あるコーチからの一言

ある時、サッカー関係者からこんなことを言われました。

「大澤さんの指導方法は、◯◯さんの作戦ボードを使った指導方法とは違いますよね」

「二人のいいとこ取りをしたらチームの良い土台ができるんじゃないかと思います」


少年サッカーを指導している方なら誰しもが一度は悩むであろう指導方法。

例えば、常に勝つための指導を行う人とサッカー少年の育成をメインに据える人とでは指導する方法が違うでしょうし、目指すべき道が定まっていなければジレンマを抱えるところでもあると思います。

ではどうするのがいいのかー

それに対する答えはないように思います。なぜならどちらがあってもいいと思うからです。

では勝つための指導をする人に教わればいいのではないかというと、一概には言えないと思います。

では私はどう考えているのかをここに載せます。



コーチの果たすべき役割

コーチの役割は何ですかと問われた時に、皆さんはどう答えますか?

子供たちを試合で勝たせること?

日本を代表するような選手を育成すること?

子供たちにサッカーで楽しませること?

上に記載したものって全て指導者目線でしかないんですよね。

私はサッカーの魅力を伝えることと子供たちの思っている(勝ちたい上手くなりたいどうしたらもっと上手くなれるのか等の)気持ちを導いてあげることだと思います。

少年サッカーから勝つことだけを最大の目標としてしまうと、そのチームが勝つためのスキル習得になってしまいますし、型に当てこまれたらそれしか出来ない選手が育ってしまい、違うケースに対応できないなど考えてサッカーができない子が育ってしまいます。

また、楽しくないとサッカーは続けられないでしょうし、勝てないと悔しくてつまらなくも感じるかもしれません。みんなが練習中に楽しさを通り越して遊んでしまっていたら育成なんて言ってられないでしょう。



子供がやりたいと思うことをやる

子供がサッカーをやろうと決断した時というのは、色々な理由があるでしょうけど、多くはサッカーをやることが楽しみに感じているでしょうし、ワクワク感に満ち溢れていると思います。

その気持ちを少年サッカーの内から失わせてしまい、勝つことだけを考えるような子にしてしまうのは、私個人の指導方針とは違うかなと思っています。

サッカー選手になりたい、試合で勝ちたい、サッカーを楽しみたいという子供たちの気持ちに少しでもコーチが応えてあげたいですよね。そのための努力をコーチにはしてほしいですし、してあげるのが役目です。



あれこれ言いすぎないことが大事

ではその気持ちに応えるべくイチから全て指示出し声かけ注意をしていたらどうなるでしょうか?上記のワクワク感などすぐになくなるでしょう。

また、子供たちが理解できないキーワードや指導をする人も決して良いコーチとは言えません。言い過ぎると、言われたことをする子供は育つかもしれませんが、自分で考えるのをやめてしまい、その後は教えられたことしかできない子になってしまうかもしれません。

すると、強いチームと対戦し、自チームのやりたいサッカーができなくなると、試合中にもかかわらず自分たちで対処できずにたまらず助けを求めるようにコーチの方を見る子供が増えてしまいます。あと、親の方を見る子供もいると思います。

⇒この傾向は好ましいとは言えませんよね。



指導者の三極化

私が思うに、サッカーに限らず教育の場でもそうだと思いますが、指導者には3通りのやり方があるように思います。

1つ目は「教え込む指導者」。勝ちたいだろ、こうしなきゃ勝てない、だから◯◯をするんだ!など。

2つ目は子供たちに考えさせる力を伸ばし「主体的に取り組ませる指導者」。

3つ目はボランティアで始めただけで指導論なんてわからないから、インターネットで評価が高い練習をしてみる「自分では考えない指導者」。

いずれの場合も子供たちに上手くなって欲しい気持ちは変わらないはずですが、三者三様になってしまいました。

どれがいけないとかではないと思います。置かれた環境によるところもあると思います。ただし、あくまで主役は子供たちですから、指導者をやるからには主語を自分にしてはいけないかなと思うのです。



コーチに必要な能力

あれこれ書いてきましたが、するとこう思う方もいると思います。

「自分にはそんなのできないから無理だ」

確かにサッカーが出来ることは特に高学年を指導する時には必要なスキルです(子供たちの手本にならなければなりません)し、サッカーのコーチングを知らなければ知る必要があります。しかしそれだけでは真に良いコーチにはなれません。

私の考えるコーチに必要な能力はほかに、子供たち一人一人と向き合うことと、学ぶ姿勢を持つことです。

今私も30名くらいの子供たちを教えていますが、しっかり子供たちを名前で呼び、練習中は必ず一人一人に声掛けをしています。例えば私にとっては1/30でも、子供にとっては1/1(実際はコーチは5名います)ですから、しっかり子供たちと向き合うことは大事なポイントです。

中には付いてこれる上手い子ばかりに話して差別するような人もいるようですが言語道断ですね。

もう一つは学ぶ姿勢を持つこと。自分は今までこうやってきたから同じようにやるべきなどと言う人がいるようですが、今と昔は違いますし、プロ選手でも指導者の道を歩むときは学ぶ姿勢を大切にしています。

なぜだと思いますか?

プロ選手も現状では不完全だと認識しており、もっと上手くなりたいと向上心を持っているからです。そう、子供たちと同じように。

コーチが向上心を持たなければ子供の成長も一定止まりで望めないということです。

コーチをやっている人もやろうとしている人も、そういうところは大事にしてほしいなと思います。



冒頭の指導方法の違いについて

私が作戦ボードを使わず別のコーチが使っているとの件ですが、そもそもの事前設定が異なります。

私は1・2年生、別のコーチは高学年指導者です。

例えば1年生相手に練習の都度作戦ボードで説明をしてしっかり聞ける子がどれだけいるでしょうか?小学生の間には、体・精神面・神経系など様々なタイミングで発達・成長していきます。

私が言いたいことは学年に応じた指導方法やコーチングのやり方があると言うことです。

コーチングにもいくつかやり方があります。練習中にプレーを止めずに指導するシンクロコーチング、改善を要するプレーがあった際にプレーを止めさせて指導するフリーズコーチング、子供たちを集めてプレーについて話し合うことで良い点改善点をみんなで確認するミーティングなどです。

1年生にミーティングばかりしていては飽きてしまうでしょうしモチベーションが保てません。

適材適所ではないですが、その年代に合った指導方法が求められますし、指導者の資質が問われる部分なのかなと思います。



まとめ

指導方法と言っても、一言では表せないほど複雑で繊細で難しいものがあります。ですが、(保護者も含めた)指導者の皆さまがしっかりとコーチの役割やプレイヤーズファーストを意識・認識をすることで、子供たちのクオリティは一段と高くなるのではないでしょうか。

少年サッカーのコーチは、子供たちにとってサッカー人生におけるおそらく最初のコーチであり学ぶべき大きな存在です。それを指導者自身がしっかりと認識し子供たちと向き合って下さい。

私も引続き子供たちの指導に全力で向き合いたいと思います!