卵アレルギーからの贈り物 | ずっこけ北の家族

卵アレルギーからの贈り物

我が家のかーくん(新一年生)は生まれた時から、卵アレルギー。まだ授乳中に判明した。お母さんが卵を食べるのをやめたら、湿疹だらけの顔がきれいになった。2才の時、つなぎに卵白を使ったハムを食べたら顔が大きくはれた。

「今度同じ症状が出たら、救急車を呼びなさい!」

掛かり付けの小児科の先生に言われた。呼吸器系で同じように腫れたら、窒息のおそれもあるからだ。
その日たまたま休みで病院に連れて行った私は先生にそう言われた時、体がなにかとんでもなく高い所から突き落とされた感覚になった。ハムを半ば無理矢理一切れ食べさせたのは私だった。

幼稚園に入園し、妻の戦いが始まった。基本はお弁当でいいのだが、一斉給食というのが月1回ある。みんなで同じものを食べる、園児が楽しみにしている毎月の行事だった。幼稚園から前もってメニューを教えてもらい。妻は卵を使わずそれを作った。それを、みんなと同じ食器に幼稚園で盛りつけして、出してくれる。幼稚園の心遣いがうれしかった。しかし、たこ焼きなど卵を使わず頑張っていた妻に難題が襲ってくる。ウインナー入りオムレツ。ネットを駆使し調べ、一斉給食の前の日の夜、子供が寝てから、妻が台所で試作品を作る。それを見て涙が出そうになった。どう見ても卵。卵を使わないウインナー入りオムレツが出来上がっていた。

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私にはどうやって、何を使ったかは解らない。かーくんに寂しい思いをさせたくない妻の意地だ。妻を尊敬した。

かーくんに一斉給食のあと、感想を聞いたら・・・

「うん、おいしかったよ」

それだけかい?と思ったが、その普通な反応こそ妻の勝利を物語っていた。

「オムレツがあんなにうまく出来たら、もう敵はないな!!!!」

私は妻にそう言った。妻も満足げな顔をしていた。

しかし翌月のメニューを見て愕然とする。・・・そこにはゆで卵と記載されていた。

「どーする?」私は妻の顔を見たが、妻の顔はギブアップしていなかった。

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「どーやったの?」試作品を見て私は唸った。

「へっへー」

ゆで卵だった。

そんなこんなのかーくんとお母さんの幼稚園の2年間だった。まだまだ色んな事があってそれだけでブログが何ヶ月もできそうなくらい。

かーくんママは幼稚園の先生達からも、他のママ達からも色んな事を聞かれるようになっていた。
卒園の紅白まんじゅうはなんで卵を使うのか解らないが使っているというので、妻がかーくんの分と他の卵アレルギーの子の分も作って持って行った。

そして、かーくんのアレルギーのお蔭で「食」がどれほど大切か、そして今日本でどれだけ「食」が軽んじられ、そしてその結果、子供達の心と体の健康が失われてきたか恐ろしいくらい見えるようになった。いままで全く気にしていなかったことが怖くなるほどに。放射能をこれだけ気にしながら、もっとそれと同等かそれより怖いものをまったく気にしない日本人・・・どうにかしていると思うようになった。

ジャンクフード(くず食品)・・・私はくずを子供に食べさせる気には絶対なれない。

幼稚園最後のお弁当の日、かーくんはお母さんに「いままで、お弁当をつくってくれてありがとう」と言い最後のお弁当を持って、幼稚園に出かけて行った。

しかし、卵アレルギーは治った訳ではない。数値はほんの少しづつ下がって来ているものの、まだ安心出来ない。そして小学校は毎日給食。4月の給食に卵がどのように使われているかが解らなかった。だから、すべてをお弁当で対処することとなった。

幼稚園の時と同じように給食のメニューから、お母さんが卵を使わずそれを作る。しかも毎日。

かーくんは小学校が始まってからというもの、朝6時前には起きて着替えてしまう。家族で一番早い。凄く楽しいらしい。毎日が遠足状態。それと、緊張もあるのだと思う。

初めての給食の日。かーくんはランドセルに負けないくらいの重さのお弁当を肩から掛けて、おねえちゃんのいーちゃん(4年生)と「いってきまーす!」と元気に学校へ向かった。金曜日のことだった。

日曜日の夕食やっと私は家族と一緒に食事がとれた。ただでさえ、初めてのメンバーの中で、みんなと違う食事はどうだったのだろう?そこで、かーくんに聞いてみた。

「かーくん、この前の給食の時、どうだった?」

「うん?」

「みんななんかかーくんに言ってたか?」

「なにも言われなかった」「ふう~んってかんじ」

私の心配はかーくんの心の中。みんなと違う事をどう捉えているのだろう?

「かーくん、みんなと違う食べ物でいやだとかないか?正直に言ってもいいよ」

いーちゃんとお母さんもかーくんの顔をうかがった。

しばしの静寂の中。・・・かーくんが夕食を口に運ぶのをやめ・・・チラっとお母さんを見た。

またチラッと・・・そしてもう一度、まばたきとまばたきの間にチラッとお母さんの顔を・・・3回見た。そして・・・


「そんなことはぜんぜんない!」

とはっきり、思いっきり言った。

私は泣きそうになった。(最近、涙腺ゆる過ぎます)

かーくんが「そんなことぜんぜんない!」と言うまでの時間。かーくんの頭の中には幼稚園児代からずっとお母さんが作ってくれた本物そっくりの卵を使わないお弁当の画像が流れていたのかもしれない。そして小学校に上がっても自分のためにお母さんが頑張っていることが、かーくんには届いている。わかっているのに「いやだ」とは口が裂けても言わない。そんな、意思を感じました。お母さんの心を思う時間でもあったように感じました。

家族それぞれ思う事あってか、かーくんの発言の後ほんのわずかな静寂のあと、いーちゃんが口を開きました。

「給食より、ぜったいお母さんのお弁当がおいしい!」「「いいなぁ~かーくん!」

常に本音トークで直球勝負のいーちゃんだからこその説得力。私も我に帰りました。

アレルギーのお蔭でかーくんは自分以外の人の心をおもんばかる気持ちを覚えたのかもしれません。うれしい発見でした。

そして、学校でもきっと担任の先生のフォローや、友達の思いやりのおかげでかーくんも学校生活の良いスタートを切れたのだとも思います。

感謝です。

今日かーくんと2人の時間がありました。

「みんなと同じ給食も食べてみたいよな?」

「うん、ちょっとだけ思う」

かーくんが本音を漏らしました。

5月以降の給食に卵があるかないかは、学校の協力でわかりました。そして、以外にも卵を使ったものが少ない事もわかりました。

「5月からは、給食でいい日もたくさんあるから、お弁当少なくなるぞ」

「と、言う事はお母さんのお弁当は少なくなるから、今のうちに味わって食べておいた方がいいぞ!」

「うん」

でも、メニューと成分票を見て、学校給食が思いのほかジャンク化していることにも気付き、複雑な思いのお母さんと私なのです。

ただ、私たち夫婦の食に対する知識と態度を変えてくれたのは、紛れも無くかーくんの存在だし、アレルギーのおかげでお互いを思いやる事の大切さはいーちゃんを含め、家族で学んでいます。

家族で学び、挑戦し、助け合う。大切な毎日が続きます。