人前で話す時とても緊張します。足が震え、鼓動が高まり、指に力が入りません。声は上ずり、頭は白紙に、視界がぼんやりしてきます。スピーチでは短い時間で言うべきことが限定され、時には複雑でわかりにくいことを端的に伝えなければいけません。緊張しながらは難しいことです。

よく緊張しているようには見えないと言われますが、心臓が口から飛び出そうなんです。こんなに緊張しているのにそれが伝わっていないとしたらおそらく3つの工夫が功を奏しているのでしょう。一般企業人としては多くの機会をいただいてきたので、その工夫を先日のWHIシンポジウムの事例とともにご紹介します。

 

1つめは できるだけ原稿を作らないこと。

大切な単語だけを大きな文字で紙に書くか、スライドの中に埋め込んでいます。WHIでは原稿どおり間違えずに読まなければいけなかったので、直前まで会場の隅で練習することになりました。でも、結局は記憶容量を超えてしまい、手元のメモの大きな文字を見て思い出しながらお話ししました。

 

2つめは会場の中に私を応援してくれる人を見つけ、その人に話しかけることです。WHIのときはここが効いていました!いつもいつもいつもあたたかく見守ってくれるみささん、今回の原稿を作ってくれたさえこさん、わたしに女性の健康というテーマを授けてくれたちはるさん、J-Win仲間のあずみさん、前方で微笑みかけるきょうこさん。この5人、わたしのことを内心ひやひやだと思いますが、まったくそんな素振りを見せず「ここにいるから大丈夫だよ」と強い目力で!訴えかけてくれました。ほかにも全員を見つけることはできませんでしたがたくさんの声援が隙間から聴こえていました。

 

3つめの工夫は、飾ることです。これは自分だけでもできます。人前に出る時の自分の気持ちを落ち着かせるため、胸元や耳元に飾りをつけます。普段は女性のWILLを身につけることが多いのですが、 自分の所属団体が主となる場で発信する時には、あやのさんのガラスを身につけます。上品でクールで 同じものが二つとないデザインで、いつもきらきら輝いていて人から注目を浴びる飾りです。壇上に上がるまでに気合を入れる方法もあるのですが、いざマイクの前に立ち多くの視線を浴びると緊張度が最大に達し、足がまた震えだします。そこで自分なりに考えた方法が、顔まわりへの飾りでした。人の視線を感じる度、自分に言い聞かせます。この人たちは私を見ているのではなく、この素晴らしい飾りを見ているのだと。すると少しずつ気持ちが落ち着いていきます。この工夫をするためには、印象の強い 胸元にするか、または思い入れのある意味あるものを着けることです。一人で話す場面ではあやのさんの作ったものが個性的で強烈なので、愛用しています。

複数の中に入ってお話しするときは、幼馴染なおこが作ったもの着けています。彼女は、昔からのわたしを内側から掘り起こせるような素敵なものをいつも手作りして贈ってくれます。京都あとりえ大文字というところで教室を開いて先生としても続けています。

昨日は彼女に会いました。何年経っても自分の抱えるものを互いに共有することができ、尊重できる大切な友達です。自分にないものを持っている人です。わたしたちは少々風変わりな学校に通っていました。この学校の風変わりな教育については今度ゆっくり書きたいと思いますが、だからこそお互いの異なる部分を認め合えるように育つことができたのだと思います。

もう一人の幼馴染よっことも会いました。作業療法士の経験が長く、今年は老人施設で働いています。 うちの母の状況やこれから先の施設のこと、終活をいつも一緒に考えてくれています。実は今、母の貯金通帳の管理について、ここ数ヶ月小さな紛争が毎日続いていました。母はよっこに言いました。

 

母「あなただったらわかるでしょ、年老いた母がお金を好きに使えない悔しい気持ち。」

よ「わかるわかる、自分でなんでもやりたいやんなぁ」

母「そうなん。わたしが好きに使えるよう、みよこに言ってきかせて!」

よ「お母さん、お母さんの気持ちは本当によくわかるんよ。そやけど、使いすぎたり、他の人におやつをばらまいたりする習慣をやめるためには、今はお小遣いもらって、持ってる分だけ使うようにした方がいいんよ。」

 

母は沈黙してベッドに向かいました。

さて問題です。昨日のよっこの言葉を今日母は覚えているでしょうか???

 

たとえ覚えていなくても

わたしは今日も元気です。