ケンブリッジの風⑩St John's College Chapel ─アドベント礼拝 | 019|まる・いち・きゅう

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丸い地球をまわりながら考えていることの記録

「ある空間に身をおいて無心になると、かつてその地に生きた人たちを確かに感じる。」そのような経験を誰しもがしたことがあると思う。私にとって日本においては明治神宮や伊勢神宮はその場所である。イタリアではバチカン(別案サンピエトロ寺院)の圧倒的な荘厳さがそうだった。高校時代のルームメイトと旅した南米旅行では、チチカカ湖に沈む夕日を見ながらじわじわと同様の感覚を得た。そしてつい先週、そういう空間との新たな出会いがあった。

 11 月 27 日(みなさんがこれを読む頃には大分時期はずれになってしまっているかもしれないが仕方ない)。先日友達がチケットを手に入れてくれたとのことによりセントジョーンズカレッジで行われたアドベント礼拝(Service for Advent with Carols)に足を運んだ。

 キリスト教に馴染みの薄い日本では「アドベント」も「礼拝」もなかなか耳にすることのない言葉かと思う。礼拝はそれでも想像しやすいだろうか。教会に人々が集まって聖書を読んだり、賛美歌を歌ったりというキリスト教の儀式である。セントジョーンズはじめケンブリッジのいくつかのカレッジではカレッジがもつチャペルで毎日礼拝が行われている。アドベントとはキリスト教において、イエス・キリストの降誕を待ち望む期間のこと。日本語では「待降節」や「降臨節」とも言うらしいが、通常 11 月 30 日に最も近い日曜日からクリスマスイブまでの約 4 週間のことを指す。アドベント礼拝はそのアドベントを祝しての礼拝というわけである。

 セントジョーンズのアドベント礼拝はボーイズソプラノとカレッジの男子学生からなる合唱団で有名で BBC(日本でいう NHK)で放送されるほど。セントジョーンズに関係あるなしは関わらず礼拝へは多くの人がかけつけ、Ante Chapel という通常の礼拝では使われることのないチャペルの一角にまで椅子が用意されるほどだ。言うまでもなくよほどラッキーでなければ実際に合唱団が見える距離に座れるということはまずない。私も到着したのが遅かったようで充分に歌声は聞こえるけれども実際に合唱団を見ることはできない位置に座った。

 それでも、ボーイズソプラノの透き通った歌声と男性の突き上げてくるような力強く太い歌声のハーモニーがチャペル内にこだまするのを全身で感じながら、鳥肌が立つほどであった。宗教と文化、歴史が織り込まれたこのケンブリッジという教育機関の奥深さを改めて感じた。

$毎日が宝探し

(機関紙SAITAMA1月号より)