黒金魚ストーリー 12 影武者 | ouroboros-34のブログ

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こころに映りゆく由無しごとを其処は可となく書き付けて
ごうなっだのでありますぐるらめ。


12
影武者   

いほりかな 起こし絵
建(たつ)れば湯(ゆ)す————
夜(よ)へ 袈裟テロ 
やむを得ぬ 偽王(にせわう)と 
寝間の怖畏(ふゐ)————
揉める村落 地引網


いほりかな おこしゑ
たつれば ゆ す
よ へ けさ てろ
やむをえぬ にせわうと
ねま の ふゐ
もめる そんらく ぢびきあみ

起こし絵(おこしえ):建物や樹木を切り抜いて組み合わせ立体的に構成したもの。
建る(たつる):タツル下二段。

お芝居の背景の張りぼてのような貧弱な庵ですが、建て前に茶の湯の集いが催されました。
或る夜、浜網の采配が恐ろしいことに、宮様の影武者(みがわり)となって庵の寝間に隠れたことがありました。
叡山の僧兵の一揆という革命が勃発したのでやむを得ない仕儀でした。
漁村も余波で、もめました。彼が地引網の音頭取りだったからでした。

影が、「寒い」というのです。薄暗くていかにも寒そうです。影が暖をとるには私自身を燃やすしかないのです。
ニンゲンはちいさな星団です。ニンゲンだけではなくて一匹一羽一頭一個…すべてがそれぞれひとつの、生成して消滅する期間限定の星団です。
輝いているのは自分を燃やして暖をとっているのです。
影が寒いと言っています。寒いのでしょう。体温ぐらいじゃ足りないのなら自分が燃えなければ…ね。影は、…それでいいのでしょうかね。
黒は色ですが白はいろではないのですよ。色相にヒエラルキーを持ち込むのは反対です。