イギリスの食事は不味いのか | 019|まる・いち・きゅう

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丸い地球をまわりながら考えていることの記録

「イギリスの大学で勉強しています。」
「食事はどう?あまりおいしくないって聞くけど?」

日本に帰ってくる度に繰り返される会話である。どうもイギリスは食事が不味いというイメージがかなり根強いようだ。ということはこれをお読みのみなさんも気になることなのかと察する。

実情はといえば、肯定もせず否定もしないが、強いて言えば「彼らは本気を出せば美味しい料理は作れるが基本的に食に興味がないだけ」といったところであろうか。イギリスに渡って早1年半。これが私の今のところの結論である。あくまで個人の独断と偏見によるものなので同じようにイギリスで過ごしていても全く違うように捉える人もいると思うのでご容赦願いたい。

特別な行事の際ふるまわれる料理は豪華で美味。クリスマスなどはその象徴である。ローストビーフやクリスマスプディングなど手間暇かけて用意された料理は舌鼓を打つ。ケンブリッジで各カレッジが毎週催すフォーマルホールと呼ばれる少しお洒落なディナー(リーズナブルな料金だが有料。行きたい生徒は予約が必要。)での料理も特に私の所属するニューナムカレッジは味がいいと評判だ。

しかし、日々の食事となると事情は異なる。社会人等に比べて決して食費に大きなお金を使えない学生と接する機会が多いからかもしれないが、どうも私はイギリス人にとって「食」とは胃袋を満たすという役割しか持っていないように思えてならない。朝はオートミールやシリアル、少し時間をかけてもトースト。昼はサンドイッチというような食事が毎日続いても一向に構わないようだ。

お弁当の彩りにまで気遣い、使うお皿まで丁寧に選び、ただ食べるだけでは本当に満腹にはなれないと感じる日本人とはどうも価値観が少し違いそうだ。そういえば多国籍の生徒が集まる学校に留学していた高校時代もアジア人は集うとなれば食が伴うとよく言われたものだった。もしかしたら日本始めアジア諸国にはイギリスには見られない食に対するこだわりがあるのかなと日本を離れて改めて感じながら日本の「旬」を懐かしく思う。

(「SAITAMAねっとわーく」1月号より)