水素原子のシュレーディンガー方程式の解B 変数分離 | 化学の電子状態のブログ

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今回より換算質量を使った水素原子のシュレーディンガー方程式の解を求めていく訳ですが、その前に少しだけ量子力学の歴史を振り返ってみます。


1905年、A. Einsteinが「相対性理論」を発表しました。さらにA. Einstein は「光電効果」も解きました。
R. Millikanが油滴実験で電子の質量を確かめました。電子の質量はme=9.1094×10^-34(Kg)という軽さです。
1913年、N. Bohrが原子の電子軌道を円・楕円の軌跡で表わす「Bohr モデル」を発表しました。しかし、この後の約10年間、量子力学の学会は少し停滞期に入りました。というより、対立する学説と膠着状態となりました。

 

1923年、W. Heisenbergが「不確定性原理」を発表しました。 この理論の一部の結論だけ端的に言うと、「原子の電子軌道で、質量の軽い電子のような粒子は、円・楕円の軌跡によって表わすことは不可能である」、ということです。つまり「円・楕円の軌跡で表わすBohrモデル」を否定した理論であったわけです。さらに同年には、A. Comptonの「コンプトン効果」、Louis De Broglieの「デブロイ波」の発表もあり、量子力学は再び活況を呈しました。活況と言っても内容は、「電子のような質量の軽い粒子には波動性もある」、「原子電子軌道は、円・楕円の軌跡で表わすことは不可能である」です。これらはニュートン力学や古典電磁気学を否定するものばかりです。
そして3年後。
1926年、E. Schrödingerが電子の状態を表わす波動方程式を提唱しました。この式こそ「Schrödingerの波動方程式」と言われるものです。この式は、状態方程式であり、初期量子力学Bohrモデルの円・楕円の軌跡を完全に否定し、そして唯一無二の絶対的な式です。量子力学の学会は、一気にこの式に傾倒しました。

 

この「Schrödingerの波動方程式」が発表された1926年後半から1927年の1年たらずの間に、この式を採用した凄い数の論文が提出されました。 

 

金鉱発見のゴールドラッシュ、シュレディンガーラッシュ。 さらに当時流行っていた水銀/鉛から金をつくる錬金術師ラッシュも参入し、論文ラッシュと言う状況でした。

 

 

「Schrödingerの波動方程式」の最も簡素なものの1つが、現在解いている「水素原子のシュレディンガー波動方程式」です。

そして今回は、前回までに得られた次の水素原子の電子軌道の波動方程式(A-4-2, 再掲)を変数分離します。
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換算質量μを次のようにおいています。
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ポテンシャルVはSI単位系で次のようにおいています。
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上の微分方程式を変数分離します。
Ψ(r,θ,φ)は、rだけの関数R(r)、θだけの関数Θ(θ)、φだけの関数Φ(φ)の3個の関数の次のような積で表されるものとします。

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波動方程式に代入すると次のようになります。
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8π(^2)μ/h^2を掛け、整理すると次のようになります。
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偏微分を受けない関数を偏微分の左に出し整理すると次のようになります。
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左からr(^2)sin(^2)θ/RΘΦを掛けると次のようになります。
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整理すると次のようになります。
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第3項はφだけの関数なので右辺に移項します。
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右辺はφだけの関数でありr,θに無関係である。左辺はr,θの関数でありφに無関係である。この等式が成り立つためには、両辺は定数でなければならない。この定数をm^2とすると、上式は次のように2個の式に分割されます。
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上の式は、φだけの関数Φ(φ)を求めるための微分方程式であることがわかる。両辺に左からΦを掛け整理すると次のようになります。
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下の式は、さらに両辺に左から1/sin(^2)θを掛けると次のようになります。
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θの項を右辺に移項する。
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右辺はθだけの関数なのでrに無関係であり、左辺はrの関数なのでθに無関係である。この等式が成り立つためには、両辺は定数でなければならない。この定数をℓ(ℓ+1)とすると上式は次のように2個の式に分割される。
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上の式の両辺に左からΘを掛け、整理すると次のようになります。
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下の式の両辺に左からR/r^2を掛け、整理すると次のようになります。
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以上より、波動方程式(A-6-2)は、次に列挙したようにrだけの関数R(r)、θだけの関数Θ(θ)、φだけの関数Φ(φ)の3個の微分方程式に分割することができました。m^2とℓ(ℓ+1)は定数です。

 

φの関数Φ(φ)
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θの関数Θ(θ)
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rの関数R(r)
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