メンタルライフ | 019|まる・いち・きゅう

019|まる・いち・きゅう

丸い地球をまわりながら考えていることの記録

大学生活でたったの 3 回しかない試験の 2回目が先週終わった。というわけで、今回は試験についてご紹介。こちらの試験はなかなかよくできていて一筋縄にはいかない。なぜなら単なる知識の量だけではなく、情報を瞬時に整理し簡潔にまとめる力が求められるからだ。私の科目(政治・社会学)の場合、試験では 3 時間で合計 3 本の小論文を書く。過去問等で大体の問題の傾向はわかるものの、具体的にどのような課題が出るかは当日問題を見るまでわからない。小論文一本に割くことのできる時間は構想を練る時間も含めて1時間。経験上、実質書くことができるのはせいぜい 1300 語程度だ。普段書く小論文が約2000 語であることを考えると、かなり洗練された議論を組み立てることが要求されることがわかるかと思う。

こちらでの試験の要求の高さは成績分布からも見て取ることができる。ケンブリッジでは成績は上から1(ファースト)、2.1、2.2、3 となっている。絶対評価の結果、例年圧倒的多数が 2.1 を取る。例えば昨年の私の学年の場合、1を取ったのは20人。対して2.1を取った学生は87人。2.2はわずか9人で3を取った人はいなかった。

では、一体ファーストはどのような学生に与えられるのか。教授陣は鍵となるのは「メンタルライフ」を見せることができるかだとよくいう。メンタルライフとは比喩で、要は情報を脳に詰め込み試験用紙に吐き出すだけでなく情報を「加工」するプロセスを指す。授業で言われたことを忠実に再現でき、他の学者の論を整理して抜かりなく提示することができても、それは 2.1 レベルのエッセイに過ぎない。その上をいく小論文というのは、他者の意見を踏まえての個人の意見を簡潔かつ与えられた問いにきちんと答えるような形でまとめているものだそう。創造力やオリジナリティも大切で、与えられた問いに他の人にはないような視点からアプローチできるかは評価にとって大きな意味があるようだ。

よってこのような試験では復習に費やした時間が必ずしも成績に反映するとは限らない。実際冒険心のある男子学生の方が慎重派の女子学生に比べて勉強時間は少ない割りに成績はいいという噂のような真実のような言い伝えもある。

(ねっとわーくSAITAMA7月号)