性根と しては 小心 者で

 

すこぶる 気の 小さい 人間で

 

ある くせに、戦災で 父親

 

とられて イキって 生きて

 

くるしか なかった うちの

 

オヤジ、ばあちゃんが 死ぬ

 

間際に

 

 

「ウチからヤクザもん、ひとりも出さんで暮らしてこれた」

 

 

って 枕頭 涙 ながらに

 

こぼして いたけど、それも

 

そのはず 背中に 派手な絵

 

入れた そこらの ヤクザな

 

おっさん 連中 からも

 

「こーちゃん」「こーちゃん」 と

 

敬称 つきで 呼ばれて

 

いた ほどには、その 筋から

 

やたらと 慕われて いた

 

ような 人間で。

 

 

 

もちろん へっぽこ さんらも

 

育って くる 環境下の なかで

 

そんな オヤジの 巻き起こす

 

血なまぐさい 事柄 なんかも

 

いち度や 二度では ない

 

ぐらい 見るとも なしに

 

見せつけ られたり、また

 

当然の ように、直接 わが身に

 

こうむったり なんかも して

 

きては いるんだ けれど

 

そんな 粗雑な オヤジの

 

生き様 反映 してか 酒

 

飲んで イキった あげく

 

いつもの ように 騒動

 

おこして そこに 住んで

 

いられ なく なって

 

いたもの なのか へっぽこ

 

さんも わりと ガキの

 

ころから 再三 再四

 

引っ越し してて、オヤジも

 

いい 加減 一国 一城の

 

なんたら~ みたいな

 

暮らしを 思って いたのか

 

いつ だったかなあ、ある夜

 

家族 全員 一室に 呼び集め

 

られて 死ぬ までに 二度と

 

ない 機会かも しれんで

 

たんまり さわっとけ って、

 

たしか、500万 とか 1千万

 

ちかく あったんじゃ ないかなあ、

 

帯付きの 現金 持って きてて。

 

 

 

いまに して 思えば、

 

どこぞから 借り受けて

 

きた その金で まさしく

 

一国 一城、個人 名義で

 

なんでか しらん 魚屋

 

稼業を やり はじめ、それと

 

平行 する カタチで 同時期に、

 

作業場 兼用って 体にして

 

いまも へっぽこ さんらの

 

暮らして いる この家

 

建てたん だけど。

 

 

 

あれは いわゆる 元手

 

って いうのか 手付金

 

って いうのか 資本金

 

って いうのか、

 

 

 

まあ

 

 

 

建てた だけで

 

 

 

その後は たいして 働きも

 

 

 

しなかったん だけどね?

 

 

 

姉貴が オトコ つくって

 

家 飛び出す まで だから

 

10年か? まあ ざっと

 

その ぐらいは オヤジと

 

おふくろ 姉貴の 4人で

 

この家 住んでて 当時は

 

もう へっぽこ さんも

 

高校 やめて 夜から 夜まで

 

いちんち中 魚 ひらいて

 

さばいて 干して 取り込んで

 

している まっただ なかで、

 

そもそも 山あいの 漁師町

 

だって いうのに なんか、

 

姉貴は そんな 家業に

 

はやくから 絶望 していた

 

そうなん だけど

 

 

願わくば

 

 

前回の とおり、やっぱ

 

それでも 長男って なると

 

イヤも クソも、家も 仕事も

 

親の 老い先も いち度に

 

ぜんぶ のし かかって

 

きちゃうで しょ?

 

 

 

姉貴は とっとと

 

 

 

逃げ ちゃうしで。

 

 

 

 

必死 だったなあ。

 

 

 

 

まあ、バブルな ころでも

 

あったから それでも なんとか

 

その日 その日に 困らない

 

程度には 稼げ ても

 

いたよう なんだけど、

 

その あぶれた カネ

 

借金に まわさず なにかと

 

ウソ ついては

 

 

 

呑んで

 

 

 

打って

 

 

 

しちゃって いてね、

 

 

 

うちの

 

 

 

親。

 

 

 

で そうこう して いるうちに

 

いまの 温暖化 現象の

 

先駆けって いうか だんだん

 

不漁が たたり はじめて

 

たかだか 高校 半年 卒の

 

小僧っこが 引っぱる ような

 

こんまい 田舎の 魚屋 程度、

 

大手を 振って やり つづけて

 

いられる ような はずも

 

なく、家業 たたんで へっぽこ

 

さんも 当時の 異様な 労働

 

環境が たたってか、ちょっと

 

身体 こわして たんで

 

療養 ついでに しばらく

 

町 はなれたん だけど、

 

そんな ときでも 出稼ぎって

 

ことで 流れ 作業の 工員

 

やって、まったく 減らない

 

家の 借金 分 程度の カネは

 

まだ 作っても いたんだ

 

けれど

 

 

 

あい かわらず

 

 

 

うそ ついて

 

 

 

呑んで

 

 

 

打ってで。

 

 

 

 

さすがに もう

 

 

 

わかって くるでしょ?

 

 

 

 

「帰ってくるかあ」

 

 

 

そう いった 状況が 状況

 

でも あったし、唯一の ツレも

 

死んだりで その 当時には

 

もう へっぽこ さんも

 

酒 だけは とき場所 かまわず

 

呑んで いたから そんな

 

出先の 部屋の 酒瓶の

 

山の 情報 でも 流れて

 

いたのか 急に オヤジが

 

そう 言い出して、こっちと

 

しても べつに 好んで

 

行ってる ような 場所でも

 

ないし 地元と ちがって

 

なにしろ 山系の ド田舎で、

 

数本の ギターと CD

 

持っては いったけど 当時は

 

まだ Web なんかも

 

なかった ころだから、ヒマだし

 

カネ だけは たまっても

 

つかう 場所 なんかも

 

どこにも ないしさ。

 

 

 

あん時に 買ったのか、

 

 

 

名古屋 近くまで 遠出して

 

 

 

J200と 335。

 

 

 

ほんと 遠くの もどきな

 

コンビニで 週に 数回

 

酒 買って、職場から

 

あてがって もらって

 

いた 寮の 一室に

 

もどるって だけの 生活で。

 

 

 

いっても、師匠も ない、

 

数年 間ほど うなぎの

 

加工場で 働いて いただけの

 

おっさんが ぽっと はじめた

 

無手勝 流な 魚屋 だったから

 

イスも つかわず 一日中

 

うんこ座り しっぱなし とかって

 

姿勢で 仕事 してたんで

 

背骨の ゆがみ あたりから

 

体調 くずして いる って

 

話 だったん だけど

 

 

 

それ 以上に 酒 飲んでちゃ

 

 

 

よっぽど 身体に

 

 

 

悪いよねー。

 

 

 

家に もどると へっぽこ

 

さんばかり 働か せるなって

 

夫婦と なってた 姉たち

 

からの 口添え でも

 

あったのか こん度は オヤジが

 

むかし やってた 職種で

 

ある タクシー 運転手と

 

して よその 町へと 単身

 

出稼ぎに 出て いって、

 

そこで オンナ 作って

 

いたのが バレて 帰って

 

くる までは おふくろと

 

ふたり この家 住んで、

 

そのうち ヨメ さんが

 

やって きたのかな?

 

 

 

ほんとは ね、

 

 

 

ヨメさん 方の おふくろさん、

 

 

 

ネコ ばーちゃんも よんで

 

この 家で 一緒に 住んで

 

もらおうって いう 考え

 

だったん だけど、なにしろ

 

うちの ジジばば、

 

 

 

大ウソつきで しょ?

 

 

 

きっぱり ご遠慮

 

 

 

されちゃってねえ。

 

 

 

とは いっても、長男と

 

しては いわんや 家長と

 

なった うえには それでも

 

いざと いうとき みんなで

 

一緒に まとまれる 場所、

 

逃げ場所と なれる この家

 

だけは 是が 非でも 守って

 

いかなきゃ なんねえ って、

 

その後も ずっと 思っては

 

いたんだ けどね?

 

 

 

 

ずっと 思って

 

 

 

いたんだ けどさ。

 

 

 

 

 

ウソつき 酒飲み バクチ打ち。

 

 

 

 

 

ばばあ ひとりに さえ

 

大概 ひっかき まわされて

 

いる うちに Aさん 生まれて

 

Bさん 生まれ、ヨメ さんも

 

いよいよ ストレス 倍加して

 

Aさん 反抗期 むかえた

 

ころには 歳 相応の 更年期

 

なんかも 手伝って、それで

 

なくても 家の なかが 荒れに

 

荒れ はじめて いる ところに

 

オヤジが もどって くるでしょう?

 

 

 

もうさあ、

 

 

 

みなが みな

 

 

 

毎日

 

 

 

刑務所よ。

 

 

 

寄って さわれば 爆発 するから

 

 

 

お互いに クチ きかない

 

とき だけが

 

 

 

平和って いうね。

 

 

 

そんな なかでも オヤジと

 

おふくろが 長男坊 へっぽこ

 

さんを なんとか 味方に

 

つけようと ことある ごとに

 

いろいろ ウソ ついたり

 

やらかし たり するでしょ?

 

 

 

もちろん、自分の 親だし

 

毎度の こと でもあるし、

 

へっぽこ さん 的には

 

そんなの 充分 わかっちゃ

 

いるけど ヨメ さんは それ

 

自体、気に入ら ないしで。

 

 

 

いや もう、

 

 

 

うちの 親どもの 存在

 

自体が 気に 入らないって

 

いうか ほんと

 

 

 

刑務所。

 

 

 

だれも 波風

 

 

 

立てるなよ~ って いう 毎日。

 

 

 

 

このとき あたりで

 

 

 

6人か。

 

 

 

 

恥ずかし ながら、いたる

 

ところで うちの 家の

 

床の ハリが折れ、そこらじゅう

 

抜けて ふにゃって いるのは

 

 

 

そんな ヨメ さんが ジジイ

 

ばばあと 反抗 娘 Aさん

 

とに そこいら じゅうで

 

爆発 してしまい、決して

 

軽くない 体重で 数十年が

 

ところは

 

 

 

文字 どおり

 

 

 

地団駄 踏んだから。

 

 

 

そのうち 家の 一室に

 

こもって 家庭内別居

 

していた ジジイが カピて

 

死んでて さすがに この

 

家で ふたりも カピらせ

 

てはと 気が ひけたのか、

 

姉 夫婦が いち応 おふくろ

 

引き取って くれは したんだ

 

けれど やはり ウソつきの

 

面倒は 軽々に 見られる

 

ような ものでも なくて

 

怒りの ために 姉貴も

 

錯乱 しはじめて しまい、

 

いま へっぽこ さんちでも

 

カネ出す からって ことで、

 

向こうの 町の 施設に

 

入ってます。

 

 

 

ボケでも ないのに

 

 

 

秒で ウソつける 人間って

 

 

 

いるんですよ? マジで。

 

 

 

で、Aさん 出てったり

 

Cさんと ふたりに なって

 

帰って きたりで 4人と 半、

 

で、再婚 して もっかい

 

出てった ところで 3人と

 

なって、Bさん 出てって

 

いま ふたり。

 

 

 

みんなして いろんな ものを

 

置いて いくから それほど

 

狭くは ない家 なのに

 

いまだに いろんな もので

 

あふれて いるけど

 

 

 

いよいよ

 

 

 

ふたり。

 

 

 

反抗期 当時、Aさん

 

なりに 毎日 悪いなあ

 

とか 思っての こと

 

だったのか、もちろん、

 

自分でも 飼いた かったん

 

だろうけど、日々 荒れる

 

ヨメさんの 安定剤 がわりに~

 

ってな 思いも あっての

 

ことなん だろうと 思って

 

いたから へっぽこ さんは

 

一切 クチ出し しなかったけど、

 

高校生の ころ、仔ネコ 一匹

 

つれて 帰って きてねえ。

 

 

 

当時は B さんの イモリも

 

いたから 最初は ヨメさん

 

さらに 大激怒 だったん

 

だけど そこは Aさんと

 

しても 織り込み 済み

 

だったのか、わかり やすく

 

ヨメ さんの 好きな

 

クロい 毛並みの やつを

 

わざわざ えらんで つれて

 

きてたりで。

 

 

 

なんでも 学校の 帰り 道に

 

仔猫の 生まれて いる家

 

あって、もらって くれろと

 

ずっと 言われて いた らしく。

 

 

 

ネコ ばーちゃんも あちこちの

 

ネコ 引き取って 何頭か

 

多頭 飼いまで していた

 

ひと だったから 当然

 

ヨメ さんも キライな

 

方で あるわけ なくて。

 

 

 

で まあ

 

 

 

いま 実質

 

 

 

ふたりと 一匹。

 

 

 

当時 いち番 かわいがって

 

たんだって

 

 

 

「くったん」って 呼んでた

 

 

 

クロい ネコ。

 

 

 

 

 

 

知って たんだよ

 

 

 

 

 

Aさん。

 

 

 

 

 

 

 

さて、

 

 

 

どうした もんか。

 

 

 

もう 少し がんばって

 

 

 

もう 少し

 

 

 

この家

 

 

 

守って みるかなあ。

 

 

 

 

 

床が 抜けてたり 外壁

 

なんかも いたる ところ

 

ペンキが もう ハゲハゲで

 

だいぶ 古く なりは したけど

 

 

 

いまだに

 

 

 

なにが あっても

 

 

 

みんなが 気楽に 帰って

 

こられる

 

 

唯一の 場所だしさ。