を維持しつつ、変えていくということだから、極端な議論を早急にすることは、わたしはできないと思います。

■「がん医療」充実に向け第一歩

-「がん医療」については、来年度の報酬改定で「放射線治療病室管理加算」が2000点アップするなど点数の引き上げや、「がん患者リハビリテーション料」などの評価の新設が行われますが、どう見られていますか。

 外科手術や入院費など、がん医療のベースとなるものが今回は引き上げになっています。また抗がん剤治療、放射線治療、緩和ケアの充実を図る上で、第一歩を踏み出したとも思います。
 ただ、それでも患者側から見れば、とても十分とは言えません。診療報酬が全体で0.19%上がり、その中での「がんを充実させよう」という思いは表れているとは思いますが、がんだけを見れば、もっと評価してほしいというのが本音でしょう。でも、小児、救急や地域医療などとの政策上のバランスを考えると、こういう結果になるのではと思います。

-もっと充実させるためには何が必要ですか。

 もう少し医療費全体を引き上げられればと思いますが、それを誰がどんな形で負担するのか見えません。今の日本の財政状態、個人の負担能力から言って、問題を一気に全部解決することは無理です。
 でも長期的にこういうことが必要だという議論をして、医療再建に向けて必要な財政の基盤をどうするのかについて共通認識を持ち、それを国民にも訴えるべきです。患者負担、社会保険、税の投入にしても、最終的に負担する国民の理解が不可欠です。
 これはおそらく「中医協」ではなく、日本の医療全体の底上げには何が必要かを考える「政治」の話で、本当は、医療なんとか省というものがあって、ある程度一貫してそこで原案を作るようなことにしないといけないのでしょうね。現状では、中医協で議論して「これは必要だ」と思っても、予算は別のところで決まってしまっているのですからどうにもできません。
 政権も代わったことですし、本当は中医協の役割やメンバーを見直せば、国民が本来期待しているような、医療全体を良くするような機能をもう少し中医協でも果たすことはできるのではと思います。ただ、この種の議論はなかなか結論が出ません。一方で国民皆保険を維持し、必要な診療報酬をタイムリーに決めていく中医協の重要な機能も不可欠です。

■4月以降は自分なりの考えを構築して議論に参加

-今後の中医協の議論の在り方について、公益委員として何か考えはありますか。

 今の中医協は、基本はたたき台を事務局が作って、診療側と支払側が議論をしてコンセンサスを得るという仕組みになっています。現状では、公益委員は基本的に議論の過程で「こう思う」とあんまり積極的に言う立場ではありません。だけどわたしは、黙って聞いているだけでよいのか疑問も感じます。

 今回は参加した時期が診療報酬改定の直前で、肝心のこれまでの議論に参加していないので、そういう意味では戸惑いがありました。今までやっていた議論とあんまり違うことを言っても仕方がないので、それほど発言しませんでしたが、4月以降は自らの体験や情報収集を基に、今後の経済環境などを総合的に考えて、自分なりの考えを構築して議論に参加するつもりです。
 例えば、支払側に対して「医療の質やアクセスを高めたいなら、適正化に加え負担増をどう考えるか」ということも含めて、医療費を増やすというときには、公益委員としてもう少し踏み込んだことを提起してもいいかもしれません。
 ただしそうなると、議論の内容がもっと広範囲になります。議論するのは構いませんが、問題は先程も申し上げたように、「枠」が決まっていることです。「中医協はこういうことをする」という「枠」があるので、議論に限界があります。ただわたしは、その枠から少し出て議論することや、その枠外の議論を世の中に発信していくことは、別に悪いことだとは思いません。

 医療をめぐる問題は広範かつ奥深く、中医協でどういった議論をすべきなのかということは、なかなか難しい問題です。そう考えると、とてもわたしに公益委員なんて務まらないかもしれません。でも、必要なことは言うつもりです。何を議論するのか、2年後を見据えたテーマの持ち出し方など、今後は考えていきます。

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 日本の航空・空港政策が揺れている。昨秋の前原誠司国土交通相による「羽田ハブ構想」発言で、関東では成田と羽田の兼ね合いが不透明化し、関西でも3空港(関西国際、大阪伊丹、神戸)の一元管理が問われている。今年10月には、日米路線で航空会社が便数や運賃などを政府の干渉なしに決定する「オープンスカイ航空協定」が発効し、業界は国際自由競争に参入する。アジア地域の大規模空港が勢いを増す中、日本の主要空港はいかに機能していくのか…。再編は、国家・地域経済の行く末をも激しく揺さぶる。

  [グラフで比較]関空の着陸料はアジアで最高値

 大阪府の橋下徹知事は1月25日、出張先のシンガポールでリー・シェンロン首相と会談し、アジアのハブ空港の一つチャンギ空港を視察した。その際、関西3空港の問題を念頭に「空港は国際的な玄関口だ。伊丹空港存続派の人は利便性だけを取り上げるが、地域の玄関口をどうするかを考えないといけない」と述べ、改めて持論の伊丹廃港説を強調した。

 橋下知事は就任後、韓国のソウル、中国の上海などを訪問。各都市が大規模な展示場や会議場施設を有し、企業誘致と平行して空港の活性化に力を入れる姿を目の当たりにしてきた。「国家間ではなく、都市間競争の時代」と行政を位置づける知事にとって、関西の都市機能の弱体化は大きなハンディキャップでしかない。知事が「戦略に基づく国家運営を見たい」と評価するシンガポールは、2008年にはチャンギ空港第3ターミナルをオープン、今月14日には5年越しの計画で御法度だったカジノも開業し、新たな観光資源として世界へアピールを再開している。

   ◆  ◆

 ハブ空港とは、航空路線を自転車の車輪のスポークに見立て、スポークが集中する中心(ハブ)にたとえる概念だ。本来、ハブ化は、設置管理者の国家ではなく、航空会社が決定するものだが、日本では航空産業の国家規制が厳しく、歴史的に航空会社の関与はかなり低い。国際線をめぐっては、当該国との2国間協定に基づき、路線のほか、乗り入れ運賃などが規制されており、航空産業に詳しい元関西大大学院講師の木下達雄氏は「航空輸送の自由化が世界的な潮流であるのに、日本は航空会社を競争から保護して自由化に踏み切らなかった」と指摘する。米国の場合は空港当局がハブ指定を目指し、航空会社に様々なインセンティブを提示するが、日本ではそのシステムが機能しない。

 関西国際空港の場合、運営主体が民営で行われたこともハブ化を停滞させた。建設費を償還するため設定した高額な着陸料が足かせになり、国際路線では、昨年冬までに米シカゴ、デトロイト路線など看板の米路線が撤退した。

 国内路線で内際のハブを担う使命はさらに凋落し、96年に1日34都市(84便)、月間78万人超を記録したピーク時の集客力は、現在7都市(37便)、27万人弱と負のスパイラルに突入している。高松(02年)、松山(昨年10月)、高知(同)など四国路線が姿を消す中で、アクセスを失った四国から外国への利用客は、韓国・仁川空港に飛び、乗り継ぐというケースがもはや珍しくはない。

   ◆  ◆

 関空と伊丹両空港の用途をめぐる議論は、神戸空港のあり方を交えて、今後、6月の国交省成長戦略会議による成案に向け佳境を迎える。週末、伊丹~羽田路線が常時満席のドル箱路線である現実をみれば、利便性において「伊丹廃港」はあり得ない。だが、関空を国際ハブに集約しても稼働率が中途半端になり、空港の競争力のうえで共倒れにもなりかねない。チャンギ空港のハブ化の立役者であるシンガポール航空の日本支社長、フィリップ・ゴー氏はハブの条件として、「空港が直接アクセスする都市機能が充実していることだ」と言い切る。世界企業が本社を設置し、ビジネスマンが余暇をも過ごすというシンガポールがライバル視するのは、現在はまだ、香港だけという。

 今年日本が参入するオープンスカイ航空協定は米国とシンガポール、台湾、インド間などではすでに発効し、ドイツ~ニュージーランドなど米国を交えない路線でも常態化している。東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国内では、現在首都間開放に向けて検討が進む。着陸料が世界一高額で、空港施設も貧弱になりつつある国内の主要空港が、いかに割って入るか。乱立された地方の不採算空港のあり方とともに、正常な整備に落ち着くのは容易ではない。(菅沢崇)

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 富山市ファミリーパーク(富山市古沢)の雌のシンリンオオカミ「ナナ」(9歳)が19日、糖尿病による多臓器不全で死んだ。

 ナナが2005年に6頭の子を産んで以来、シンリンオオカミの国内繁殖例はなく、いわば「最後の母」。同園は後継者を出来るだけ早く見つけ、再び繁殖につなげたい考えだ。

 シンリンオオカミは北米大陸の森林地帯に生息する。保護すべき動物としてワシントン条約の付属書にも記載され、国内で飼育する動物園は10か所もない。

 ナナはカナダ・オンタリオ州の野生動物センターで生まれ、04年1月に同園にやってきた。一緒に来園した雄のサスケ(6歳)と夫婦になり、05年に雄3頭、雌3頭の六つ子を出産した。子どもたちはいずれも北海道や秋田、群馬県など県外の動物園に譲られ、最近は夫婦2頭暮らしだった。

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